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肝試しに廃病院に行く?
準備ねぇ……。先ず、僕なら携帯は持って行かないよ。
だって、暗闇の中、突然鳴り出したりしたら、それだけで飛び上がってしまうよ。
それにもし――苦笑いしながらも――外界との繋がりにほ……っと気を緩めた一瞬、通話口の向こうから知らない女の呻き声でも聞こえてきたらどうする……?
それとも、意味の解らないメールが来たら?
霊は意外にも電波と相性がいいと言うじゃないか。流石に自らを写した画像や動画を添付なんて事迄はないとは思うけど……。いや、解らないな、それも。
え? 脅かすなって?
やだなぁ、僕は心配してあげてるだけだよ。
勿論、持って行く、行かないは君の選択次第だ。
じゃ、気を付けておいでよ。
* * *
数日後、肝試しに訪れた数人の男女が、新しく崩れたと思しき床の穴の向こう――地下階に横たわる一人の男を発見して、大騒ぎとなった。
辛うじて息のあった男は、落下して助けを呼ぼうとしたものの、携帯は置いて来てしまい、また、人の気配を感じて声を上げても、怪異と間違われて逃げられる始末だったと、収容された病院で語った。
「畜生……。あいつがあんな事言って脅かさなけりゃあ……」何度も助けを求めて声を張り上げ続けた彼はしゃがれた声で唸った。
帰ったら思い切り文句を言ってやろう――その怒りの矛先を、その顔を脳裏で睨み付けようとして、彼は茫然とした。
「あいつ……? あいつって……誰だ?」
気を付けておいで――行っておいでとは言わなかったなと、その時になってふと、気付いた。
―了―
ま、ありがち?