〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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大きな箱と小さな箱が目の前にある。さあ、どちらを選ぶ? こんなことで迷うなんて、まるでおとぎ話だ。
こんな時、おとぎ話では大概、欲をかいて大きい箱を選んだ方が損をする。
だが、今何よりも損をするのはどちらも選ばない事だ。何しろ、このどちらかには『時限爆弾』が入っている。助かるには迅速に選び、傍の川に向いて開いた窓から出してしまうしかないという事だ。
逃げればいい? 残念ながらそれは出来ない。第一に俺は『刑事』だし、第二にこのゲームから降りる事は出来ない。そう、これは犯人と俺とのゲームなのだ。
俺は犯人の面を思い浮かべる。下ろした前髪の下から俺を見上げる、小生意気な顔。小柄で痩せ型、頭はいいが体力の無い男。友人を通じてこの俺を名指しで挑戦状を叩き付けてきた男。
『例の廃ビルの五階の部屋で待っているよ。タイムリミットは午後五時迄。急ぐ事だね』そんな文句と、箱の簡単な説明、そしてどちらかを選ぶ事と書かれていた。
あんなガキに舐められて堪るか――俺は二つの箱を見比べた。
どちらも一見、只の木箱。小さい方が縦十センチ、横二十センチ、高さ十センチ程。大きい方が同じく五十センチ、五十センチ、五十センチといった所。蝶番に導線が仕掛けられているという事で、開けて確かめる訳には行かない。それなりの厚さがあるのか、どちらも音は聞こえない。粗末な箱で木の節の跡なのか小さな穴が開いてはいたが、暗い室内灯の明かりはその奥迄届かない。
だが、俺は二つの箱をそれぞれに抱えてみて、ふっと苦笑した。
小さい箱を持ち上げ、窓から出す。
と、それを見計らったかの様に、箱が爆発――するかの様に開いた。
部屋に残った大きい箱が。
「もー、単純だなぁ」詰まらなさそうに『犯人』は言った。自らが入っていた大きな箱から出ながら。その手には『時限爆弾』を模した空き缶と目覚まし時計をテープでくっ付けた物。「大きな箱は重かったから僕じゃここ迄運べなかったと思ったんでしょ。ま、確かに僕じゃあ、僕の体重+箱の重さなんて持ち上げられもしないけどね」
俺は茫然とした顔で彼を見詰めた。
「入ってたのか……」思わず呻きが漏れる。
「うん、空の大きい箱と適当にガラクタを詰めた小さい箱を此処に運んで、友達に伝言頼んで直ぐ取って返して、君が来る前に入ったんだ。君が迷ってるから笑いを堪えるのが大変だったよ」
「解るかよ、こんなの!」俺は窓の外のベランダに出した小さい箱を戻しながら負け惜しみを言う。
「だって、此処で待ってるって書いたじゃん」いけしゃあしゃあと奴は言い、俺は反論出来なかった。
只一言――「明日は俺が『犯人』役やるからな!」とだけ、宣言した。
―了―
犯人と俺とのゲームだって書いたじゃん(笑)
だが、今何よりも損をするのはどちらも選ばない事だ。何しろ、このどちらかには『時限爆弾』が入っている。助かるには迅速に選び、傍の川に向いて開いた窓から出してしまうしかないという事だ。
逃げればいい? 残念ながらそれは出来ない。第一に俺は『刑事』だし、第二にこのゲームから降りる事は出来ない。そう、これは犯人と俺とのゲームなのだ。
俺は犯人の面を思い浮かべる。下ろした前髪の下から俺を見上げる、小生意気な顔。小柄で痩せ型、頭はいいが体力の無い男。友人を通じてこの俺を名指しで挑戦状を叩き付けてきた男。
『例の廃ビルの五階の部屋で待っているよ。タイムリミットは午後五時迄。急ぐ事だね』そんな文句と、箱の簡単な説明、そしてどちらかを選ぶ事と書かれていた。
あんなガキに舐められて堪るか――俺は二つの箱を見比べた。
どちらも一見、只の木箱。小さい方が縦十センチ、横二十センチ、高さ十センチ程。大きい方が同じく五十センチ、五十センチ、五十センチといった所。蝶番に導線が仕掛けられているという事で、開けて確かめる訳には行かない。それなりの厚さがあるのか、どちらも音は聞こえない。粗末な箱で木の節の跡なのか小さな穴が開いてはいたが、暗い室内灯の明かりはその奥迄届かない。
だが、俺は二つの箱をそれぞれに抱えてみて、ふっと苦笑した。
小さい箱を持ち上げ、窓から出す。
と、それを見計らったかの様に、箱が爆発――するかの様に開いた。
部屋に残った大きい箱が。
「もー、単純だなぁ」詰まらなさそうに『犯人』は言った。自らが入っていた大きな箱から出ながら。その手には『時限爆弾』を模した空き缶と目覚まし時計をテープでくっ付けた物。「大きな箱は重かったから僕じゃここ迄運べなかったと思ったんでしょ。ま、確かに僕じゃあ、僕の体重+箱の重さなんて持ち上げられもしないけどね」
俺は茫然とした顔で彼を見詰めた。
「入ってたのか……」思わず呻きが漏れる。
「うん、空の大きい箱と適当にガラクタを詰めた小さい箱を此処に運んで、友達に伝言頼んで直ぐ取って返して、君が来る前に入ったんだ。君が迷ってるから笑いを堪えるのが大変だったよ」
「解るかよ、こんなの!」俺は窓の外のベランダに出した小さい箱を戻しながら負け惜しみを言う。
「だって、此処で待ってるって書いたじゃん」いけしゃあしゃあと奴は言い、俺は反論出来なかった。
只一言――「明日は俺が『犯人』役やるからな!」とだけ、宣言した。
―了―
犯人と俺とのゲームだって書いたじゃん(笑)
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Re:ん!?
ふふふ、刑事さんと犯人ごっこ(笑)
そのまんま、ゲームです(^^)ノ
だから『時限爆弾』の入った箱を窓から外に出すだけだったり――川に投げたとは言ってない(笑)――文字通り「ガキ」とか言ってますな。刑事役の彼。
そのまんま、ゲームです(^^)ノ
だから『時限爆弾』の入った箱を窓から外に出すだけだったり――川に投げたとは言ってない(笑)――文字通り「ガキ」とか言ってますな。刑事役の彼。
アハハ
小生意気な顔。小柄で痩せ型、頭はいいが体力の無い男…
仮にも友人に対して、なんて言い様だよー!と、ラストで騙されて悔しいから悪あがきして書いてみる。
ううん。箱の形の違いに引っ掛かってたから見事に解らなかったー
あ。今日はありがとう♪
仮にも友人に対して、なんて言い様だよー!と、ラストで騙されて悔しいから悪あがきして書いてみる。
ううん。箱の形の違いに引っ掛かってたから見事に解らなかったー
あ。今日はありがとう♪
Re:アハハ
いえいえ(^^)
ふふふ、騙されてくれましたか~♪
嘘は全く言ってない(笑)
前髪下ろしてる辺りが子供っぽいし、友人を通じてって、どっちのとも言ってない☆(実は共通の友人・笑)
箱に空気穴も開いてるし~(笑)
ふふふ、騙されてくれましたか~♪
嘘は全く言ってない(笑)
前髪下ろしてる辺りが子供っぽいし、友人を通じてって、どっちのとも言ってない☆(実は共通の友人・笑)
箱に空気穴も開いてるし~(笑)
Re:無題
私が『』で括ってる様なのは疑って掛かった方がいいです(笑)
何の箱にしようかな~と考えていたらこんな話に(^^;)
文字通りのゲームです(笑)
何の箱にしようかな~と考えていたらこんな話に(^^;)
文字通りのゲームです(笑)
Re:こんばんは♪
そう言えば風邪だとか。お大事になさって下さいね。
そう言う私もまた風邪ひいたっぽい(笑)
今度は鼻に来た~☆ティッシュの減りが早い早い(^^;)
そう言う私もまた風邪ひいたっぽい(笑)
今度は鼻に来た~☆ティッシュの減りが早い早い(^^;)
Re:やられた!
はい(^^)
比喩でも何でもなく、ゲームでした(笑)
もうちょっと『犯人』が子供っぽい描写を入れてもよかったかな?
比喩でも何でもなく、ゲームでした(笑)
もうちょっと『犯人』が子供っぽい描写を入れてもよかったかな?
ご無沙汰してます。
な~んだ、遊びだったのか~本当にどかん!といくかと思っちゃいました☆
箱を当てただけで犯人は満足したのかな~?とか、刑事をからかって楽しみたい犯人?なんて思ったら、そういう事なんですね。
箱を当てただけで犯人は満足したのかな~?とか、刑事をからかって楽しみたい犯人?なんて思ったら、そういう事なんですね。
Re:ご無沙汰してます。
はい(^^)
あすかさんも先生のお題で書いてみましょうよ~♪
何の箱にします?(^^)
あすかさんも先生のお題で書いてみましょうよ~♪
何の箱にします?(^^)
Re:無題
箱から死神(笑)
意外と小さい箱から出て来たりして☆
それはある意味危険な箱だなぁ(笑)
意外と小さい箱から出て来たりして☆
それはある意味危険な箱だなぁ(笑)
Re:こんちは
有難うございます(^^)
楽しんで頂けたら何より♪
楽しんで頂けたら何より♪
Re:こんにちは
引っ掛かった?( ̄ー ̄)にやり
Re:あじゃ~
あはは。勿論爆弾は玩具ですから(^▽^)
空き缶に目覚まし時計くっ付けた奴(笑)
でも時間迄に選択しなかったら「じりりりりーーん!!」
……一緒に入ってる彼が一番ダメージ食いそうな気がする……あれ?(爆)
空き缶に目覚まし時計くっ付けた奴(笑)
でも時間迄に選択しなかったら「じりりりりーーん!!」
……一緒に入ってる彼が一番ダメージ食いそうな気がする……あれ?(爆)