〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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まだ追ってくる。どこまで逃げてもついてくる。息が切れて、苦しい。
それはやや遠ざかったかと思わせてはまた近付き、丸で彼をなぶるかの様に付いて来た。未だ夜も明け切らぬ、人通りの無い薄蒼く靄に沈んだ街で。
始めは珍しい事もあるものだと、軽く首を傾げただけだった。
この地方都市への出張の帰り、始発に間に合わせるべく宿を早めに発ったのだが――そう言えば、宿のロビーでも……。あの時既に追跡は始まっていたのか?
珍しい事も余りに続くと偶然とは思えなくなってくるものだ。然もそれは彼の道すがら、繰り返された。薄気味悪く感じた彼の脚が速まるのにそれ程、距離も時間も必要としなかった。駅迄の四分の一を過ぎた辺りから、彼は駆け出していた。
だが――
角を曲がろうと脚を緩めれば、その角の煙草屋から。
助けを求めようと開いている救急病棟の受け付けに駆け込めばそのカウンターから。
そして通りに佇むボックスから――その「音」は響き出す。
ジリリーン!
ジリリーン!
…………
滅多に鳴る事など無い公衆電話のベル。それが何故こんな早朝、然も彼の行く先々で?
出る者も居ない執拗な呼び出しに苛立ち、いっそ脚を止めて受話器を取ってみようかとも思った。が、その度に電話のコードを首に絡み付けた自分の姿が脳裏に浮かび、より脚を忙しなくする。ナンセンスな想像だと自らを冷笑しつつも、それを振り払えない。
こんな電話が、こんな状況がまともな訳は無い。出れば何が起こるか……。あるいは死者の声に心臓を射抜かれるかも知れない。そう思うとこれだけ走っているのに、身体は温まるどころか背筋を悪寒が這い上がる。
兎に角、この未だに公衆電話がそこ此処にある街から抜け出そう。彼は耳を塞ぎ、只管駅を目指す。手回り品以外の荷物を宅配にしたのは幸運だった。でなければ疾うに限界だ。
駅前のロータリーに四、五台ボックスが並んでいる。しかし最早脚を止める事は考えられない。もう、こんな音に囲まれていたくない!
順に鳴り出すボックスの前で、彼はラストスパートを掛けた。幸い小さい駅舎のホームに電話は無かった。くずおれる様に座り込み、やがて来た脱出の電車に乗り、街を離れる。
見慣れた我が街に降り立った時、彼の携帯が鳴った――ジリリーン! …………
―了―
注:勿論彼の着メロ設定が「ジリリーン!」だった……なんてオチは無いです(笑)
今朝は携帯からも全く見られない~と思ったら、システムエラーだったんですね。PCからのログインも出来なかったし。「何でー?」と慌ててCookieの削除とかやってたら、あちこちのログが……(^^;
久々に焦りました☆
始めは珍しい事もあるものだと、軽く首を傾げただけだった。
この地方都市への出張の帰り、始発に間に合わせるべく宿を早めに発ったのだが――そう言えば、宿のロビーでも……。あの時既に追跡は始まっていたのか?
珍しい事も余りに続くと偶然とは思えなくなってくるものだ。然もそれは彼の道すがら、繰り返された。薄気味悪く感じた彼の脚が速まるのにそれ程、距離も時間も必要としなかった。駅迄の四分の一を過ぎた辺りから、彼は駆け出していた。
だが――
角を曲がろうと脚を緩めれば、その角の煙草屋から。
助けを求めようと開いている救急病棟の受け付けに駆け込めばそのカウンターから。
そして通りに佇むボックスから――その「音」は響き出す。
ジリリーン!
ジリリーン!
…………
滅多に鳴る事など無い公衆電話のベル。それが何故こんな早朝、然も彼の行く先々で?
出る者も居ない執拗な呼び出しに苛立ち、いっそ脚を止めて受話器を取ってみようかとも思った。が、その度に電話のコードを首に絡み付けた自分の姿が脳裏に浮かび、より脚を忙しなくする。ナンセンスな想像だと自らを冷笑しつつも、それを振り払えない。
こんな電話が、こんな状況がまともな訳は無い。出れば何が起こるか……。あるいは死者の声に心臓を射抜かれるかも知れない。そう思うとこれだけ走っているのに、身体は温まるどころか背筋を悪寒が這い上がる。
兎に角、この未だに公衆電話がそこ此処にある街から抜け出そう。彼は耳を塞ぎ、只管駅を目指す。手回り品以外の荷物を宅配にしたのは幸運だった。でなければ疾うに限界だ。
駅前のロータリーに四、五台ボックスが並んでいる。しかし最早脚を止める事は考えられない。もう、こんな音に囲まれていたくない!
順に鳴り出すボックスの前で、彼はラストスパートを掛けた。幸い小さい駅舎のホームに電話は無かった。くずおれる様に座り込み、やがて来た脱出の電車に乗り、街を離れる。
見慣れた我が街に降り立った時、彼の携帯が鳴った――ジリリーン! …………
―了―
注:勿論彼の着メロ設定が「ジリリーン!」だった……なんてオチは無いです(笑)
今朝は携帯からも全く見られない~と思ったら、システムエラーだったんですね。PCからのログインも出来なかったし。「何でー?」と慌ててCookieの削除とかやってたら、あちこちのログが……(^^;
久々に焦りました☆
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キャア~~~
ジリリリーーン
ジリリリーーン
ジリリリーーン
………………
こ、恐い!
出たらどーなったんでしょうね?
そこら辺が気になりつつも、やっぱり出ないだろうな、私なら。
だって恐いもーん(笑)
ジリリリーーン
ジリリリーーン
………………
こ、恐い!
出たらどーなったんでしょうね?
そこら辺が気になりつつも、やっぱり出ないだろうな、私なら。
だって恐いもーん(笑)
ジリリーン……!
誰からとも判らない電話って、一瞬緊張しません?(^^;)
携帯やナンバーディスプレイなら知人のは判るけど。
ある日携帯を見たら非通知の履歴が一杯連続で……というのも怖そう。
携帯やナンバーディスプレイなら知人のは判るけど。
ある日携帯を見たら非通知の履歴が一杯連続で……というのも怖そう。
Re:……ジリリーン……!
う、相手が判っても怖い場合が……!(^^;
電話っていきなり他人が部屋に上がり込んで来るみたいで、ちょっと苦手です★メールは平気なんだけど。
電話っていきなり他人が部屋に上がり込んで来るみたいで、ちょっと苦手です★メールは平気なんだけど。
無題
ジリリリ-ン
そっか、携帯電話か。
うーん。しんは取ってみたいww
気になるw
ところで、
しんは、ホームのベルがジリリリ-ンと鳴って、アナウンスが
「どこにいくきだい?」
とか想像しちゃった(笑
そっか、携帯電話か。
うーん。しんは取ってみたいww
気になるw
ところで、
しんは、ホームのベルがジリリリ-ンと鳴って、アナウンスが
「どこにいくきだい?」
とか想像しちゃった(笑
Re:無題
そんなアナウンスも怖いですね(^^;)
どこの誰からの、あるいは何からの電話なのか気になりつつも、追い掛けられるのは嫌だ~(笑)
どこの誰からの、あるいは何からの電話なのか気になりつつも、追い掛けられるのは嫌だ~(笑)