〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
人形は嫌いだと、藍子は言った。
「けど、君のお父さんは人形作家だろう?」何と無く可笑しくて、僕はそう言って笑った。「彼の作品には人形への温かい愛が感じられる――この間取材に来た雑誌の記事には、そう書かれてたよ?」
それでも、と藍子は語気を強めた。嫌いなものは嫌いなのだと。
「仕方ないお嬢さんだなぁ。お父さんが人形を作り続けてきたから、君はこうして今、此処に居るんだろう? 何不自由なく。それが解ってても尚、人形は嫌いだって言うのかい?」
嫌いよ、と藍子。
「もしかして工房の人形達に焼きもち焼いてるのかい? お父さんを取られるとでも? そんな事ある訳ないじゃないか」
名前の通りの藍色のドレスを身に纏った藍子は、つんと尖った唇を更に尖らせた。そんなんじゃないもの、と。けれど、その姿はどう見ても、拗ねている様にしか見えない。それが可愛くて、僕はついまたからかう様な事を言ってしまう。。
「確かにお父さんは作品を我が子の様に大事になさってるけどね……」
藍子の眼差しが厳しくなったのを感じて、僕はふと、口元を緩めた。
「大丈夫。やっぱり君が一番だよ――何せ、魂さえ籠もった、お父さんの最高傑作なんだから」
僕は藍子の閉じる事のない硝子玉の蒼い瞳を覗き込み、そこに一抹の切なさを見て取って、ふと罪悪感に駆られた。
魂が宿る、表情が変化する、何よりテレパシーの様なもので意思を伝える。そう言われながらも――そして実際彼女の父に当たる先生と弟子の僕はそれを目の当たりにしている訳だが――決してそれ以上の事は出来ない。実際の音としての声を発する事も、動く事も。意思ある者にそれはどれ程の苦痛だろう?
ふと、僕は彼女が「人形は嫌い」と言った真意に気付いた。
人形が、嫌いなんじゃない。
人形は、嫌い……人形でいる事は嫌いなのだ、と。
ねぇ――と藍子は言った――この身体が無くなったら、この魂は人に生まれ変われるのかしら?
僕はその答を持たない……。
―了―
人形が、嫌いな人~(・・)ノ
「けど、君のお父さんは人形作家だろう?」何と無く可笑しくて、僕はそう言って笑った。「彼の作品には人形への温かい愛が感じられる――この間取材に来た雑誌の記事には、そう書かれてたよ?」
それでも、と藍子は語気を強めた。嫌いなものは嫌いなのだと。
「仕方ないお嬢さんだなぁ。お父さんが人形を作り続けてきたから、君はこうして今、此処に居るんだろう? 何不自由なく。それが解ってても尚、人形は嫌いだって言うのかい?」
嫌いよ、と藍子。
「もしかして工房の人形達に焼きもち焼いてるのかい? お父さんを取られるとでも? そんな事ある訳ないじゃないか」
名前の通りの藍色のドレスを身に纏った藍子は、つんと尖った唇を更に尖らせた。そんなんじゃないもの、と。けれど、その姿はどう見ても、拗ねている様にしか見えない。それが可愛くて、僕はついまたからかう様な事を言ってしまう。。
「確かにお父さんは作品を我が子の様に大事になさってるけどね……」
藍子の眼差しが厳しくなったのを感じて、僕はふと、口元を緩めた。
「大丈夫。やっぱり君が一番だよ――何せ、魂さえ籠もった、お父さんの最高傑作なんだから」
僕は藍子の閉じる事のない硝子玉の蒼い瞳を覗き込み、そこに一抹の切なさを見て取って、ふと罪悪感に駆られた。
魂が宿る、表情が変化する、何よりテレパシーの様なもので意思を伝える。そう言われながらも――そして実際彼女の父に当たる先生と弟子の僕はそれを目の当たりにしている訳だが――決してそれ以上の事は出来ない。実際の音としての声を発する事も、動く事も。意思ある者にそれはどれ程の苦痛だろう?
ふと、僕は彼女が「人形は嫌い」と言った真意に気付いた。
人形が、嫌いなんじゃない。
人形は、嫌い……人形でいる事は嫌いなのだ、と。
ねぇ――と藍子は言った――この身体が無くなったら、この魂は人に生まれ変われるのかしら?
僕はその答を持たない……。
―了―
人形が、嫌いな人~(・・)ノ
PR
この記事にコメントする
はーい(^o^)/
嫌い~~三(ノ><)ノ
意思なんて下手に持たない方が、人形自身にとっても幸せかもね~
主人や弟子が死んだら、この人形は、どーなるのかと思うと、更に怖い。
あ。カメリアさんは、好きだよ☆
意思なんて下手に持たない方が、人形自身にとっても幸せかもね~
主人や弟子が死んだら、この人形は、どーなるのかと思うと、更に怖い。
あ。カメリアさんは、好きだよ☆
Re:はーい(^o^)/
確かに意思なんて無い、物であった方が幸せだろうなぁ。
カメリアさんみたいに動けるなら兎も角(笑)
誰も居なくなったら……どうするんでしょうねぇ……くくく……(←おい)
カメリアさんみたいに動けるなら兎も角(笑)
誰も居なくなったら……どうするんでしょうねぇ……くくく……(←おい)
おはよう!
>「仕方ないお嬢さんだなぁ。お父さんが人形を作り続けてきたから、君はこうして今、此処に居るんだろう? 何不自由なく。・・・」
↑この部分で既に、藍子は人形なのでは? と気付いてしまった。(笑)
作風に慣れて来た為か、どうも最近は先読みできてしまいまして。(^_^;)
人形? 別に嫌いじゃなかったけど、最近は怖いと思うようになってきたかな?
誰の所為だろうね~。(笑)
↑この部分で既に、藍子は人形なのでは? と気付いてしまった。(笑)
作風に慣れて来た為か、どうも最近は先読みできてしまいまして。(^_^;)
人形? 別に嫌いじゃなかったけど、最近は怖いと思うようになってきたかな?
誰の所為だろうね~。(笑)
Re:おはよう!
ちぃっ、読まれたか(笑)
人形怖い? 誰の所為だろうね~(笑)
人形怖い? 誰の所為だろうね~(笑)
こんばんは♪
人形苦手だぁ~~!
何とも薄気味悪くてしかたがないです。
動けないだけで、じっと人間の営みを眺めているのかな?とか何か策を練って念の力で何かしでかすのかしら?等々と考えてしまうのよねぇ~!
でも、人形の立場になって考えると辛いだろう
ねぇ~!
何とも薄気味悪くてしかたがないです。
動けないだけで、じっと人間の営みを眺めているのかな?とか何か策を練って念の力で何かしでかすのかしら?等々と考えてしまうのよねぇ~!
でも、人形の立場になって考えると辛いだろう
ねぇ~!
Re:こんばんは♪
何の策を練るんでしょう?(^^;)
実は後ろで見詰めている人形の念に、我知らず操られていたりなんて事は……!
実は後ろで見詰めている人形の念に、我知らず操られていたりなんて事は……!
Re:(^o^)/
携帯で長文はきついかも(>_<;)
お引っ越し、落ち着かれましたか?
人形……髪が伸びるのは湿度の関係だとか、人毛を使っていて接着剤を栄養にして伸びてるんだとか――それもそれで何かヤダ――いう説もありますが……本当の所、どうなんでしょうねぇ?
お引っ越し、落ち着かれましたか?
人形……髪が伸びるのは湿度の関係だとか、人毛を使っていて接着剤を栄養にして伸びてるんだとか――それもそれで何かヤダ――いう説もありますが……本当の所、どうなんでしょうねぇ?
Re:無題
敷居……自分で跨いで来たら、怖っ!