〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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もうくる頃だ。きっとくる。そう思いながら、どれだけ待っているだろう。
「病院に住んでいる様なものよ」そう言って微かに笑った少女が一時退院したのはいつの事だっただかしら。幼い頃から病魔に蝕まれ、入退院を繰り返していたと言う。歳は十七歳だと言ったろうか。
やはり長期入院の私とは、歳の離れた間柄ながら、院内のサロンで会う度に、いつしか話をする様になっていた。テレビの話、数週間遅れで入った雑誌の話、家族の話……退屈ね、という愚痴。
彼女も私も、一日中ベッドに居なければならない程の病状ではなかった。あの頃は。だから尚更、外に出られない我が身が歯痒かった。
それでも退院の日はきっと来る、そう思っていた。
そして彼女が一時退院し――私は更に退屈な日々を送る事となった。
これ迄にも、彼女が一時帰宅した事はあった。少しでも家で過ごさせたい、過ごしたい、そんな家族の想いを汲んでの事でしょうね。
しかし、今回は長い……。転院する様な事は言っていなかった筈だけど。
この儘では彼女が病院に戻って来る前に、私が退院してしまうかしら? そんな微苦笑が頬を歪ませる。退院の予定なんて無いのに。
別れるなら挨拶位はしたかったけれど……。
勿論、彼女が元気になって退院したのならそれでいい。でもあの日彼女は確かに一時帰宅だと、またねと言って病院を出て行ったのだ。
私の中に不安が育っていた。
転院したのならそれでもいい。別れを言えなかった未練は残るけれど、それで彼女の病状が好転するのなら。
だが、あの日の退院が〈少しでも家族と過ごさせたい、過ごしたい。最期位〉という想いからであったなら……。
看護士に訊いてみようか?――そう考える度、私の心臓は早鐘を打つ。もし、想像通りの事を言われたら……? ここで黙って待っていれば、未だ希望を持つ事は出来る。でも確かめてしまったら……。
しかし、言葉を掛ける迄も無く、看護士は私に報せてくれた。サロンの入り口を見詰め続ける私から、そっと哀しげな眼を逸らす事で。以前よりも温かい、私を気遣うその言葉で。
彼女はもうここには来ないのだと。
それでも、私は待っている。もうそろそろ、彼女が私を迎えに来てくれるのを……。
―了―
あれ? 暗くなりましたよ?
やはり長期入院の私とは、歳の離れた間柄ながら、院内のサロンで会う度に、いつしか話をする様になっていた。テレビの話、数週間遅れで入った雑誌の話、家族の話……退屈ね、という愚痴。
彼女も私も、一日中ベッドに居なければならない程の病状ではなかった。あの頃は。だから尚更、外に出られない我が身が歯痒かった。
それでも退院の日はきっと来る、そう思っていた。
そして彼女が一時退院し――私は更に退屈な日々を送る事となった。
これ迄にも、彼女が一時帰宅した事はあった。少しでも家で過ごさせたい、過ごしたい、そんな家族の想いを汲んでの事でしょうね。
しかし、今回は長い……。転院する様な事は言っていなかった筈だけど。
この儘では彼女が病院に戻って来る前に、私が退院してしまうかしら? そんな微苦笑が頬を歪ませる。退院の予定なんて無いのに。
別れるなら挨拶位はしたかったけれど……。
勿論、彼女が元気になって退院したのならそれでいい。でもあの日彼女は確かに一時帰宅だと、またねと言って病院を出て行ったのだ。
私の中に不安が育っていた。
転院したのならそれでもいい。別れを言えなかった未練は残るけれど、それで彼女の病状が好転するのなら。
だが、あの日の退院が〈少しでも家族と過ごさせたい、過ごしたい。最期位〉という想いからであったなら……。
看護士に訊いてみようか?――そう考える度、私の心臓は早鐘を打つ。もし、想像通りの事を言われたら……? ここで黙って待っていれば、未だ希望を持つ事は出来る。でも確かめてしまったら……。
しかし、言葉を掛ける迄も無く、看護士は私に報せてくれた。サロンの入り口を見詰め続ける私から、そっと哀しげな眼を逸らす事で。以前よりも温かい、私を気遣うその言葉で。
彼女はもうここには来ないのだと。
それでも、私は待っている。もうそろそろ、彼女が私を迎えに来てくれるのを……。
―了―
あれ? 暗くなりましたよ?
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Re:暗く
待つ相手が居る事は寂しくもあり、楽しみでもあり……そんな感じで☆
因みに病院生活はマジで退屈……☆
因みに病院生活はマジで退屈……☆
Re:確かに……
>ふにゃあぁぁー!!!
きゃ~、猫がっ(笑)
どうも暗かったり寂しかったりな話を書くと、自分でボケたコメントを書いてしまいます(笑)
きゃ~、猫がっ(笑)
どうも暗かったり寂しかったりな話を書くと、自分でボケたコメントを書いてしまいます(笑)
無題
こんばんは。
少女は自分の未来を予知していたように思えるね。
主人公は何で入院しているのかなぁ。
主人公は、次は自分って思っているのかなぁ、なんてちょっと思ったけど。
歳が離れているっていうのと、少女と呼んでいることで、結構な歳の女性?なのかな、主人公は。
だとすると、死が待っているような、病気じゃないのかな。
どちらに取るかで感じ方が違ってくる気がする。
少女は自分の未来を予知していたように思えるね。
主人公は何で入院しているのかなぁ。
主人公は、次は自分って思っているのかなぁ、なんてちょっと思ったけど。
歳が離れているっていうのと、少女と呼んでいることで、結構な歳の女性?なのかな、主人公は。
だとすると、死が待っているような、病気じゃないのかな。
どちらに取るかで感じ方が違ってくる気がする。
Re:無題
かなり老齢の御婦人のイメージです。
お祖母ちゃんと孫……曾孫位の歳の差ですね。
う~ん、最近どうも説明足らずだわ。やっぱり落ち着いて書かないとね。
お祖母ちゃんと孫……曾孫位の歳の差ですね。
う~ん、最近どうも説明足らずだわ。やっぱり落ち着いて書かないとね。
Re:無題
例えお迎えでもまた会いたいと言うか……(^^;)
直接迎えに来なくても彼岸を離れればきっと……そんな感じです。
直接迎えに来なくても彼岸を離れればきっと……そんな感じです。
入院かぁ。。
物悲しいような、温かいような不思議なお話ですねっ(^^) 長期入院だと、取り残されたようなさみしい気持ちになるんでしょうね。。。
私は短期でしか入院したことないから、ぐっすり休めて超快適だったけど、母が長期入院してたとき、周りのベッドにいる方々が、どんどん亡くなってしまって、そうすると、一層不安になるみたいでした。昨日まで一緒にお見舞いのお菓子食べてた人が、翌朝いなくて、看護婦さんがベッド片づけたり知るの見たら、悲しくなりますよね(>_<)
私は短期でしか入院したことないから、ぐっすり休めて超快適だったけど、母が長期入院してたとき、周りのベッドにいる方々が、どんどん亡くなってしまって、そうすると、一層不安になるみたいでした。昨日まで一緒にお見舞いのお菓子食べてた人が、翌朝いなくて、看護婦さんがベッド片づけたり知るの見たら、悲しくなりますよね(>_<)
Re:入院かぁ。。
子供の頃入院してた時は、やっぱり長期の子供同士友達が出来たり、おばさんとお話ししてたり……。退院して外来で通ってる間に悲しい報せを聞いたり……。
やっぱり病院って、明暗があるなぁ(--。)
やっぱり病院って、明暗があるなぁ(--。)
Re:悲しいなぁ
夜霧、何確かめるんだろう? 然も呼び出して!?
猫に呼び出される人って一体……私か?
猫に呼び出される人って一体……私か?

無題
暗くはないけど。
「彼女が私を迎えに来てくれるのを……。」
は、ちょっと悲観的?な感じをうけたかも。
お話は良かったです。結構すき。ファブィ。
あ、そうそう。
夜霧が出かけてるねw 初めてのことでびっくりした。
「彼女が私を迎えに来てくれるのを……。」
は、ちょっと悲観的?な感じをうけたかも。
お話は良かったです。結構すき。ファブィ。
あ、そうそう。
夜霧が出かけてるねw 初めてのことでびっくりした。
Re:無題
有難うございます(^^)
お迎え待ってる心境はやっぱり暗いかと(^^;)
まぁ、会いたがってる訳だけど。
夜霧が無断(?)外出してましたか。ブログペットの「お友達」にプレミアオーナーが居ると、偶にその方のペットの所に遊びに行って掛け合いしてるみたいです(笑)
お迎え待ってる心境はやっぱり暗いかと(^^;)
まぁ、会いたがってる訳だけど。
夜霧が無断(?)外出してましたか。ブログペットの「お友達」にプレミアオーナーが居ると、偶にその方のペットの所に遊びに行って掛け合いしてるみたいです(笑)