〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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いや、馬鹿な話なんですがね。
Xって野郎がこの間、恋人を殺したとかで捕まった事件、ご存知で?
あれが実は私の「友人の友人」って奴でして……私は友人じゃあないですよぉ。
それでその間に入った友人のZってのがですねぇ、危うくアリバイ証人にされちまう処だったんですよぉ。勿論、知らずに。
事件当日……日曜日でしたねぇ。Zも休みでね、家でのんびりしていた処へXが来ましてね、近く迄来たから寄ったってのを無下に帰す訳にも行かず家へ上げたんですよ。そしたら……。
ふっと用事を思い出したか、女に連絡を取りたいが携帯を忘れた、電話を貸してくれ、と来た。Zも断る程ケチじゃありません。
Xは電話を掛け……コール二回程で出た様で、まぁ、煩かったですよ、これが。
でも、女は既に殺されてたんですよ……。
Xって野郎がこの間、恋人を殺したとかで捕まった事件、ご存知で?
あれが実は私の「友人の友人」って奴でして……私は友人じゃあないですよぉ。
それでその間に入った友人のZってのがですねぇ、危うくアリバイ証人にされちまう処だったんですよぉ。勿論、知らずに。
事件当日……日曜日でしたねぇ。Zも休みでね、家でのんびりしていた処へXが来ましてね、近く迄来たから寄ったってのを無下に帰す訳にも行かず家へ上げたんですよ。そしたら……。
ふっと用事を思い出したか、女に連絡を取りたいが携帯を忘れた、電話を貸してくれ、と来た。Zも断る程ケチじゃありません。
Xは電話を掛け……コール二回程で出た様で、まぁ、煩かったですよ、これが。
でも、女は既に殺されてたんですよ……。
電話はちゃーんと繋がってましたよ。ディスプレイにも通話中と出てたんですからね。でも女は一人暮らし……誰が出たんでしょうね……?
勿論Zは知りゃしませんから暫く放っといたんですが……何か様子がおかしい。Xの奴、急に「おい! どうしたんだ!?」ってね、大声で。
「誰が来たんだ!?」とか、「お、おい! 止めろ!」とかってね……血相迄変えて……。
それで慌てて電話も放って暇を告げ、駆け出してった。
どうも向こうで何か起こった様だとZも思いましたが、相手の住所も名前も判らないんじゃあ110番も出来ず。
まぁ、Xが行ったんだからとは思いつつも気になって、Zの奴、外れた儘の受話器を取った。すると回線は切れてなかった様で、直ぐに猫の声だけがにゃお~ん、とね。けど幾ら呼べど人の反応は無し。
やっぱり変だと思った処へドアの音とXの声。
やっと来たんだとほっとしたのも束の間、様子が変……。普通なら名前を呼ぶなりする筈でしょうが、妙にこそこそ猫に話し掛けた。
「よしよし……これでA子が殺された時には俺はZの所に居た事になる。後はこの猫を処分するだけでアリバイはOKだ」……ってね。
Xの野郎、猫に電話のベルが鳴ったら受話器を叩き落して外すように仕込んでたんですよぉ。それともう一つ……猫の嫌がる音――人間には聞こえない高周波って奴を流したら、フックを押して電話を切るって芸当もね。それでXは電話越しにその高周波を小さな機械を使って流しておいた。勿論Zには聞こえやしませんよ。人間ですから。
そしてZの家で一人芝居を打って来て、後は猫を回収し、第一発見者の振りをして通報するって手筈だった様ですよ。ところが110番しようと受話器を握ると……
『あんたが殺したんだね!?』
……いやぁ、仰天したでしょうな。切れてると思ってた電話から犯人指名の声がしたんですから。
え? 何で猫は電話を切らなかったか?
Xの躾は完璧だったんですがねぇ。完璧だからこそ、奴は確かめもしなかった。切れた事をね。
例の音は届かなかったんです。電話ってのはねぇ、人間の声を中心にしたごく狭い範囲の音しか通らないんですよ。実はね。
だから人間に聞こえない音なんて論外。鈴虫の音色さえ通らないそうですからね。それ以上の高周波なんて……。
Xの野郎は訓練の時、同じ部屋の中で機械のスイッチを入れたり切ったりしてたんで気付かなかったらしいですよ。猫が直接の音に反応してただけだったって事に。
馬鹿な話でしょう?
だから猫の所為じゃあないんです。
他人様を殺した罰ですよぉ。
あんな音迄鳴らして……迷惑この上ない。
え? 猫はどうしたか?
Zが引き取ってくれました。彼女に罪はありませんからね。
ええ、雌猫で……今は私のワイフです。
にゃん。
……え? お前、猫だったのかですって? 何を今更おっしゃるやら。
言いましたよね? 「私は〈友人〉じゃあない」と。「電話が煩かった」とも――声なんて言ってませんよぉ?
そうそう。彼女、電話を取る癖だけは治りません。
当家にお掛けの際はご注意を。
Z家の同居猫
フィドルより
―了―
勿論Zは知りゃしませんから暫く放っといたんですが……何か様子がおかしい。Xの奴、急に「おい! どうしたんだ!?」ってね、大声で。
「誰が来たんだ!?」とか、「お、おい! 止めろ!」とかってね……血相迄変えて……。
それで慌てて電話も放って暇を告げ、駆け出してった。
どうも向こうで何か起こった様だとZも思いましたが、相手の住所も名前も判らないんじゃあ110番も出来ず。
まぁ、Xが行ったんだからとは思いつつも気になって、Zの奴、外れた儘の受話器を取った。すると回線は切れてなかった様で、直ぐに猫の声だけがにゃお~ん、とね。けど幾ら呼べど人の反応は無し。
やっぱり変だと思った処へドアの音とXの声。
やっと来たんだとほっとしたのも束の間、様子が変……。普通なら名前を呼ぶなりする筈でしょうが、妙にこそこそ猫に話し掛けた。
「よしよし……これでA子が殺された時には俺はZの所に居た事になる。後はこの猫を処分するだけでアリバイはOKだ」……ってね。
Xの野郎、猫に電話のベルが鳴ったら受話器を叩き落して外すように仕込んでたんですよぉ。それともう一つ……猫の嫌がる音――人間には聞こえない高周波って奴を流したら、フックを押して電話を切るって芸当もね。それでXは電話越しにその高周波を小さな機械を使って流しておいた。勿論Zには聞こえやしませんよ。人間ですから。
そしてZの家で一人芝居を打って来て、後は猫を回収し、第一発見者の振りをして通報するって手筈だった様ですよ。ところが110番しようと受話器を握ると……
『あんたが殺したんだね!?』
……いやぁ、仰天したでしょうな。切れてると思ってた電話から犯人指名の声がしたんですから。
え? 何で猫は電話を切らなかったか?
Xの躾は完璧だったんですがねぇ。完璧だからこそ、奴は確かめもしなかった。切れた事をね。
例の音は届かなかったんです。電話ってのはねぇ、人間の声を中心にしたごく狭い範囲の音しか通らないんですよ。実はね。
だから人間に聞こえない音なんて論外。鈴虫の音色さえ通らないそうですからね。それ以上の高周波なんて……。
Xの野郎は訓練の時、同じ部屋の中で機械のスイッチを入れたり切ったりしてたんで気付かなかったらしいですよ。猫が直接の音に反応してただけだったって事に。
馬鹿な話でしょう?
だから猫の所為じゃあないんです。
他人様を殺した罰ですよぉ。
あんな音迄鳴らして……迷惑この上ない。
え? 猫はどうしたか?
Zが引き取ってくれました。彼女に罪はありませんからね。
ええ、雌猫で……今は私のワイフです。
にゃん。
……え? お前、猫だったのかですって? 何を今更おっしゃるやら。
言いましたよね? 「私は〈友人〉じゃあない」と。「電話が煩かった」とも――声なんて言ってませんよぉ?
そうそう。彼女、電話を取る癖だけは治りません。
当家にお掛けの際はご注意を。
Z家の同居猫
フィドルより
―了―
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Re:無題
はっ! ∑( ̄□ ̄;)//
どうも自分のアリバイだけ考えていた様です(笑)
ま、電話は慌てて駆け付けた現場から〈ついうっかり〉現場保存を考えず110番しちゃいましたって、言う心算だったんですけどね。
フックを切る事で聞かれまいとしていたZが出ちゃった(笑)
どうも自分のアリバイだけ考えていた様です(笑)
ま、電話は慌てて駆け付けた現場から〈ついうっかり〉現場保存を考えず110番しちゃいましたって、言う心算だったんですけどね。
フックを切る事で聞かれまいとしていたZが出ちゃった(笑)