〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「あの……そんなにお泣きになられない方が宜しいかと存じますが……」恐る恐る、私が声をお掛けしたのは、ある女性。こちらを振り返ったその顔は蒼褪め、長き号泣の為に目は赤く充血し、唇を戦慄かせ……。私が人間の女性であったなら、思わず悲鳴を上げていたかも知れません。勿論、お客様にその様な非礼を働く訳には参りませんが。
「放って置いて頂戴!」金切り声で、彼女は仰いました。「私が泣かなくてどうすると言うのよ!」
「そ、それは、まぁ……」私は慌てて宥めます。「ですが、この屋敷には死期の近い人間など居ませんし……」
「そうね。けれど、此処には死の匂いが溢れているわ。不老不死の吸血族の屋敷だから少しはいいかと思ったけれど……その陰には糧となった人の死が……」また、泣き出されました。
思わず、溜め息が漏れました。
彼女はもう私の事など忘れたかの様に、その場に蹲って号泣を再開していました。
ほとほと困っている私に、苦笑を含んだ声が掛けられました。
「カメリア、放って置いておやり」お嬢様でした。「それにしても大変だね。対象を人間に限っても、死の匂いの無い場所なんて、そうそう無いだろうし――あったとしたら元々人も住まない場所位か」
しかしそんな所では、この泣き虫のお客様ご自身も糧を得られないのではないでしょうか。
ともあれ、私達の手には負えないと、泣き続ける女性を後に残し、私達はお嬢様のお部屋へと、移動したのでした。何より、私は兎も角、お嬢様は死を生み出す元凶ともなられる方。死の匂いを纏っておられますから。あの場に留まられては――こう申し上げてはお嬢様には大変失礼ではございますが――女性にとっては迷惑千万でございましょう。
「困った体質でございますね。妖ですのに」ワインをお持ちしながら、私は申し上げました。「死の匂いに反応して、泣き出さずにはいられないなんて……」
「何。あれはああいう種族だからね」
人の死を察知し、哀しげな鳴き声でそれを予告する精霊、バンシー。泣き腫らした紅い眼、蒼白い顔、振り乱した髪。見た人に死の予感を、不吉な恐怖を与えるもの。
「実際は人の死の匂いに対するアレルギーだなどとは、人間達も思うまいな」そう言って笑うお嬢様の声に、今日もバンシーの鳴き声が不協和音として被ります。
取り敢えず、バンシー様? この屋敷は貴方様には不向きかと存じます。
転地療法として、無人島などは如何でしょうか?
―了―
今日は短めに~。
バンシー=泣き女はアイルランド等の精霊さん。死期が近い人の家周辺に現れては、泣き叫ぶ。ちょっと縁起悪い(^^;)
「放って置いて頂戴!」金切り声で、彼女は仰いました。「私が泣かなくてどうすると言うのよ!」
「そ、それは、まぁ……」私は慌てて宥めます。「ですが、この屋敷には死期の近い人間など居ませんし……」
「そうね。けれど、此処には死の匂いが溢れているわ。不老不死の吸血族の屋敷だから少しはいいかと思ったけれど……その陰には糧となった人の死が……」また、泣き出されました。
思わず、溜め息が漏れました。
彼女はもう私の事など忘れたかの様に、その場に蹲って号泣を再開していました。
ほとほと困っている私に、苦笑を含んだ声が掛けられました。
「カメリア、放って置いておやり」お嬢様でした。「それにしても大変だね。対象を人間に限っても、死の匂いの無い場所なんて、そうそう無いだろうし――あったとしたら元々人も住まない場所位か」
しかしそんな所では、この泣き虫のお客様ご自身も糧を得られないのではないでしょうか。
ともあれ、私達の手には負えないと、泣き続ける女性を後に残し、私達はお嬢様のお部屋へと、移動したのでした。何より、私は兎も角、お嬢様は死を生み出す元凶ともなられる方。死の匂いを纏っておられますから。あの場に留まられては――こう申し上げてはお嬢様には大変失礼ではございますが――女性にとっては迷惑千万でございましょう。
「困った体質でございますね。妖ですのに」ワインをお持ちしながら、私は申し上げました。「死の匂いに反応して、泣き出さずにはいられないなんて……」
「何。あれはああいう種族だからね」
人の死を察知し、哀しげな鳴き声でそれを予告する精霊、バンシー。泣き腫らした紅い眼、蒼白い顔、振り乱した髪。見た人に死の予感を、不吉な恐怖を与えるもの。
「実際は人の死の匂いに対するアレルギーだなどとは、人間達も思うまいな」そう言って笑うお嬢様の声に、今日もバンシーの鳴き声が不協和音として被ります。
取り敢えず、バンシー様? この屋敷は貴方様には不向きかと存じます。
転地療法として、無人島などは如何でしょうか?
―了―
今日は短めに~。
バンシー=泣き女はアイルランド等の精霊さん。死期が近い人の家周辺に現れては、泣き叫ぶ。ちょっと縁起悪い(^^;)
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Re:こんばんは
サイレンの妖精(笑)
取り敢えず近付く人は居なくなりそう(^^;)
取り敢えず近付く人は居なくなりそう(^^;)
Re:無題
という事で、バンシーは常に泣いている、と(←おい)
や、話によっては家付きのバンシーとか居たりするそうですな。家の者が何処に居ても、核となる屋敷の付近で泣いている、とか。
取り敢えず周辺で泣いてて欲しくはない精霊です☆
や、話によっては家付きのバンシーとか居たりするそうですな。家の者が何処に居ても、核となる屋敷の付近で泣いている、とか。
取り敢えず周辺で泣いてて欲しくはない精霊です☆
Re:こんばんは☆
まぁ、不吉ですね(^^;)
私もお会いしたくはないです☆
私もお会いしたくはないです☆
Re:こんにちは
野球、勝ちましたね~(^-^)v
は~、しかし……わぁるどべぇすぼぉるくらしっく……ワールドと言うより、極東大会に見えてしかたないっす(笑)
は~、しかし……わぁるどべぇすぼぉるくらしっく……ワールドと言うより、極東大会に見えてしかたないっす(笑)
Re:再び(笑)
あはは(^^;)
確かに縁起悪っ!(爆)
私は仕事が一区切りついて、ワンセグで見た所が丁度その同点打☆
ひぃ~☆と思いながらも残りの仕事を片付け、次に見たら旗持ってグラウンド一周してました\(゜▽゜)/
うーん、縁起のいい妖……座敷童子?(笑)
確かに縁起悪っ!(爆)
私は仕事が一区切りついて、ワンセグで見た所が丁度その同点打☆
ひぃ~☆と思いながらも残りの仕事を片付け、次に見たら旗持ってグラウンド一周してました\(゜▽゜)/
うーん、縁起のいい妖……座敷童子?(笑)
ありゃま!
死の匂いに対するアレルギーだったんですか!
それだと、泣かずに暮らせる場所は何処にもない
のかなぁ?
お気の毒にねぇ~!(笑)
お嬢様の館はまずいよねぇ~!
早くどこか他を探さないと!(笑)
それだと、泣かずに暮らせる場所は何処にもない
のかなぁ?
お気の毒にねぇ~!(笑)
お嬢様の館はまずいよねぇ~!
早くどこか他を探さないと!(笑)
Re:ありゃま!
お嬢様達は不老不死に近くても、ねぇ(^^;)
取り敢えず無人島に避難?
取り敢えず無人島に避難?