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冗談半分に旅館の床の間に掛かった掛け軸の裏を覗いて見た事を、藍子は後悔した。
変なものが居る部屋だと、こういう所に御札が貼ってあったりするのよね――ついさっき友人に言った軽口が、脳裏に蘇る。
掛け軸を捲った先の壁には、毛筆で書かれた妖しげな御札が、部屋に睨みを利かせる様にこちらに相対していた。
「部屋、替われないかな……?」慌てて、やはり固まっている友人を振り返り、提案する。彼女とは同室。詰まりは運命共同体。「いや、冗談だけどさ、やっぱり気分よくないじゃない」
「そ、そうよね」友人――真由香は頷いた。「こんなの貼ってあるっていう事は、宿の誰かはこの部屋の事、知ってるって事だもの。訳を話せば他の部屋に変えてくれるかも……」
二人はいそいそと、旅館のフロントに脚を運んだ。
しかし残念な事に返ってきた返事は「満室です」――然もあの部屋で何か変事があった事など無いし、御札の事も誰も知らないと言う。
「じゃあ、誰が貼ったって言うんですか? 何も無いなら何故あんな物が隠す様に貼ってあるんですか?」食い下がる藍子に、従業員の一人が見に来てくれた。
そしてもう触りたくもないと言う二人に代わり、掛け軸を捲った彼は怪訝な表情を浮かべた。掛け軸の裏に入り込む様にして壁を探り、おかしな物が無いか、探している。やがて彼は言った。
「何もございませんが……」
慌てて覗き込んだ藍子達だったが、確かにそこには御札はおろか、何の痕跡も無かった。
「どういう事……?」顔を見合わせて互いに問う二人の女性に、従業員は見間違いでは、と愛想笑いを浮かべる。もしかしたら、などと思っているから何かを見間違えたのでしょう、と。
墨痕も鮮やかなあれが見間違いだったとは到底思えない二人はその説明に不服だったが、現にそこに無い事にはどうしようもない。見間違いだったのだ、と自分達に言い聞かせ、従業員にはお騒がせしました、と引き取って貰った。
二人の部屋を出、ポケットからくしゃくしゃになった紙を摘み出しながら、従業員はぼやいた。
「先代が貼った御札、未だ残ってたんだな。客が怖がるだけだってのに。幽霊が出る、なんて馬鹿馬鹿しい」
この老舗旅館に何枚か貼られていた御札。それは先代が貼ったもので、今の経営者からは見付け次第撤去するよう、言い含められていた。勿論、客には不信感を与えないように。だから彼は掛け軸の裏に隠れる様にしてこれを剥ぎ取り、痕跡も可能な限り消してきたのだ。
「ま、流石にこれで最後だろう」燃えるゴミと書かれたゴミ箱に御札を放り込みながら、彼はごちた。
結局、あれが観間違いだったとは納得が行かず、やや睡眠不足にはなったものの、藍子達は無事に旅を終えた。やはり気の所為だったのだ、と帰りの荷物を整え、笑顔でチェックアウトを済ませて宿を出た。
その時玄関先で擦れ違った和服姿の男に、彼女達の見送りに出ていた従業員の誰も挨拶をしなかった事が少し気にはなったが。丸で、誰も気付いていないかの様で。
件の旅館が不審火により全焼した事を二人が知ったのは、二日後だった。
しかし、全ての御札が剥がされた事で、先代が遠ざけようとしていたものが来てしまった事など、彼女達は知る由もなかった。
―了―
御札は何処ででも燃やしていいもんじゃないよー? 多分。
掛け軸の裏の御札とかねー。知らない方がいい事もある……!?
掛け軸が無かった場合は額縁の裏とか……(←脅すな)
お札はやっぱり、ちゃんと神社にもっていかないと。
やっぱり気になります? 安宿の御札(^^;)
でも、ちょっと気になるかも(笑)
御札……う~ん、気は心?
旅行って、家に帰り着いた時が一番の寛ぎポイントな気がします(笑)
取り敢えずそこには何も無くて良かったね~。
あったら気になって眠れないよ~(>_<)
普段そういうの信じてない人でも、なかなか手が出ないかも(笑)
はははー…怖。
老舗って初代からの教えとか家訓とか言いつけを守ってるからこそってところありますよね。
先代までが守ってきたことを疎かにすると、やっぱり何か差し障りがあるのか……。京都の老舗がおしなべて保守的なのは、そういうことなんでしょうか。
個人的にお願いがありまして。
某所に読書感想文のみの衛星ブログを開設しました。今までのもの全部コピーして。本家のかたにだけお教えしようとおもいます。まだ途中ですが、巽さんのご自宅のPCで閲覧できるかどうか、お手数ですが確認していただけませんか?
ブログURL
http://himuralice.blog105.fc2.com/
パスワードは本家と同じものです。
よろしくお願いします。
サイト、閲覧出来ましたよー(^^)
因みに携帯からもOKでした♪
毛筆行書、然も達筆と言われるものって……何書いてあるんだか解らないものб(^^;)
取り敢えず、見ない方がいいかも……?