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きっとこの暑さの所為なんだろう。
視界の右隅で、白い影がちらちらしているのは。
そして誰も居ない筈の部屋の中で、声が聞こえるのも。
「こっちに来ないか?」と。
そう、きっとこの暑さで、僕の感覚がおかしくなっているに決まっている。
白い影が手招きして見えるのも、きっと錯覚なんだ。
家に帰って、思う存分スポーツドリンクでも飲んで、シャワー浴びて……一眠りしたらきっと見えなくなってるさ。
だから――と僕は車のアクセルに乗せた足に、力を込めた――早く帰ろう。
「馬鹿! 何処見てんの!」途端に左耳を直撃した怒鳴り声に、僕ははっと、我に返った。
次いでガクンと、車のスピードが落ちる。助手席で眠っていた筈の彼女が、咄嗟にサイドブレーキを引いたのだ。更に無理矢理脚を伸ばして、ブレーキを踏み付ける。僕は慌てて、アクセルから足を退けた。
熱帯夜の夕涼みがてら、山道のドライブ。後続車が居なくて幸いだった。
「あ……?」状況に付いて行けず茫然とする僕に、彼女は更に怒鳴った。
「目の焦点合ってなかったわよ? そんな状態でアクセル踏むなんて自殺行為じゃない! と言うか、私も乗ってるんだから心中? どっちにしても冗談じゃないわよ!」
状況を理解するのと比例して、僕の心臓がどくどくと大きな鼓動を刻み始める。
目の前には崖に張り出した左曲がりの急カーブ。
彼女の怒鳴り声以外、もう在らぬ声は聞こえない。
崖の外――視界の右隅をちらちらしていた白い影はもう見えない。
それが何だったのか……やはり暑さの所為だったのかも知れない。
何にしても、当分、彼女には頭が上がりそうにない。
―了―
今日は短めに(^^;)
とは言え必死ですから☆
手招きしてた白い影は、お前か?
自殺願望は止めとけ(汗)
きっと夜霧自身も解ってない(爆)