〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「いや、お待たせ致しました」
「生憎と、待っちゃいませんよ。遅刻の常習者なんて」
「生憎と、待っちゃいませんよ。遅刻の常習者なんて」
「これは手厳しい」遅れて入って来た男は頭を掻きつつ、苦笑いする。「出掛けに母に呼び止められましてね」
「おまけに嘘つき。貴方のお母様は昨年亡くなられたと聞きましたよ」ゆったりと紅茶のカップを回してその香りを楽しみながら、高齢の女性は澄ました顔で言う。「この間遅れた理由はお祖父様に何か頼まれたからだと言ってましたね。お祖父様の葬儀なら、十年以上前に出席しましたよ」
男はやはり苦笑を浮かべるのみ。
「申し訳ない。これでも結構忙しい身でして」
女性は肩を竦めて、カップをソーサーに戻した。どこ迄が本当だか、という表情だ。
「貴方、毎週こうして、この身寄りもない年寄りの話し相手になってくれるのは嬉しいけれど、そのルーズな所は直した方がいいんじゃないかしら?」
「ああ、またお説教が始まった」男はおどけた様に頭を抱えて見せる。
「ほら、またそうやって巫山戯て……。貴方が幼い頃から近所付き合いしてきたとは言え、親しき仲にも礼儀あり、ですよ?」
そんな他愛無い、幾度も繰り返されたやり取りから、またいつもの長い会話に入って行く二人。
女性が姿を消し、男がその部屋を辞したのは、もう明け方に近かった。
「やれやれ、今日も遅くなったな」自宅に帰り、男は凝った肩を解した。「向かいのおばさんは話が長くて……」
年寄りは話が前後したり、繰り返したりと長くなる傾向があるが……。
「生前より話がくどくなった様な気がしますよ、母さん」
そう言って振り向いた先には彼に似た面立ちをした、朧げな姿の初老の女性。その向こうに、キッチンが透けて見えている。
「またこんなに遅くなって。そのルーズさは死ぬ迄直らないんじゃないの?」腰に手を当てて、彼女は息子の行状を嘆いてみせる。
やれやれ、と男は身を竦める。霊と会話出来る能力なんて、持つもんじゃない、と。
母と言い、向かいのおばさんと言い――彼女達の口煩さは死んでも直らない。
―了―
夜霧のサボり癖も直らない(爆)
「おまけに嘘つき。貴方のお母様は昨年亡くなられたと聞きましたよ」ゆったりと紅茶のカップを回してその香りを楽しみながら、高齢の女性は澄ました顔で言う。「この間遅れた理由はお祖父様に何か頼まれたからだと言ってましたね。お祖父様の葬儀なら、十年以上前に出席しましたよ」
男はやはり苦笑を浮かべるのみ。
「申し訳ない。これでも結構忙しい身でして」
女性は肩を竦めて、カップをソーサーに戻した。どこ迄が本当だか、という表情だ。
「貴方、毎週こうして、この身寄りもない年寄りの話し相手になってくれるのは嬉しいけれど、そのルーズな所は直した方がいいんじゃないかしら?」
「ああ、またお説教が始まった」男はおどけた様に頭を抱えて見せる。
「ほら、またそうやって巫山戯て……。貴方が幼い頃から近所付き合いしてきたとは言え、親しき仲にも礼儀あり、ですよ?」
そんな他愛無い、幾度も繰り返されたやり取りから、またいつもの長い会話に入って行く二人。
女性が姿を消し、男がその部屋を辞したのは、もう明け方に近かった。
「やれやれ、今日も遅くなったな」自宅に帰り、男は凝った肩を解した。「向かいのおばさんは話が長くて……」
年寄りは話が前後したり、繰り返したりと長くなる傾向があるが……。
「生前より話がくどくなった様な気がしますよ、母さん」
そう言って振り向いた先には彼に似た面立ちをした、朧げな姿の初老の女性。その向こうに、キッチンが透けて見えている。
「またこんなに遅くなって。そのルーズさは死ぬ迄直らないんじゃないの?」腰に手を当てて、彼女は息子の行状を嘆いてみせる。
やれやれ、と男は身を竦める。霊と会話出来る能力なんて、持つもんじゃない、と。
母と言い、向かいのおばさんと言い――彼女達の口煩さは死んでも直らない。
―了―
夜霧のサボり癖も直らない(爆)
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Re:無題
死んだ相手と長話、適当に切り上げないといつ迄も続きそう(笑)
Re:こんばんは☆
長いっすね(笑)
それ、さっき言ったじゃーんって話が度々浮上してみたり(^^;)
それ、さっき言ったじゃーんって話が度々浮上してみたり(^^;)
Re:ご無沙汰しております(^_^;
はい、嘘ではなかったんですね(^^;)
勿論、お祖父さんの話も……(笑)
勿論、お祖父さんの話も……(笑)
Re:こんばんは♪
同じく( ̄▽ ̄;)
おはよ~
なんとなく、どっちかが生者じゃないような気がしていたら、やっぱり。(笑)
しかし、霊が紅茶を飲んでいるのも変じゃないかい?
それも、実物ではないのか?
しかし、死者と話なんか出来た日にゃあ、忙しくてしょうがないだろうなぁ。
あと、四六時中、監視されてそうで、気が休まらなさそうだ。(^_^;)
しかし、霊が紅茶を飲んでいるのも変じゃないかい?
それも、実物ではないのか?
しかし、死者と話なんか出来た日にゃあ、忙しくてしょうがないだろうなぁ。
あと、四六時中、監視されてそうで、気が休まらなさそうだ。(^_^;)
Re:おはよ~
紅茶はおば様のオプションで(笑)
見知らぬ幽霊さんからも話し掛けてこられたら、大変だろうなぁ(^^;)
見知らぬ幽霊さんからも話し掛けてこられたら、大変だろうなぁ(^^;)
Re:コワイんです!
怖い事?
な、何があったんでしょう?(興味津々)
な、何があったんでしょう?(興味津々)
Re:こんばんわ
あちこちの幽霊さん宅に寄って、話し相手(笑)
いつも遅刻しては小言を食らうのです( ̄▽ ̄;)
いつも遅刻しては小言を食らうのです( ̄▽ ̄;)