〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「なぁ、大丈夫? 弘政君」
「大丈夫だって。一こ違う道から帰るだけじゃないか」
「でも、通学路じゃないし……」
「裕也、お前本当に気が小さいな。学校から帰るだけだぜ? それも学校は去年迄通ってた幼稚園の隣。慣れた道じゃないか」
「でも、去年はお母さん達が一緒だったし……。それにそっちの道は通った事無いじゃない。車の通行量も多いから気を付けるようにって言われてるし!」
「あーもう。じゃ、俺一人でこっちから帰るから。家の近所で落ち合おうぜ」
「え? ちょっと、弘政君てば! もう! 知らないよ!?」
「本当、気が小さいな。裕也の奴」
いつもと一本違う道。母親の手という枷も無く、自由に帰れると言うのに。
一本違えば、いつもと違う何かがあるかも知れないじゃないか。なぁに、方角は解ってる。帰れるさ。
そんな事を思いながら、弘政は角を一つ、曲がった。
途端、普段の道では感じた事がない程の排気ガスの匂いがした。
新しい、お揃いの家が並ぶ一角に残る、やけに軒の低い家。
ブロック塀、花の付いた生垣、綺麗にガーデニングされた庭に、プランターの並んだ門、あるいは何年間放置されたものか、草ぼうぼうの空き地。
表を見ただけでも、こんなに色々な家がある。いつもよりゆっくり歩きながら、弘政はそれらの家々を眺めて行った。
一つ角を曲がる度に、万華鏡を回す様に景色が変化する。
それが楽しくて、弘政は自分がかなり歩いている事に、なかなか気付かなかった。
そろそろ家の近くに出てもいい筈――そう思ったのは小さな足が痛み出した頃だった。
方角を間違えたろうか? いや、何回か曲がったものの、方角には特に気を付けていた筈……。
ならば行き過ぎた? いや、曲がる時にも両隣の通りには気を付けていた。見知った場所があれば解った筈だ。
だとすれば――迷った? 最悪の想像に、弘政の口元が歪む。泣き出しそうに、あるいはそれを抑えようとして、幾度も。
何、大丈夫だ。此処は住宅街じゃないか。誰かに訊けば解る。彼は滲みそうになる目を周囲に向けて、人の姿を探した。だが、ぽつりと立ち尽くす彼を残して、人の姿も車の影も、無い。そう言えば此処迄の道筋でも、それらを見掛けなかった事に今更ながらに気付く。
皆、何処に行ったのだろう? いや、きっと家の中には……。
弘政は、門柱に花の飾られた手近な家の、インターホンをおっかなびっくり、押した。
が、無反応。声も返らなければ、窓も開かない。
留守なのかと思い隣へ行くが、そこも同じ。
更に隣も……。
弘政は頼りなさと情けなさ、そして何より酷くなる足の痛みに、遂に泣き出した。こんな事なら裕也の言う通り普段の道から帰れば良かった。後悔先に立たず、という言葉が小さな彼の圧し掛かっていた。
疲れと、それらの精神的負荷に押し潰される様に、弘政はその場に蹲り――いつしか意識が遠退いていった。
「全く。曲がった途端に車に撥ねられるんだもん。吃驚しちゃったよ!」
「ごめん。裕也。お前が救急車呼んでくれたんだって?」
「慌てて近所の家に飛び込んだだけだけどね。でも、弘政君を撥ねて逃げた車も見付かったそうだし、何より気が付いて良かったよ。ずぅっと眠ってたんだよ? 二日間」
「二日も……」
「頭を打ったんだろうって先生が言ってたよ。後、足の骨折。でも頭の方は大した事ないって言うから……」
「そうか……」
「足、大丈夫?」
「うん。もうあんまり、痛くない」
足も、胸も……。そう思って、弘政は笑った。
―了―
交通安全!(←おい)
明日は土曜日(推定、夜霧の投稿日)だなぁ、と思いつつ、書いてみる。
はてさて?
一本違えば、いつもと違う何かがあるかも知れないじゃないか。なぁに、方角は解ってる。帰れるさ。
そんな事を思いながら、弘政は角を一つ、曲がった。
途端、普段の道では感じた事がない程の排気ガスの匂いがした。
新しい、お揃いの家が並ぶ一角に残る、やけに軒の低い家。
ブロック塀、花の付いた生垣、綺麗にガーデニングされた庭に、プランターの並んだ門、あるいは何年間放置されたものか、草ぼうぼうの空き地。
表を見ただけでも、こんなに色々な家がある。いつもよりゆっくり歩きながら、弘政はそれらの家々を眺めて行った。
一つ角を曲がる度に、万華鏡を回す様に景色が変化する。
それが楽しくて、弘政は自分がかなり歩いている事に、なかなか気付かなかった。
そろそろ家の近くに出てもいい筈――そう思ったのは小さな足が痛み出した頃だった。
方角を間違えたろうか? いや、何回か曲がったものの、方角には特に気を付けていた筈……。
ならば行き過ぎた? いや、曲がる時にも両隣の通りには気を付けていた。見知った場所があれば解った筈だ。
だとすれば――迷った? 最悪の想像に、弘政の口元が歪む。泣き出しそうに、あるいはそれを抑えようとして、幾度も。
何、大丈夫だ。此処は住宅街じゃないか。誰かに訊けば解る。彼は滲みそうになる目を周囲に向けて、人の姿を探した。だが、ぽつりと立ち尽くす彼を残して、人の姿も車の影も、無い。そう言えば此処迄の道筋でも、それらを見掛けなかった事に今更ながらに気付く。
皆、何処に行ったのだろう? いや、きっと家の中には……。
弘政は、門柱に花の飾られた手近な家の、インターホンをおっかなびっくり、押した。
が、無反応。声も返らなければ、窓も開かない。
留守なのかと思い隣へ行くが、そこも同じ。
更に隣も……。
弘政は頼りなさと情けなさ、そして何より酷くなる足の痛みに、遂に泣き出した。こんな事なら裕也の言う通り普段の道から帰れば良かった。後悔先に立たず、という言葉が小さな彼の圧し掛かっていた。
疲れと、それらの精神的負荷に押し潰される様に、弘政はその場に蹲り――いつしか意識が遠退いていった。
「全く。曲がった途端に車に撥ねられるんだもん。吃驚しちゃったよ!」
「ごめん。裕也。お前が救急車呼んでくれたんだって?」
「慌てて近所の家に飛び込んだだけだけどね。でも、弘政君を撥ねて逃げた車も見付かったそうだし、何より気が付いて良かったよ。ずぅっと眠ってたんだよ? 二日間」
「二日も……」
「頭を打ったんだろうって先生が言ってたよ。後、足の骨折。でも頭の方は大した事ないって言うから……」
「そうか……」
「足、大丈夫?」
「うん。もうあんまり、痛くない」
足も、胸も……。そう思って、弘政は笑った。
―了―
交通安全!(←おい)
明日は土曜日(推定、夜霧の投稿日)だなぁ、と思いつつ、書いてみる。
はてさて?
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Re:無題
亜空間も考えたんですが(←おい)
結局割と普通に意識飛んでる間の夢みたいになっちゃいましたね(^^;)
結局割と普通に意識飛んでる間の夢みたいになっちゃいましたね(^^;)
Re:こんばんは
ある意味現実の続きっぽい、夢。
あるいは弘政の思い描いてたのが出て来たのかも?
あるいは弘政の思い描いてたのが出て来たのかも?
はてさて
「今日、夜霧は交通安全したかったの♪」とかかな(笑)
そもそも、明日投稿は有るのか?それが1番きがかりだー!
事故に合って意識を無くして、頭の中で変な住宅街をさ迷っちゃった訳ですか。眼が覚めなかったら………ちよっと怖いね。
そもそも、明日投稿は有るのか?それが1番きがかりだー!
事故に合って意識を無くして、頭の中で変な住宅街をさ迷っちゃった訳ですか。眼が覚めなかったら………ちよっと怖いね。
Re:はてさて
どうでしょう?(^^)
果たしてまねっこするのか、普通に投稿するのか、そしてそもそも投稿はあるのか!? 乞うご期待!!(大袈裟)
まねっこの場合、どうも「 」で区切られた文章は割とその儘な事が多いんだけど、今回は冒頭「 」だらけですね~(笑)
はてさて?
目が醒めなかったら……ずーっと無人の住宅街を……?(・・∥)
果たしてまねっこするのか、普通に投稿するのか、そしてそもそも投稿はあるのか!? 乞うご期待!!(大袈裟)
まねっこの場合、どうも「 」で区切られた文章は割とその儘な事が多いんだけど、今回は冒頭「 」だらけですね~(笑)
はてさて?
目が醒めなかったら……ずーっと無人の住宅街を……?(・・∥)
こんにちは
去年まで幼稚園って事は新一年生?
言葉使いも話す事も、ちょっと子供っぽくないかも。
しかし角曲がった途端に車にひかれたとはねぇ。(笑)
意識がなくなるほどの事故なのに、軽い怪我で済んだんだ。
通学路って意外と融通がきかないんだよねぇ。
名古屋って碁盤目状に街がなっていて、小学生の時、一本違う道から帰ると近道できるの分かってるのに、町内毎に通学路が決められているから、遠回りしなければいけなかったりして、何時も違う道から帰ってた。(笑)
言葉使いも話す事も、ちょっと子供っぽくないかも。
しかし角曲がった途端に車にひかれたとはねぇ。(笑)
意識がなくなるほどの事故なのに、軽い怪我で済んだんだ。
通学路って意外と融通がきかないんだよねぇ。
名古屋って碁盤目状に街がなっていて、小学生の時、一本違う道から帰ると近道できるの分かってるのに、町内毎に通学路が決められているから、遠回りしなければいけなかったりして、何時も違う道から帰ってた。(笑)
Re:こんにちは
ちょっと生意気盛りなオコサマ。でも不注意(苦笑)
へぇ~、名古屋って碁盤の目状なんですか。大阪――少なくとも私が居た辺り――はどっちかと言うと斜めの道とか多くて、袋小路みたいな所もあったなぁ。
へぇ~、名古屋って碁盤の目状なんですか。大阪――少なくとも私が居た辺り――はどっちかと言うと斜めの道とか多くて、袋小路みたいな所もあったなぁ。
Re:無題
なまじ近いかな、っと思って入ると遠回りな道だったりして(^^;)
結局いつも同じ道(笑)
結局いつも同じ道(笑)
夢だったのかぁ!
交通事故で意識不明の時に見た夢だったのネ!
無人の街って、ちょっと気味悪いよね!
無人と言えば、私、昔ね、人類滅亡後の地球の夢ってのをよく見たなぁ・・・・そういう願望があるのかな??
無人の街って、ちょっと気味悪いよね!
無人と言えば、私、昔ね、人類滅亡後の地球の夢ってのをよく見たなぁ・・・・そういう願望があるのかな??
Re:夢だったのかぁ!
人類滅亡後の地球ですかぁ! ちょと見てみたい気も……(←おい)
人間、多かれ少なかれ、そんな願望がある気がする。
人間、多かれ少なかれ、そんな願望がある気がする。
Re:うん。。。
そうそう、右見て左見て、もっぺん右見て(笑)
子供の飛び出し注意です!
子供の飛び出し注意です!
Re:無題
まぁ、ご希望通りの体験は出来てますよね^^;
帰れなかったら悪夢だけど。
帰れなかったら悪夢だけど。