『言えない理由』

　数日遅れて、然も宅配便で届いた小包を、それでも弟は嬉しそうに受け取った。
「でも、何で毎年毎年、遅れて届くんだろう？」そう、首を傾げはしたけれど。
「遠距離なんだから仕方ないよ」私は笑ってそう言ってやる。
「そうだね」弟は素直に頷いた。
　奴は本当に素直だ。素直過ぎる位に……。

　私達の幼馴染みでもあり、中学の時に遠方に引っ越して行った彼女は、毎年弟にチョコを贈って来る。最近はメールでやり取りもしている様で、遠距離とは言え親密な間柄なのは確かだろう。
　けど……バレンタインチョコなんて何週間も前から売り場に並んでいる。宅配だって幾ら遠方とは言ったって数日も掛からない。大体、それを考えに入れて発送すればいいだけだ。
　詰まり、毎年毎年、遅いバレンタインになる筈もないのだ。
　彼女がそうしているのでなければ。

　ま、この分なら今年も、十五日にバイト先で買った、売れ残り半額処分になったチョコは、私が独り占めしていいだろう。
　彼女が贈って来るのが同じ様に売れ残りのお得処分品でも……知らなきゃ一緒だよね？　弟よ。

―了―

　はーい、数日遅れました～(笑)