〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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新年早々、怪事件が発生。降り積もった雪に残っていたのは、不可解な足跡だった。
第一発見者は、気分だけでも『御来光』を拝もうと街をやっと見下ろせる程度の里山に登ったお調子者だった。然も未成年の分際で御屠蘇を盗み飲みして。
だから、慌てて降りる途中転げたのか雪まみれの彼が早朝訪ねて来た時は私でも思わず怒鳴ったわ。それでも付いて登ったのはまぁ、腐れ縁なりの付き合いね。
「ほら、佳奈、早く! 溶けちまうだろ!」
「はいはい」急かすお調子者に適当に答える私。「急ぎますよ」阿呆らしいけど――と内心付け加える。
「……信じてないだろ」
ぐ。見抜かれた。お調子者の剛ごときに。不覚。
「剛、あんたお酒は抜けたの?」
「大丈夫! 大体あれ見たら酒も眠気も吹っ飛ぶよ!」
まぁ、確かに足取りもしっかり……してはいる。歩いてみると意外と傾斜のきつい里山を、ジャケットのポケットからはみ出した派手な蛍光ピンクのクマを揺らしながら、すいすいと登って行く。
私はふと、気になって自分の携帯を取り出した。山とは言っても小さな山の事。案外通じる。お気に入りの猫の付いたストラップを揺らしつつ、メモリーから呼び出し……留守電にも繋がらず、やがて接続失敗の表示。その間も前をいく剛の背から目を離さない儘、歩き続けてるけど。私は発信を繰り返す……。
辿り着いた山頂には、初日が差して、綺麗だった。
「ほら、みろよ!」剛は町の方角を指して言った。手に双眼鏡を押し付けてくる。用意がいい。
「どれどれ」私は双眼鏡で眺め……目を瞠った。
直線状に立ち並んだ家々の屋根の上、そのやはり白銀の上に、何かの足跡――の様なものが並んでいる。ピントを調節してよくよく見ると……猫の足跡っぽい。然も、本物のじゃなくて、大きな丸に小さな丸三つ付けた、絵に描いた様な奴。でも、双眼鏡使ってるとは言えここから見える位だから、大きさは半端じゃない。
「な? びっくりしただろ?」笑う剛に私は一言。
「呆れた」心底、呆れた。「……馬鹿」
「な、何だよ!」不満顔を見返す私の視界が滲んだ。
「足跡、あんたの友達の家の屋根ばかりじゃない。それに、武田の所で途切れてる」
雪が屋根から落ちて足跡が崩れていた。近くには回転する赤色の灯。
その時掛け続けていた電話に応答――画面の表示は剛。でも目前の彼のクマストラップはポケットから覗くだけ。
〈佳奈か!?〉声は武田。
私の好きな猫の足跡を描いて驚かそうとして、剛が屋根から落ちた――私がここに来て察した通りの事を告げてくれる。早朝から鳴り続ける携帯の着信に気付いて雪に埋まった彼を見付けた、と。でもちょっと遅かった様だとも。
剛は……揺らぎ、消えながら何故解ったのかって苦笑してる。
「足跡、私一人分しか無いよ」私はぽつり、泣いた。
―了―
ハロウィンなのに「新年早々」……予告通り季節感は無視!(笑)
ハロウィンネタが思い付かなかっただけとも言いますな(--;)
馴染みが薄いのと前にやった「満月様」がダブるのよ……。
だから、慌てて降りる途中転げたのか雪まみれの彼が早朝訪ねて来た時は私でも思わず怒鳴ったわ。それでも付いて登ったのはまぁ、腐れ縁なりの付き合いね。
「ほら、佳奈、早く! 溶けちまうだろ!」
「はいはい」急かすお調子者に適当に答える私。「急ぎますよ」阿呆らしいけど――と内心付け加える。
「……信じてないだろ」
ぐ。見抜かれた。お調子者の剛ごときに。不覚。
「剛、あんたお酒は抜けたの?」
「大丈夫! 大体あれ見たら酒も眠気も吹っ飛ぶよ!」
まぁ、確かに足取りもしっかり……してはいる。歩いてみると意外と傾斜のきつい里山を、ジャケットのポケットからはみ出した派手な蛍光ピンクのクマを揺らしながら、すいすいと登って行く。
私はふと、気になって自分の携帯を取り出した。山とは言っても小さな山の事。案外通じる。お気に入りの猫の付いたストラップを揺らしつつ、メモリーから呼び出し……留守電にも繋がらず、やがて接続失敗の表示。その間も前をいく剛の背から目を離さない儘、歩き続けてるけど。私は発信を繰り返す……。
辿り着いた山頂には、初日が差して、綺麗だった。
「ほら、みろよ!」剛は町の方角を指して言った。手に双眼鏡を押し付けてくる。用意がいい。
「どれどれ」私は双眼鏡で眺め……目を瞠った。
直線状に立ち並んだ家々の屋根の上、そのやはり白銀の上に、何かの足跡――の様なものが並んでいる。ピントを調節してよくよく見ると……猫の足跡っぽい。然も、本物のじゃなくて、大きな丸に小さな丸三つ付けた、絵に描いた様な奴。でも、双眼鏡使ってるとは言えここから見える位だから、大きさは半端じゃない。
「な? びっくりしただろ?」笑う剛に私は一言。
「呆れた」心底、呆れた。「……馬鹿」
「な、何だよ!」不満顔を見返す私の視界が滲んだ。
「足跡、あんたの友達の家の屋根ばかりじゃない。それに、武田の所で途切れてる」
雪が屋根から落ちて足跡が崩れていた。近くには回転する赤色の灯。
その時掛け続けていた電話に応答――画面の表示は剛。でも目前の彼のクマストラップはポケットから覗くだけ。
〈佳奈か!?〉声は武田。
私の好きな猫の足跡を描いて驚かそうとして、剛が屋根から落ちた――私がここに来て察した通りの事を告げてくれる。早朝から鳴り続ける携帯の着信に気付いて雪に埋まった彼を見付けた、と。でもちょっと遅かった様だとも。
剛は……揺らぎ、消えながら何故解ったのかって苦笑してる。
「足跡、私一人分しか無いよ」私はぽつり、泣いた。
―了―
ハロウィンなのに「新年早々」……予告通り季節感は無視!(笑)
ハロウィンネタが思い付かなかっただけとも言いますな(--;)
馴染みが薄いのと前にやった「満月様」がダブるのよ……。
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trick or treat!
姐さん、あれは「ハロウィンにしては早いけど……」という時期の話なので……
近所のお家回ってお菓子貰ってって、やってる事は同じですが。元の意味は何だったのかなー?
ハロウィンはジャック・オー・ランタンしか思い浮かばないにゃ
近所のお家回ってお菓子貰ってって、やってる事は同じですが。元の意味は何だったのかなー?
ハロウィンはジャック・オー・ランタンしか思い浮かばないにゃ
Re:無題
有難うございます。
お調子者だけど、ここ迄しても彼女を喜ばせたい、そんな男の子です。
お調子者だけど、ここ迄しても彼女を喜ばせたい、そんな男の子です。
Re:・・・もう!
よく映画の宣伝にあるアレって、誇大広告だと思いません?(^^)
つい、ツッコミ入れちゃいます。
つい、ツッコミ入れちゃいます。
Re:無題
大暑だよ(笑)
あ~、冬が恋しい☆
あ~、冬が恋しい☆