〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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初めての街で、当て推量で道を選んではいけない――僕はそれを嫌と言う程味わっていた。
昨日越して来たばかりで右も左も判らない街に、探検気分で出たのはいいが、遠くに見える駅舎のタワーを目指していた筈が、三叉路やT字路に阻まれ、なかなか行き着けない。業を煮やして「こっちだ!」とばかりに駅方面に向かっていると思われる細い裏道に入ったのがいけなかった。
ブロック塀に両側を挟まれていた筈の道は、いつの間にか石垣に囲まれ、横道も無い儘に不安を抱えて更に歩くと、両脇は竹薮……アスファルトさえ、いつしか石畳に変わっている。流石に僕は、脚を止めてしまった。
辺りをきょろきょろと見回すも、藪に囲まれて目印としていたタワーさえ、見えない。
街の中心部を目指していた筈が、こんな道に迷い込むなんて……。
兎に角、この先へ進んでも駅には着かなさそうだ。それどころかもっと判らなくなる――そう考えた僕は踵を返した。脇道も無かった以上、この道の最初迄戻るしかない。
ところが、振り返ると同時に、僕はその場に硬直した様に立ち尽くしてしまった。
道が、無い。
そこは両脇と同じく竹薮と化していた。確かに、百八十度反転した筈なのに。
慌てて辺りを見回しても、延びるのは何処へ繋がるとも知れない道一本。
どうなってるんだよ――僕はパニックに襲われた。帰り道が無くなるなんて、あり得ないだろう!
暫し茫然と立ち尽くした後に、どうにか来た方向に戻る事が出来ないかと、僕は竹薮に分け入ってみた。が、石畳は痕跡さえ無く、脚に絡み付く下草はそこが決して道などではない事を物語っていた。
更に分け入る程に元の位置にさえ戻れなくなる事態を恐れ、僕は早々に引き返した。道さえ無い、こんな所では方向も掴めないし、真っ直ぐ歩いて行ける自信も無い。これならば未だ、あの何処へ続くとも知れない道の方がマシというものだ。
仕方がない――僕は残された道に、足を踏み入れた。
それからどれだけ経ったのだろう?
僕は未だ、件の道の上に居る。
どうした事か疲れもしないし、腹も空かない。これは夢なのだろうか?
だとしたら今直ぐ覚めてくれ!
足の下は石畳から只の土に変わり、竹薮はいつしか鬱蒼とした森になっている。
そして遠くから聞こえてくるのは……日本には動物園にしか居ない、絶滅した筈のニホンオオカミの遠吠え。
僕が居るのは一体何処で、そしていつなんだ?
解らない儘、僕は道を歩く。オオカミの声と、見知らぬ道に怯えながら。
―了―
暑い~☆
昨日越して来たばかりで右も左も判らない街に、探検気分で出たのはいいが、遠くに見える駅舎のタワーを目指していた筈が、三叉路やT字路に阻まれ、なかなか行き着けない。業を煮やして「こっちだ!」とばかりに駅方面に向かっていると思われる細い裏道に入ったのがいけなかった。
ブロック塀に両側を挟まれていた筈の道は、いつの間にか石垣に囲まれ、横道も無い儘に不安を抱えて更に歩くと、両脇は竹薮……アスファルトさえ、いつしか石畳に変わっている。流石に僕は、脚を止めてしまった。
辺りをきょろきょろと見回すも、藪に囲まれて目印としていたタワーさえ、見えない。
街の中心部を目指していた筈が、こんな道に迷い込むなんて……。
兎に角、この先へ進んでも駅には着かなさそうだ。それどころかもっと判らなくなる――そう考えた僕は踵を返した。脇道も無かった以上、この道の最初迄戻るしかない。
ところが、振り返ると同時に、僕はその場に硬直した様に立ち尽くしてしまった。
道が、無い。
そこは両脇と同じく竹薮と化していた。確かに、百八十度反転した筈なのに。
慌てて辺りを見回しても、延びるのは何処へ繋がるとも知れない道一本。
どうなってるんだよ――僕はパニックに襲われた。帰り道が無くなるなんて、あり得ないだろう!
暫し茫然と立ち尽くした後に、どうにか来た方向に戻る事が出来ないかと、僕は竹薮に分け入ってみた。が、石畳は痕跡さえ無く、脚に絡み付く下草はそこが決して道などではない事を物語っていた。
更に分け入る程に元の位置にさえ戻れなくなる事態を恐れ、僕は早々に引き返した。道さえ無い、こんな所では方向も掴めないし、真っ直ぐ歩いて行ける自信も無い。これならば未だ、あの何処へ続くとも知れない道の方がマシというものだ。
仕方がない――僕は残された道に、足を踏み入れた。
それからどれだけ経ったのだろう?
僕は未だ、件の道の上に居る。
どうした事か疲れもしないし、腹も空かない。これは夢なのだろうか?
だとしたら今直ぐ覚めてくれ!
足の下は石畳から只の土に変わり、竹薮はいつしか鬱蒼とした森になっている。
そして遠くから聞こえてくるのは……日本には動物園にしか居ない、絶滅した筈のニホンオオカミの遠吠え。
僕が居るのは一体何処で、そしていつなんだ?
解らない儘、僕は道を歩く。オオカミの声と、見知らぬ道に怯えながら。
―了―
暑い~☆
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Re:こんばんは
奇妙な話を狙ってみたり(^^;)
何処に迷い込んじゃったんでしょうねぇ(笑)
何処に迷い込んじゃったんでしょうねぇ(笑)
Re:こんにちは
ショートショートの常套手段、梯子外し系(笑)
読んだ人が色々想像してくれれば狙い通り( ̄ー ̄)にやり☆
読んだ人が色々想像してくれれば狙い通り( ̄ー ̄)にやり☆
Re:こんにちは♪
何処、そしていつ? という話(^^;)
ある意味異次元通っちゃったのかもね~。
ある意味異次元通っちゃったのかもね~。
Re:こんにちはっ
田舎の森って深いし暗いし……特に鎮守の杜とか、何か雰囲気がね~(^^;)
整備された道なら兎も角、その儘だとちょっとねぇ。
整備された道なら兎も角、その儘だとちょっとねぇ。
Re:こんばんは!
何処行っちゃうんでしょうねぇ……ふふふ……(←誰?)
夢と言えば、私はよく引っ越し前の大阪の夢を見ます。行き付けだった本屋とか。でも、出る時は今の家だったり、絶対どこかおかしいんですよね、夢って(^^;)
夢と言えば、私はよく引っ越し前の大阪の夢を見ます。行き付けだった本屋とか。でも、出る時は今の家だったり、絶対どこかおかしいんですよね、夢って(^^;)
Re:無題
くねくね曲がった一本道かも?
曲がり角間違えちゃいましたかね?(笑)
曲がり角間違えちゃいましたかね?(笑)
無題
こわいーー。
方向音痴の私としては、よく同じ心境に陥りました。夜道を運転していて道に迷うと、本当はもう自分は死んでしまったのではないか?とさえ思えることも・・・。
最近は地図をくるんくるん回しながら(田舎者丸出し)歩けば迷わないってことを習得したので、無敵ですw
地図があれば・・・だけど。
方向音痴の私としては、よく同じ心境に陥りました。夜道を運転していて道に迷うと、本当はもう自分は死んでしまったのではないか?とさえ思えることも・・・。
最近は地図をくるんくるん回しながら(田舎者丸出し)歩けば迷わないってことを習得したので、無敵ですw
地図があれば・・・だけど。
Re:無題
夜道はまた、迷い易いですよね~。昼間なら目に付く筈の目印が見え難かったり……。
地図……地図を回さなかったら、自分が回ります(笑)
地図……地図を回さなかったら、自分が回ります(笑)