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京は夜霧が持ってきた学園内外の資料を尻目に、それでも先生に気を遣ったのか、それは後で閲覧したいですね、と言った。
それと言うのも翌日に控えた体育祭の準備で京は、頭も身体もあちこちに点在したいという程急がしかったのだ。
然も今日は雨。でも、日暮れへ向けて回復するという予報が出ている。
体育祭の実施日が明日になるか、延期されるか、僕みたいに競技に出るだけの生徒はまぁ、いいんだけど、実行委員会はそうも行かないらしい。天候が回復してもグラウンドの状態がどうか――この学園のグラウンドは、水捌けはいい方だとは思うんだけど。
いつも以上に眉間の皺が深くなっている京に、僕はなるべく近付かない事にしていた。
僕達が生まれるよりずっと前の東京オリンピックの開会式の行なわれた十月十日が、それを記念して体育の日に指定されていたのは過去の事。今は十月の第二月曜日――人によっては三連休になる。この学園でも、その方が父兄が集まり易いだろうと、その体育の日を体育祭と定めていた。
尤も、カレンダー通りの休みが取れる人ばかりでもないと思うけど。それでも長い寮生活の最中、親が来てくれる数少ない日の一つではあった。
うちは多分、来ないだろうけど。
「何や、祥。浮かへん顔して」実行委員会ではないとしても準備に人出は必要、と休み返上で教室で応援用の小道具の仕上げをしていた時、既に馴染んだ関西弁が耳に入った。間宮栗栖。正真正銘の関西人だ。
「いや、雨、本当に止むのかなって」僕は適当に言葉を濁した。それでもふと――自縄自縛に陥るかもと思いながらも――訊いてみたくなった。「栗栖、君の所はご両親、来られるのかい?」
栗栖の実家からはかなり遠かった筈。如何に三連休とは言え、体育祭はその三日目。帰路を考えると来られるかどうか?
「あー、うちは無理やろな」やはり、栗栖は実にあっけらかんとそう言った。「家業がちょっと、連休程忙しなる仕事なんや。せやから多分、二人共動かれへんわ」
連休程忙しくなる仕事――旅館、ペンション、大型のストア、etc.……。
年中無休の店舗が増えて久しい。当然、営業を続けるにはその間も働く人が必要な訳で……。便利さの陰では却って休めない人も増えている訳だ。そして学校行事に来てくれない親を持つ子供も。
「祥達のとこは?」
来た。当然の様に返される栗栖の質問。話題を振ったのは僕だから、仕方ないんだけど。
「いや、うちも多分……」僕は薄く苦笑いして答える。「忙しいんじゃないかと……」
「そぉか。ま、どの途もう高校生やからなぁ。小中学生の頃と比べると何や、来て貰うても気恥ずかしいしなぁ」栗栖は笑う。
確かに。尤もうちはこの学園の小学部の頃から、来てくれた事は無いけれど。だから、照れ臭いとか何とかより……一度だけでも来て欲しい。
そんな思いが顔に出てしまったのだろうか。勘のいい栗栖が笑みを引っ込めた。
そうして暫くはお互いに黙々と仕事を続けていると、資料を抱えた京が教室に戻って来た。進行具合を確認して、納得が入ったのか眉間の皺を解く。
「夜霧、何の資料を持って来たのさ?」先程から気になっていた僕は訊いた。
「他校の応援風景だと。特に看板とか、横断幕とか。あれでも美術教師だからか、そういうのは気になるらしい。参考にどうだってさ」溜め息と共に、京は言った。「しかし今更持って来られても困るっての」
全くだ。各クラスのプラカードだって、既に完成している。参考も何も、今更描き直せる訳もない。
それでも僕はどれどれ、と資料を捲った。勿論ちゃんと色刷りで、然も夜霧の一言コメントが入っている……。結構、辛口だ。
と、捲っている内に隙間から何やら、はらりと落ちた。
あ、と思う間も無く、やはり横から覗き込んでいた栗栖が拾う。そして一瞥の後、僕と京に向かって差し出した。
それは一枚の封書で、よく知った字で僕達兄弟の名が宛先として書かれてあった。
差出人は連名で――僕達の両親だった。
「何で!」京がひったくる様にして受け取り、開封する。貪る様にして読む横から、勿論僕も覗き込んだ。
それぞれ他校の教師を務めているが為に、こういった定番の行事には見に行けなくて済まないという事。
そんな負い目からかついつい手紙も疎通になっている事。
先日研修で会った夜霧――夜原霧枝先生に二人の様子を聞いて、元気そうだと安心している事。
そして夜霧の言葉に甘えてこの手紙を託した事。
それらが丁寧に書き込まれ、ごく最近のものらしい二人の写真が同封されていた。
「父さん……白髪が出てきたんじゃない?」
「母さんだってちょっと太ったみたいだぞ」
「でも、元気そうだね」
「ああ」
二人して写真を見て、年月を感じながらも僕達は変わらぬ絆を想っていた。
例え滅多に会えなくても、離れていても、家族なのだと。
「明日、晴れるといいね」
「ああ、全国的にな」
取り敢えず、天候に先駆けて僕達の気分は回復した。
翌日、快晴の中行なわれた体育祭は、盛況の中、無事に幕を閉じた。
父さん達の学校でもきっと。
―了―
ずれたけど体育祭ネタ。そしていつかの夜霧の宿題提出(笑)
色んな学校があるね~。
うちの母校も無くてもよかったのに(ぼそっ)
無理なさらないように、お大事になさって下さいね!
体育祭かぁ~最後の体育祭(高3)は、友人とサボった記憶しかありません(笑)
私は指定席にいたんですけどね。他のクラスだった友人が荷物もって遊びにきて、一緒にMD聴いたりしてました。
体育(ていうか運動が)嫌いだったしなぁ。良い子は真似しちゃダメよw
学校祭のもう一柱、文化祭はやらないんですか~?
運動は私も大の苦手(^^;)
小学校の時は殆ど見学でした★
学校側も倒れられちゃ困るから無理させない(苦笑)
実際、無くていいのに、と思ってましたね、私も。
まぁ、高校にもなると、誰の親も来やぁしなかったけどね。(笑)
普通に平日にやってたしねぇ。
しかし、栗栖くんは、何で態々、県外の全寮制の高校になんか来ているんだろうねぇ。(笑)
この辺の小学校だと、お祖父ちゃんお祖母ちゃん迄来ますよー。豪華お弁当作って。私の時は給食だったので、そんな楽しみは無かったなぁ。
栗栖……何でだろうね?(笑)
確かに三連休になる職業でも、逆にその前後が忙しいんですよね! そして日曜祝日関係ない職業にはどーでもいい、と。うーん。
雨の確率上がったの? 駄目じゃん、ハッピーマンデー(笑)
でもね、偏差値高い高校ほど見学する保護者が多いんだよ。知ってた?
あたしゃ、文化祭の方がスキでしたね
走るのめっちゃ遅かったもんσ(^◇^;)
それだけ保護者が教育にも熱心なのかな?
皆様、文化系が多い様で……(^^;)
私も足はめちゃめちゃ遅い。然も持久力無いです(汗)
風邪薬をのんで参加したが、
入場行進(?)の時に気分が悪くなり、
保健室にかけこんだ記憶が・・・
卒業式ではこれまた熱でフラフラになって
シートにつまずき、前の人に体当たりしたことも
合せて思い出した・・・
あ、そういえば
小学校の時、高校の文化祭のクラスの出し物に
特別参加したこともあったなぁ・・・
行事の時に限って具合が悪くなる、とかありますよね! う~ん、薬が合わなかったのかしら?
私も最近は前にどんなの書いたか忘れる事が(笑)