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が、一様に首を横に振る。聞こえない、と。
「あれ? 聞き間違いかなぁ」自信なさ気に頼子は頭を掻く。「サイレンの音がしたと思ったんだけど……。でも、ずっと遠くで鳴ってるみたいな小さな音だったし、空耳なのかな」
「何だよ、空耳かよ」和喜が笑う。「近くだったら見に行こうと思ったのに」
「野次馬」頼子は呆れ顔で、好奇心旺盛な同級生に向かって舌を出した。
頼子が帰宅すると、とっぷり日が暮れたと言うのに家は暗く、伯父が倒れて病院に運ばれたとの連絡を受けて急遽出掛ける事になったと、母の書置きがあった。父も会社帰りにそちらに直行するらしく、二人とも帰りは遅くなるだろうとの事だった。
頼子は溜息をつく。食事は冷蔵庫の買い置きを何でも使っていいと書いてあるから、自分一人位何か適当なものでいいだろう。一人の家での夜は、心細くはあったけれど。
伯父は大丈夫なのだろうか?――頼子は母の携帯に電話してみた。マナーモードになっているかも知れないと思ったが、意外にも彼女は直ぐに出た。
軽度の脳梗塞との診断で、発見、搬送も早かったお陰で、もう大丈夫だと言う。
詳しい話を聞いている内、ふと、頼子は夕方聞いた救急車のサイレンを思い出していた。伯父が搬送されたのが、丁度同じ時刻だったのだ。
しかし、それが聞こえたという事はあり得ない。伯父の家へは電車で二時間の距離なのだ。
寒い時期だけに救急車の出動も多いのかも知れない――気を付けて帰って来るよう母に伝えると、頼子は電話を切った。
数日後の朝、今度はパトカーのサイレンが彼女の耳を掠めた。
が、一緒に居た和喜はそんなものは聞こえないと言う。
「また空耳か? 老化現象?」
「馬鹿」
軽口を応酬しながらのいつもの通学風景。その中の何処にも、パトカーの姿は無い。やはり空耳だろうか、と頼子は肩を竦めた。
しかし、帰宅してみると、何と元々素行のよくなかった従兄弟が傷害罪で身柄を確保されたと言う。いつも以上にお喋りになっている母から聞いた話では、それは今朝の事だった。
頼子はまた引っ掛かるものを感じるが、今度もやはり、その際の音が直に聞こえる筈はない。従兄弟は東南アジアに出国していて、現地で捕まったと言うのだから。
それにしても、救急車やパトカーのサイレンの空耳を聞いた後に、その音に関連する様な出来事が親戚に起こった事が知らされるなん――頼子は落ち着かない思いを抱えていた。
「虫の知らせとか言うじゃん」話を聞いた和喜は言った。「何となく、普段は考えもしない人が気になったと思ったら、その人に何かあった、とか……。空耳なんて変わってるけど、そういう類のものかもな」
なるほど、と頼子は何となく、納得する。
「でも、救急車なら病気や怪我、パトカーなら事故や、その……捕まったとか想像は出来なくはないけど、誰がっていう肝心な所が判らないなんて、役に立たない虫の知らせね」頼子は苦笑した。
「確かにな。そこ迄判れば予言者にでもなれるかも知れないのに」和喜はあっけらかんと笑う。「中途半端も困ったもんだな」
本当に困ったものだ――頼子は釣られて笑いつつも、その頬が引き攣るのを感じる。
やはり、和喜には聞こえていないみたいだ、と。
先程から耳の中で反響する、この複数の救急車と消防車のサイレンは、一体、誰に起こる、どんな事態の予兆なのだろう……?
―了―
寒い寒い☆
確かにそれは煩いだろうね(^^;)
ところで
>通り越してらうるさい
ら?(笑)
予知能力、知って回避出来るならいいけれど、知るだけで回避の道がなければ……ない方がいいよね(--;)
パトカーだと悪いことしてなくても何だかそわそわするし(笑)
救急車の方は自分に関係あるとすごい緊張するだろうな
今のところお世話になったこと無いけど…
パトカー、運転中見掛けると思わずシートベルト確認してみたり(笑)
実は昔、夏の夕方6時半頃、急に気分が悪くなり吐き気がして、自分はなんでもないのに絶望感を感じるんです。それは30分近く続いて、でもピタリと収まったんです。
家に帰ったら日航ジャンボ墜落のニュースをやっていて、私が気分が悪かった時間は丁度、コントロールを失ったジャンボが迷走していた時間帯で、それはゾッとしました。乗客名簿に知り合いはなかったけど、人の心は繋がってるのだと確信しました。できればいつか小説に書いてみたいです。合掌。
知り合いでもない人に迄思いが繋がってしまう程、乗客の皆さんは……(涙)
改めてご冥福をお祈り致します。
人の心はやはり不思議です。