『窓』

　窓を開けてと理夜子（りやこ）は言った。
　締め切っていたら息が詰まるでしょう、と。
　でも、その窓は駄目なの。貴女が指差すその窓は。
　開けようよ、と理夜子がせがむ。
　けど、駄目なの。貴女が窓硝子を叩くその窓は。
　この部屋唯一の窓ではあるけれど、開ける事も近付く事も出来ないの。
　
　五年前、その天窓から誤って落ちたお転婆な貴女とぶつかり、脊髄を損傷。車椅子から離れられなくなった私には、動かせなくても脚があるもの。
　その時に運悪く頚椎を折って、この世から離れた貴女と違って。

　開けろ、と理夜子は怒鳴る。
　でも、駄目なの。貴女の誘いには乗れないわ。
　私は五年間で窓枠の緩んだ天窓の外に張り付いた理夜子を残し、車椅子の背を向ける――その下にはもう行かないわ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―了―

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　暑いとミステリーを書く集中力がありませんな（－－；）
　今日はやっと纏まった雨が降りました……でも、蒸し暑いの☆