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「夜霧? 難しい言葉を覚えたんだね。でも、あれは夜霧じゃなくて、そうだな……きっとお化けだよ」
窓から外の夜景を眺めて、それを知っている事を自慢するかの様にはしゃぎ出した幼い甥っ子に、僕はそう言って笑い掛けた。
「おばけ?」四才としてははっきりしているけれど、それでも舌っ足らずな発音できき返し、僕を振り返る。「前に、夜にお外を見たら、もやもやっとしたのがあって、パパにあれ何? って訊いたら夜霧だよって教えてくれたの。夜に出る霧なんだって。でも、違うの?」
「その時のはそうだったかもね。でも、白いもやっとしたのが、いつも霧とは限らないんだよ……」僕は意味ありげに窓の外を見る。
釣られる様に甥っ子も視線を戻す。外には掴み所のない白いもやもやが風に揺れる綿菓子の様にゆらゆらしている。
「例えば……あれはいつ迄も起きて遊んでいる悪い子供を連れに来たお化けかも知れないよ? ほら、白い手がおいでおいでしている様に見えないかい?」
僕の言葉に、反射的にだろうけど甥っ子は身体を小さくして、窓から離れる。
「お化けは夜迄起きて遊んでる悪い子を連れて行ってどうするの?」
「さぁ? 食べてしまうのか、暗くて怖い所に閉じ込めるのか……。僕は四歳位の頃は夜更かししなかったから知らないなぁ。行って確かめて来るかい? この儘起きていれば連れて行ってくれるかも知れないよ」
嫌だ! と叫んで甥っ子は義姉さんの居るキッチンへと駆けて行った。寝る時には母親に添い寝して貰う辺り、未だ未だ幼い子供だ。僕は笑ってその小さな背を見送った。
「おいおい、脅かしてくれるなぁ」向かいのソファで兄が苦笑を浮かべて言った。「しかし、お化けだなんて、あんな話をを信じるなんて……最近矢鱈知恵が付いてこましゃくれてきたと思っていたが、我が子も未だ未だ素直だなぁ」
「出たよ、親バカ」僕は笑う。「大体、あんな話って言うけど、それをあの子位の頃の僕にしてくれたのは兄ちゃんじゃないか。今思うと、夜位は大人の時間を取りたかったって事なんだろうけど、あの当時は本気でお化けを怖がってたんだからね」
「おや、今は違うのかな?」
「当たり前じゃん!」と、僕は胸を張った。
でも、僕もそろそろ寝ようと思う。
窓の外は未だ、白い霧に包まれている。時々、風に吹き寄せられた霧が固まって、人の顔の様に見えたり、手の様に見えたり――おいでおいでしてる様に見えて……。
僕はパパとママが事故で居なくなった後、面倒を見てくれている、年の離れた兄ちゃんと義姉さんにおやすみを言うと、窓の外を見ないようにして部屋へと向かった。
明日の小学校の時間割はもう整えてある。後はベッドに潜り込んで寝るだけだ。
布団を被る間際、窓の外の白い夜霧が、何だか悔しそうな顔をした気がした。
丸で、獲物を逃したみたいな……。
―了―
自分も子供じゃ~ん、という話(笑)
甥っ子の方が歳、近いやん(笑)
設定……「僕」が中学生位にすると、リアルで普通にあるから詰まらないかと☆
段々、見えなくなってくのかな?