〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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この島に流れついて、今日でもう何日になるだろうか。船の影を見たことは一度もない。
そして人の姿も――鏡に映った俺の姿位しか。
「ここ、どの辺なんだろうな?」俺はぼんやりと呟いた。
「ドノヘンナンダロウナ?」傍らに居た『鸚鵡』が片言で真似する。その気は無いのだろうが、馬鹿にされている様で、俺はちょっと、むっとする。カラフルな顔しやがって。
島は一周するのに丸一日程度。中心部には粗末な小屋で形作られた集落――今は無人だが。
そこに残されていたのは『鸚鵡』とその仲間だけだった。
しかし自然豊かな島で、食物には苦労しなかった。だからこそ、こうして『鸚鵡』どもに言葉なんぞ教えながら、のんびりしていられるんだが……いつ迄こうしていればいいのやら。
毎日の様に浜に出ては船の姿を水平線に探す生活に、俺は倦んでいた。
俺の乗った船が難破したのは港を出て、割と直ぐの事だったと思うが……一月末の冷たい海を、そこからどう流されたものか、周囲には他の島影さえ無い。絶海の孤島――そんな感じだ。
それにしてもここに居た連中は一体どこへ行ったのやら。『鸚鵡』達を残した儘。
まぁ、こいつ等も意に介してない様だし、俺も最初は途惑ったものの、今じゃすっかり順応している。とは言え、食料の豊富な島で良かった、というのが本音だが。
出来れば船の一艘位は残して行って欲しかったが……そもそも何で居なくなったんだろう? 見る限り、それ程前の事ではない様なのに。
「いてっ!」ぼんやりと夢想していると『鸚鵡』につつかれた。構って欲しいのだろう。俺は注意しつつ、カラフルな毛に彩られた頭を撫でてやる。『鸚鵡』はキャラキャラと甲高い声を立てる。こうしてみると案外、可愛いもんだ――そう思っていたんだが……。
ある朝、連中の騒がしさに目を覚ました俺は、浜に集まった奴等の頭越しに、何艘もの船が向かって来るのを見た。その様を見て、俺は身体が凍り付いた。
動けずにいる俺の腕に『鸚鵡』が笑顔で腕を絡めて来た。「カエッテ、クル。トウサン。カアサン」教えた言葉の中から、賢明に喜びの言葉を綴る。しかし、俺は喜ぶどころじゃなかった。
何故って、船の乗員達は全て――頭に『鸚鵡』達以上に立派な角を生やした色とりどりの鬼達だったから。
鬼達は俺の姿を認めると、不意にどこからか、枡を取り出し、この『鬼が島』に上陸するが早いか何かを投げ付けてきた。ちっこくて硬い――豆だ。
「節分で逃げ帰って来たら人間が居たとは。丁度いいや。『鬼は~うち、人は~外』!」
俺は『鸚鵡』――緑の肌から俺がそう名付けた――が回してくれた船で、逃げ出した。後ろからは「いい節分が出来た」という鬼達の笑い声。やがて着いた岸は、案外近かった。
島はもう見えなかったけれど。
―了―
来年の事を言うと鬼が笑うと申します。
今頃大笑いでしょう(笑)
「ここ、どの辺なんだろうな?」俺はぼんやりと呟いた。
「ドノヘンナンダロウナ?」傍らに居た『鸚鵡』が片言で真似する。その気は無いのだろうが、馬鹿にされている様で、俺はちょっと、むっとする。カラフルな顔しやがって。
島は一周するのに丸一日程度。中心部には粗末な小屋で形作られた集落――今は無人だが。
そこに残されていたのは『鸚鵡』とその仲間だけだった。
しかし自然豊かな島で、食物には苦労しなかった。だからこそ、こうして『鸚鵡』どもに言葉なんぞ教えながら、のんびりしていられるんだが……いつ迄こうしていればいいのやら。
毎日の様に浜に出ては船の姿を水平線に探す生活に、俺は倦んでいた。
俺の乗った船が難破したのは港を出て、割と直ぐの事だったと思うが……一月末の冷たい海を、そこからどう流されたものか、周囲には他の島影さえ無い。絶海の孤島――そんな感じだ。
それにしてもここに居た連中は一体どこへ行ったのやら。『鸚鵡』達を残した儘。
まぁ、こいつ等も意に介してない様だし、俺も最初は途惑ったものの、今じゃすっかり順応している。とは言え、食料の豊富な島で良かった、というのが本音だが。
出来れば船の一艘位は残して行って欲しかったが……そもそも何で居なくなったんだろう? 見る限り、それ程前の事ではない様なのに。
「いてっ!」ぼんやりと夢想していると『鸚鵡』につつかれた。構って欲しいのだろう。俺は注意しつつ、カラフルな毛に彩られた頭を撫でてやる。『鸚鵡』はキャラキャラと甲高い声を立てる。こうしてみると案外、可愛いもんだ――そう思っていたんだが……。
ある朝、連中の騒がしさに目を覚ました俺は、浜に集まった奴等の頭越しに、何艘もの船が向かって来るのを見た。その様を見て、俺は身体が凍り付いた。
動けずにいる俺の腕に『鸚鵡』が笑顔で腕を絡めて来た。「カエッテ、クル。トウサン。カアサン」教えた言葉の中から、賢明に喜びの言葉を綴る。しかし、俺は喜ぶどころじゃなかった。
何故って、船の乗員達は全て――頭に『鸚鵡』達以上に立派な角を生やした色とりどりの鬼達だったから。
鬼達は俺の姿を認めると、不意にどこからか、枡を取り出し、この『鬼が島』に上陸するが早いか何かを投げ付けてきた。ちっこくて硬い――豆だ。
「節分で逃げ帰って来たら人間が居たとは。丁度いいや。『鬼は~うち、人は~外』!」
俺は『鸚鵡』――緑の肌から俺がそう名付けた――が回してくれた船で、逃げ出した。後ろからは「いい節分が出来た」という鬼達の笑い声。やがて着いた岸は、案外近かった。
島はもう見えなかったけれど。
―了―
来年の事を言うと鬼が笑うと申します。
今頃大笑いでしょう(笑)
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Re:あ~っ、
季節感を先取りする女とお呼び下さい(笑)
シリアスが続くと偶に変なの書きたくなるのよ(笑)
シリアスが続くと偶に変なの書きたくなるのよ(笑)
Re:食べられなくて
何月でしょうね(笑)
11月の行事と言うか風物詩が思い浮かばなくて!
ん~、七五三?
11月の行事と言うか風物詩が思い浮かばなくて!
ん~、七五三?
笑っちゃいました(^^)
かわいい子鬼ちゃん、
初めて出会いました~(^^)
昔話好きだけど、私の前には登場したことなかったです。可愛い子鬼・・・。
「カラフルな顔しやがって」っていうのが、
あとひく面白さです♪ 名台詞かも(^o^)丿
初めて出会いました~(^^)
昔話好きだけど、私の前には登場したことなかったです。可愛い子鬼・・・。
「カラフルな顔しやがって」っていうのが、
あとひく面白さです♪ 名台詞かも(^o^)丿
Re:笑っちゃいました(^^)
お留守番の子鬼ちゃん、ウケてくれて有難う(^^)
お父さん達は見た目怖いけど、きっと陽気♪
んで、やっぱりカラフル(笑)
お父さん達は見た目怖いけど、きっと陽気♪
んで、やっぱりカラフル(笑)
Re:無題
夜霧、風邪は売らないでね?(^^;)
「鬼は外」と言われたら、偶の里帰りもいいもんだ♪ そんな感じの陽気な鬼さんになっちゃいました。そこにたった一人の彼は怖かったでしょうけどね(笑)
「鬼は外」と言われたら、偶の里帰りもいいもんだ♪ そんな感じの陽気な鬼さんになっちゃいました。そこにたった一人の彼は怖かったでしょうけどね(笑)
Re:無題
力を貸すから金棒を用意してくれ、とか言われたり(笑)
そしたら「鬼に金棒」なので、最早人間の言う事なんぞ聞いてくれるかどうか?(^^;)
そしたら「鬼に金棒」なので、最早人間の言う事なんぞ聞いてくれるかどうか?(^^;)