〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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毎日の習慣というものは恐ろしいものだ。
もう、その必要は無いと頭では解っているのに、その日も私は朝早く、目を覚ました。物憂げにベッドの傍らを見下ろすが、当然そこにはもう、散歩をせがむ愛犬の姿は無い。耳の長い、茶色と白の中型犬だった。甘えん坊で、でも私に嫌われないようにお行儀よくベッドの傍らに控えて、期待に満ちた目で私を見上げていたあの子。
もう触れ合えないなんて信じられない、私のメリー。
私はのそのそと、ベッドの上で寝返りを打った。
一週間前の、散歩中の事故だった。早朝で、人通りも少ないと高を括っていたのだろうか、スピードを出し過ぎていた車がカーブを曲がり切れず、私の数歩先を歩いていたメリーに……。
ああ、こんな朝をこれから幾度、繰り返すのだろう? あの瞬間を回想しながら、悲嘆に暮れる朝が。
と――。
パタパタと軽い――けれどどこかぎこちない――足音が聞こえ、やがて私の部屋のドアをカリカリと引っ掻く音。これは、真逆……。
「入りたいの? 仕方ないわね」くぐもった、母の声。
そしてドアが開き――耳の長い、茶色と白の中型犬が、ベッドの傍らに妙に畏まって座り込んだ。キラキラした黒い瞳で私を見上げ、哀しげに鼻で鳴いた。
「メリー……お姉ちゃんはもう居ないのよ。散歩中に突っ込んで来た車からお前を庇おうと飛び出して……。お前も二週間の怪我で入院して……それにしても、帰った途端に此処に来るなんてねぇ。可愛がられていたものねぇ」そう言って、母は泣いた。
私はそっと手を伸ばして、最早触れられる筈もないメリーの鼻に触れようとした。メリーも、鼻の頭を擦り付けてくる。
死人と犬、触れられない筈のこの手に、けれど私はメリーの暖かさを確かに感じた。
〈メリー……。無事でよかった……〉
私はそう呟くと、何か暖かいものに包まれた気がして……やがて意識が解けた。
最期に聞いたメリーの声は寂しげで、でも、さようなら、また会おうね――そう言っている様に、聞こえた。
―了―
はい、本日も短めで!
もう、その必要は無いと頭では解っているのに、その日も私は朝早く、目を覚ました。物憂げにベッドの傍らを見下ろすが、当然そこにはもう、散歩をせがむ愛犬の姿は無い。耳の長い、茶色と白の中型犬だった。甘えん坊で、でも私に嫌われないようにお行儀よくベッドの傍らに控えて、期待に満ちた目で私を見上げていたあの子。
もう触れ合えないなんて信じられない、私のメリー。
私はのそのそと、ベッドの上で寝返りを打った。
一週間前の、散歩中の事故だった。早朝で、人通りも少ないと高を括っていたのだろうか、スピードを出し過ぎていた車がカーブを曲がり切れず、私の数歩先を歩いていたメリーに……。
ああ、こんな朝をこれから幾度、繰り返すのだろう? あの瞬間を回想しながら、悲嘆に暮れる朝が。
と――。
パタパタと軽い――けれどどこかぎこちない――足音が聞こえ、やがて私の部屋のドアをカリカリと引っ掻く音。これは、真逆……。
「入りたいの? 仕方ないわね」くぐもった、母の声。
そしてドアが開き――耳の長い、茶色と白の中型犬が、ベッドの傍らに妙に畏まって座り込んだ。キラキラした黒い瞳で私を見上げ、哀しげに鼻で鳴いた。
「メリー……お姉ちゃんはもう居ないのよ。散歩中に突っ込んで来た車からお前を庇おうと飛び出して……。お前も二週間の怪我で入院して……それにしても、帰った途端に此処に来るなんてねぇ。可愛がられていたものねぇ」そう言って、母は泣いた。
私はそっと手を伸ばして、最早触れられる筈もないメリーの鼻に触れようとした。メリーも、鼻の頭を擦り付けてくる。
死人と犬、触れられない筈のこの手に、けれど私はメリーの暖かさを確かに感じた。
〈メリー……。無事でよかった……〉
私はそう呟くと、何か暖かいものに包まれた気がして……やがて意識が解けた。
最期に聞いたメリーの声は寂しげで、でも、さようなら、また会おうね――そう言っている様に、聞こえた。
―了―
はい、本日も短めで!
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Re:無題
ややこしかったかにゃ?(^^;)
そそ、飼い主さんが死んでて、でも生前の習慣に縛られてたんです。
でも、もう触れ合う事も出来ないと思っていたメリーと触れ合えた事で……という話っす。
そそ、飼い主さんが死んでて、でも生前の習慣に縛られてたんです。
でも、もう触れ合う事も出来ないと思っていたメリーと触れ合えた事で……という話っす。
Re:くぅーん
事故はほんの一瞬で取り返しの付かない事になりますからねぇ。気を付けないと。
こんばんは♪
ややや!
死んだのはワンちゃんでなく人間だったのかぁ!
てっきりワンちゃんが死んでしまったのかと
思ってしまいました!
でも最愛のワンちゃんと最後に触れ合えて、
良かったね♪
そして昇天出来たんだネ!
死んだのはワンちゃんでなく人間だったのかぁ!
てっきりワンちゃんが死んでしまったのかと
思ってしまいました!
でも最愛のワンちゃんと最後に触れ合えて、
良かったね♪
そして昇天出来たんだネ!
Re:こんばんは♪
>てっきりワンちゃんが……
ふふふ、そう思うように書いてましたから(笑)
動物はやっぱり癒し系だと思う♪
ふふふ、そう思うように書いてましたから(笑)
動物はやっぱり癒し系だと思う♪
Re:そ、そんな…
うん、事故には本当、気を付けないとね……。
こんにちは
こんにちは。
バカに免許は要らん!
一生、牢屋にでも入れておけっつ~の。
私も轢かれそうになったことある。
バイトに行こうと、自転車で走っているとき、甲高いエンジン音と、スライドしながら滑ってくるブレーキ音に異常を感じて、自転車を横滑りさせながら、危機一髪で逃れたけど。
明らかに人命を尊重してない、レーサー気取りのバカ。
必死で制止した私の目の前を左折していった。
つまり、人を轢いても構わない気持ちで走っていたって事。
犬死するところだった。
今、思い出しても腹が立つ。
あっ、記事のこと忘れた。(笑)
動物だと霊が見えるかもしれないとおもうのは、気の所為だろうか?(笑)
バカに免許は要らん!
一生、牢屋にでも入れておけっつ~の。
私も轢かれそうになったことある。
バイトに行こうと、自転車で走っているとき、甲高いエンジン音と、スライドしながら滑ってくるブレーキ音に異常を感じて、自転車を横滑りさせながら、危機一髪で逃れたけど。
明らかに人命を尊重してない、レーサー気取りのバカ。
必死で制止した私の目の前を左折していった。
つまり、人を轢いても構わない気持ちで走っていたって事。
犬死するところだった。
今、思い出しても腹が立つ。
あっ、記事のこと忘れた。(笑)
動物だと霊が見えるかもしれないとおもうのは、気の所為だろうか?(笑)
Re:こんにちは
そ、それは危険極まりない∑( ̄□ ̄;)
そんなバカに免許持たしちゃいけませんね!(と言うかそんなんだと無免許の可能性もあるか?)
ともあれ無事でよかったです(汗)
確かに動物って人間より、あっちの世界が見えてそう☆
![](/emoji/V/185.gif)
そんなバカに免許持たしちゃいけませんね!(と言うかそんなんだと無免許の可能性もあるか?)
ともあれ無事でよかったです(汗)
確かに動物って人間より、あっちの世界が見えてそう☆
Re:無題
そうですね……(:;)
大好きなら大好きな程。
でも、彼女は先に行くだけだから……また会える筈。
大好きなら大好きな程。
でも、彼女は先に行くだけだから……また会える筈。