〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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前にもこれと同じことがあった。そう思いかけたが、理性は否定する。ありえない。
それは一見、おたまじゃくしが各々一匹ずつ入った、濁った水槽。
だが、よく見ればそのおたまじゃくしの様なものはあの両生類の幼生体などではなく、眼だと知れる。
眼――眼球だ。おたまじゃくしの尻尾と見えたのは、後ろにたなびく神経の束。そしてその色は、黒い。虹彩が黒いのではない。本来白くあるべき部分が黒いのだ。一方虹彩は血の色そのものの様な、紅。大きさはやや大きくも見えるが、人間の眼球だけを取り出したとすれば、こんなものなのだろうか。
そんなものが二つの濁った水槽に、一つずつ、浮遊しては沈みを全く同時に繰り返している。
あり得ない――僕は目の前の幻影を振り払う様に、鋭く頭を振った。こんな物はあり得ない。
なのに、僕はこれに見覚えがあった……。
但しそれは夢の中。幼い頃の悪夢の中だった。
粗筋はよく覚えていない。僕は何かの事件に巻き込まれていて、何処かの屋敷を探検していた。まぁ、夢の中の事だから、筋が前後したり,場面が飛んだり、事件そのものも訳が解らないものだった様に思う。
只、焼き付いた様に記憶しているのは目覚める前のシーン。
まぁ、いい――そんな苦笑いを含んだ様な声と共に、件の眼球が、緑に濁った水槽の中に沈んで、消えて行く……そんなシーン。僕は訳が解らないながらも、酷く邪悪なイメージを感じた。
そして二十年は経ったろう現在、そいつは水槽の上部で僕を睥睨していた。
今度は夢などではない事は、先程友人から受けた左肩の傷がどくどくと疼き、教えてくれている。此処はその友人の別荘だという館。そこでいきなり鈍器で襲われた僕は……彼を手近にあった燭台で、刺し殺してしまった。
正当防衛だ。そう主張する為にも、僕はこの郊外の一軒家でも繋がる固定電話を探して館内を徘徊した。携帯はにべもない圏外表示で僕を拒否している。
そうして見付けたのが、この部屋だった。館の奥の、窓も無い暗い一室。部屋の中央の、台の下に隠す様に、濁った水槽が置かれている。そしてその中に、奴は居た。
水槽に浮かぶ、おたまじゃくし……いや、黒い眼球。
瞼も無いそれが、表情を作れない筈のそれが、にやりと笑んだ気が、した。
「お前……」僕は無意識にそいつをそう呼んでいた。「何なんだ?」
やっと捕まえた――そいつの意識が流れ込んできた――あの時逃した子供。だが、今度は逃がさない。この夢魔から逃れられはしない。あいつ――ここで友人の顔のイメージが直接浮かんだ――の夢を長年蝕み、お前を襲わせた甲斐があったというもの。今度はお前が悪夢を……。
皆迄聞いてはやらなかった。
ガシャン! 僕の振り回した燭台で、片方の水槽が割れるのと同時に、僕は――目を覚ました。
肩の激痛に呻きながら身を起こすと、傍らでは僕が刺し殺した筈の彼が涙でぐしゃぐしゃになった顔で僕の名を呼んでいて、二人は救急車に揺られていた。どうやら、殴られた痛みで気を失い、その間にあの悪夢に囚われていたらしい。幾ら正当防衛でも、友人を殺すなんて、確かに悪夢だ。
彼を宥めながら話を聞くと、僕を殺さないと自分が殺される、そんな夢を幾晩も見続けていたらしい。それでノイローゼ状態になり、今夜遂に実行に移してしまった。だが、ふと正気を取り戻して救急車を呼んだ、と。
水槽を壊した事で、夢魔の力が弱まったという事だろうか。
だが、壊した水槽は片方だけ――僕は今真剣に、悪夢を食うと言うバクを探そうかと思っている。
―了―
夜霧め~、サボりおって~(--;)
因みに彼の夢の中に出てきた「黒い眼球」は先日私が夢で見たもの。何だかミステリーの様なファンタジーの様な、よく解らない夢のラストに奴が「まあ、いい……」と沈んで行きました――もう出て来なくていいぞー!
だが、よく見ればそのおたまじゃくしの様なものはあの両生類の幼生体などではなく、眼だと知れる。
眼――眼球だ。おたまじゃくしの尻尾と見えたのは、後ろにたなびく神経の束。そしてその色は、黒い。虹彩が黒いのではない。本来白くあるべき部分が黒いのだ。一方虹彩は血の色そのものの様な、紅。大きさはやや大きくも見えるが、人間の眼球だけを取り出したとすれば、こんなものなのだろうか。
そんなものが二つの濁った水槽に、一つずつ、浮遊しては沈みを全く同時に繰り返している。
あり得ない――僕は目の前の幻影を振り払う様に、鋭く頭を振った。こんな物はあり得ない。
なのに、僕はこれに見覚えがあった……。
但しそれは夢の中。幼い頃の悪夢の中だった。
粗筋はよく覚えていない。僕は何かの事件に巻き込まれていて、何処かの屋敷を探検していた。まぁ、夢の中の事だから、筋が前後したり,場面が飛んだり、事件そのものも訳が解らないものだった様に思う。
只、焼き付いた様に記憶しているのは目覚める前のシーン。
まぁ、いい――そんな苦笑いを含んだ様な声と共に、件の眼球が、緑に濁った水槽の中に沈んで、消えて行く……そんなシーン。僕は訳が解らないながらも、酷く邪悪なイメージを感じた。
そして二十年は経ったろう現在、そいつは水槽の上部で僕を睥睨していた。
今度は夢などではない事は、先程友人から受けた左肩の傷がどくどくと疼き、教えてくれている。此処はその友人の別荘だという館。そこでいきなり鈍器で襲われた僕は……彼を手近にあった燭台で、刺し殺してしまった。
正当防衛だ。そう主張する為にも、僕はこの郊外の一軒家でも繋がる固定電話を探して館内を徘徊した。携帯はにべもない圏外表示で僕を拒否している。
そうして見付けたのが、この部屋だった。館の奥の、窓も無い暗い一室。部屋の中央の、台の下に隠す様に、濁った水槽が置かれている。そしてその中に、奴は居た。
水槽に浮かぶ、おたまじゃくし……いや、黒い眼球。
瞼も無いそれが、表情を作れない筈のそれが、にやりと笑んだ気が、した。
「お前……」僕は無意識にそいつをそう呼んでいた。「何なんだ?」
やっと捕まえた――そいつの意識が流れ込んできた――あの時逃した子供。だが、今度は逃がさない。この夢魔から逃れられはしない。あいつ――ここで友人の顔のイメージが直接浮かんだ――の夢を長年蝕み、お前を襲わせた甲斐があったというもの。今度はお前が悪夢を……。
皆迄聞いてはやらなかった。
ガシャン! 僕の振り回した燭台で、片方の水槽が割れるのと同時に、僕は――目を覚ました。
肩の激痛に呻きながら身を起こすと、傍らでは僕が刺し殺した筈の彼が涙でぐしゃぐしゃになった顔で僕の名を呼んでいて、二人は救急車に揺られていた。どうやら、殴られた痛みで気を失い、その間にあの悪夢に囚われていたらしい。幾ら正当防衛でも、友人を殺すなんて、確かに悪夢だ。
彼を宥めながら話を聞くと、僕を殺さないと自分が殺される、そんな夢を幾晩も見続けていたらしい。それでノイローゼ状態になり、今夜遂に実行に移してしまった。だが、ふと正気を取り戻して救急車を呼んだ、と。
水槽を壊した事で、夢魔の力が弱まったという事だろうか。
だが、壊した水槽は片方だけ――僕は今真剣に、悪夢を食うと言うバクを探そうかと思っている。
―了―
夜霧め~、サボりおって~(--;)
因みに彼の夢の中に出てきた「黒い眼球」は先日私が夢で見たもの。何だかミステリーの様なファンタジーの様な、よく解らない夢のラストに奴が「まあ、いい……」と沈んで行きました――もう出て来なくていいぞー!
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Re:こんばんわっ
本当に何だったんでしょ?
今回はまぁ、消え方と言い何か不気味だったんで、夢魔という形にしてみました。夢って本当に訳解らない~。
今回はまぁ、消え方と言い何か不気味だったんで、夢魔という形にしてみました。夢って本当に訳解らない~。
Re:無題
然も黒いんですよ。本来白目の所が!
不気味な呟き残して消えるし……。本当にもう出てくんなーって感じです。
でもそれをネタに書く……(^^;)
不気味な呟き残して消えるし……。本当にもう出てくんなーって感じです。
でもそれをネタに書く……(^^;)
Re:怖い~
う~む、何気に不気味ですよね(--;)
眼は……実際、大事にしないとね~☆
酷使しまくってるし。
眼は……実際、大事にしないとね~☆
酷使しまくってるし。
無題
こんばんわ(^o^)丿
巽さん、ずいぶんひどい夢を見てしまったんですね。風邪薬見たいなの飲むと、眠れるけど、浅い眠りで、いやーな夢を見ますよね。
さっき夢占いでみたら「死んだような目は疑惑、困惑、停止を暗示します。解釈は状況によりますが霊夢の場合があるので注意してください。」ってありました。注意してくださいって言われても何を?ですよね^^;
夜霧ちゃんに疑惑、困惑、停止なのかな~?
巽さん、ずいぶんひどい夢を見てしまったんですね。風邪薬見たいなの飲むと、眠れるけど、浅い眠りで、いやーな夢を見ますよね。
さっき夢占いでみたら「死んだような目は疑惑、困惑、停止を暗示します。解釈は状況によりますが霊夢の場合があるので注意してください。」ってありました。注意してくださいって言われても何を?ですよね^^;
夜霧ちゃんに疑惑、困惑、停止なのかな~?
Re:無題
注意して下さいと言われても……(^^;)
何分夢なので内容はよく覚えてはいないのですが、件の眼だけは妙にしっかり覚えてますねー。
あー、夜霧の言葉には確かに疑惑、困惑、思考停止かも(笑)
何分夢なので内容はよく覚えてはいないのですが、件の眼だけは妙にしっかり覚えてますねー。
あー、夜霧の言葉には確かに疑惑、困惑、思考停止かも(笑)
こんにちは
ひぇ~、自分で見た少し気持ち悪い夢を、悪夢にしたてて小説に書くなんて、なんて勇気があるんでしょう。
気持ち悪いぞ~、この話。(>_<)
ところでこれって、冬猫さんもやっていた、例のお題ってヤツだね。
気持ち悪いぞ~、この話。(>_<)
ところでこれって、冬猫さんもやっていた、例のお題ってヤツだね。
Re:こんにちは
そそ、このカテのはお題に対して話を作っていく奴。
ふふふ、気持ち悪いっすか~
実際、何だったんだ、あの夢は……(--;)
ふふふ、気持ち悪いっすか~
実際、何だったんだ、あの夢は……(--;)
Re:悪夢
追い掛けられる夢、母が時々見ては変な寝言で私が起こされます(苦笑)
私は夢って殆ど覚えてない方なんですが、流石に黒い眼球は覚えてましたね(^^;)
夢占い……黒い眼球なんて不吉そう……!★
私は夢って殆ど覚えてない方なんですが、流石に黒い眼球は覚えてましたね(^^;)
夢占い……黒い眼球なんて不吉そう……!★
こんばんは♪
あぁ~~やっとたどり着けたぁ~~!
私のパソコンのせいなのか?何回もエラーになってしまって、ここに来れなかったのぉ!
日曜日で集中してたんかな??
それにしても気味の悪い夢を見たんですねぇ!
目に痛みでもあるの?
それとも目に関わる心配事とか・・・・
しかし、それを小説にしてしまうとは!
凄いです!
私のパソコンのせいなのか?何回もエラーになってしまって、ここに来れなかったのぉ!
日曜日で集中してたんかな??
それにしても気味の悪い夢を見たんですねぇ!
目に痛みでもあるの?
それとも目に関わる心配事とか・・・・
しかし、それを小説にしてしまうとは!
凄いです!
Re:こんばんは♪
眼精疲労は確実にあると思う(きっぱり)
痛み迄はしないけど、なかなか疲れが取れなくて……(--;)
その所為かにゃ~?
忍の鯖、時々繋がり難い時があるなぁ。私も昨日、なかなか入れなかった:;
痛み迄はしないけど、なかなか疲れが取れなくて……(--;)
その所為かにゃ~?
忍の鯖、時々繋がり難い時があるなぁ。私も昨日、なかなか入れなかった:;
こわい…っ!!
こんばんは。
こわいっ!! 怖すぎますっ!!
眼球が浮き沈み……いやぁあああ~(泣)
悪夢ってしばらく記憶に残って、その日一日ブルーになります…。
それなのに嬉しい夢とか楽しい夢はすぐ忘れちゃうのは、なんでなんでしょう…;
こわいっ!! 怖すぎますっ!!
眼球が浮き沈み……いやぁあああ~(泣)
悪夢ってしばらく記憶に残って、その日一日ブルーになります…。
それなのに嬉しい夢とか楽しい夢はすぐ忘れちゃうのは、なんでなんでしょう…;
Re:こわい…っ!!
起きてから何か面白い夢だった気がするのに思い出せない! とかありますよね~(^^;)
なのに怖い夢は覚えてる……記憶は感情にも左右されると申します。恐怖はそれだけ強い感情という事なのでしょうか。
なのに怖い夢は覚えてる……記憶は感情にも左右されると申します。恐怖はそれだけ強い感情という事なのでしょうか。
Re:暑い~
暑いから怖い話を(笑)
まぁ、水槽に浮かんでる眼球(然も黒い)なんて気持ち悪いわなぁ(^^;)
何でそんなもん、夢に出てきたのやら(苦笑)
まぁ、水槽に浮かんでる眼球(然も黒い)なんて気持ち悪いわなぁ(^^;)
何でそんなもん、夢に出てきたのやら(苦笑)
Re:ほんま
マサイ族!?(爆)
流石なっちさん!(どういう意味や)
怖いものに追い掛けられる夢ってよく聞くけど、マサイ族は初耳やわ(笑)
や、流石に勘弁(^^;)
流石なっちさん!(どういう意味や)
怖いものに追い掛けられる夢ってよく聞くけど、マサイ族は初耳やわ(笑)
や、流石に勘弁(^^;)
Re:おぉ~~(>_<)
何かよく解んない夢でした~(^^;)
普段はあんまり覚えてないんだけどね、夢。
目覚め間際だった所為もあってか、覚えてたわ~。
普段はあんまり覚えてないんだけどね、夢。
目覚め間際だった所為もあってか、覚えてたわ~。