〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「本当にこの家、葉子が言う様に誰も居ないの? それにしては埃とか少ない気がするんだけど……誰か手入れに出入りしてるんじゃないの?」
「何、びくついてるのよ。入る時に見たでしょ? 門の鉄条網。錆び付いてて、長年動かされた様子も無し。他は高い塀で囲まれてて、入る所も無し。管理の人間なら態々そこを乗り越えたりなんて事もしないでしょうし」
「だったら尚更、もし誰か居るとすれば……不法侵入者って事に……」
「だから、びびるんじゃないわよ。不法侵入ならお互い様じゃない。こっちだって家出中で、寝床を探して此処に来たんだから」
「それはそうだけど……。こんな所に隠れ住んでる人なんて居たら、やっぱり、その……表に出られない人なんじゃないの?」
「そもそも居るとも限らないのに……。居たらその時の事よ。さ、休める部屋を探しましょ。ベッドかソファでも残ってるといいんだけど」
「何、びくついてるのよ。入る時に見たでしょ? 門の鉄条網。錆び付いてて、長年動かされた様子も無し。他は高い塀で囲まれてて、入る所も無し。管理の人間なら態々そこを乗り越えたりなんて事もしないでしょうし」
「だったら尚更、もし誰か居るとすれば……不法侵入者って事に……」
「だから、びびるんじゃないわよ。不法侵入ならお互い様じゃない。こっちだって家出中で、寝床を探して此処に来たんだから」
「それはそうだけど……。こんな所に隠れ住んでる人なんて居たら、やっぱり、その……表に出られない人なんじゃないの?」
「そもそも居るとも限らないのに……。居たらその時の事よ。さ、休める部屋を探しましょ。ベッドかソファでも残ってるといいんだけど」
「――次のニュースです。○○県△△市の国道沿いの不動産会社所有の家で建物を全焼する火事がありました。出火元の家の付近には民家は無く、類焼はありませんでした。尚、この火事で怪我人は出ていない模様です。家には普段誰も出入りしていないとの事で、警察では何者かが侵入し、火を放った不法侵入ならびに放火の容疑で付近の聞き込み調査を開始している模様です」
「葉子……あたし達、やっぱり自首した方がいいんじゃあ……」
「駄目よ! そんな事したら私達、お終いじゃない!」
「だって……!」
「そんな泣きそうな顔しないで。不可抗力よ。全く、あんな幽霊屋敷だと知ってたら、幾ら家出中だからって行かなかったわ。結局家出も中止になっちゃうし――泣きたいのはこっちよ」
「でも、だからって火を付けるなんて……!」
「そうしなきゃ逃げられなかったじゃないの! 幸い火を見ると遠巻きにしてるからって、逃げながら火を付けて……。やっとの思いで逃げ出したんじゃない」
「……そう、そうだったわね。でもね」
「でも?」
「住処を失くしたあの家の霊達が、あたし達の背後に居る、だから早く全てを話してお払いを受けよう、とは……言えませんでした。いえ、正確に言えば間に合わなかったんです。目の前で彼女が丸で蝋燭の様に燃え上がってしまったので! あたし……あたしもああなるんでしょうか!? 助けて欲しくて全てお話しました。どうか……どう……か……?」
* * *
「そう話しながら炎を噴き出した彼女を前に、相談を受けたお坊さんも手の出し様が無かったという話です。これで私の話は終わりです。百本目の蝋燭、消しますね」
ふうっ――蝋燭の炎は一筋の煙を残し、真っ暗な闇に溶けた。
―了―
実は百物語中でした、という話☆
百物語では、最後の蝋燭を消すと怪異が訪れると申します。
この先は……ご想像にお任せ致します。
「葉子……あたし達、やっぱり自首した方がいいんじゃあ……」
「駄目よ! そんな事したら私達、お終いじゃない!」
「だって……!」
「そんな泣きそうな顔しないで。不可抗力よ。全く、あんな幽霊屋敷だと知ってたら、幾ら家出中だからって行かなかったわ。結局家出も中止になっちゃうし――泣きたいのはこっちよ」
「でも、だからって火を付けるなんて……!」
「そうしなきゃ逃げられなかったじゃないの! 幸い火を見ると遠巻きにしてるからって、逃げながら火を付けて……。やっとの思いで逃げ出したんじゃない」
「……そう、そうだったわね。でもね」
「でも?」
「住処を失くしたあの家の霊達が、あたし達の背後に居る、だから早く全てを話してお払いを受けよう、とは……言えませんでした。いえ、正確に言えば間に合わなかったんです。目の前で彼女が丸で蝋燭の様に燃え上がってしまったので! あたし……あたしもああなるんでしょうか!? 助けて欲しくて全てお話しました。どうか……どう……か……?」
* * *
「そう話しながら炎を噴き出した彼女を前に、相談を受けたお坊さんも手の出し様が無かったという話です。これで私の話は終わりです。百本目の蝋燭、消しますね」
ふうっ――蝋燭の炎は一筋の煙を残し、真っ暗な闇に溶けた。
―了―
実は百物語中でした、という話☆
百物語では、最後の蝋燭を消すと怪異が訪れると申します。
この先は……ご想像にお任せ致します。
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Re:無題
はてさて、どうなります事やら♪
百物語……本当に百話も集まるんだろうか(^^;)
百物語……本当に百話も集まるんだろうか(^^;)
Re:(;゜ω゜)σ
ラスボス登場?(爆)
今日の夜霧は……(笑)
今日の夜霧は……(笑)
Re:こんにちは
百物語……古来より人集まりて百の蝋燭を灯し、不思議なる話を一つ語るごとに蝋燭を吹き消していく。そして最後の蝋燭が消された後、怪、至ると言う……。
まぁ、持ち寄るのは実話だったり、聞いた話だったり(^^;)
まぁ、持ち寄るのは実話だったり、聞いた話だったり(^^;)
Re:えー
久々に季節感無視!(笑)
ヨーロッパでは冬場が怪談シーズンらしいけど☆
ヨーロッパでは冬場が怪談シーズンらしいけど☆
こんばんわっ
巽さんいつもナイスなタイミングのお話を書いてる!
先ほど、買い物に行く途中で
明らかに誰も住んでない、周りに山しかないような土地、
そこにあるボロボロの家に、警察が数人いて
何かを調べてる感じでした…何があったんだろ>_<
先ほど、買い物に行く途中で
明らかに誰も住んでない、周りに山しかないような土地、
そこにあるボロボロの家に、警察が数人いて
何かを調べてる感じでした…何があったんだろ>_<
Re:こんばんわっ
な、何があったんだろう?(゜o゜;)
時々現実と被るネタが……(^^;)
昔から冗談とか例え話すると本当にある事が度々……(汗)
時々現実と被るネタが……(^^;)
昔から冗談とか例え話すると本当にある事が度々……(汗)
Re:こんばんは
逃げられませんでしたね~(^^;)
寧ろ宿り家を失くした事で……。
寧ろ宿り家を失くした事で……。
Re:こんばんは♪
まぁ、百=沢山みたいなものですよね^^
私も流石に試す気にはならない~(^^;)
私も流石に試す気にはならない~(^^;)
Re:こんばんわ!
今日は冷え込みました。何でこの寒いのに百物語なんだか(笑)
最後の一人……それは知らない誰かが居たのか、居た筈の誰かの存在が消されたのか……体感温度が2℃下がりました(^^;)
最後の一人……それは知らない誰かが居たのか、居た筈の誰かの存在が消されたのか……体感温度が2℃下がりました(^^;)