〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 今日夜霧が勇輝と一緒に、破損した図書館所蔵の画集数冊を修理する心算だったというのは本当だろうか?
 結局、作業は延期、あるいは中止になった様だけど。
 そもそも、何故勇輝と……? 
 確かに図書館には画集に限らず、傷んだ本も見受けられるけれど。夜霧は美術担当の教師だし、勇輝も図書委員でもない。
 何故? と首を傾げていると、話を持ち込んできた京が呆れ顔で言った。
「訊けばいいだろう」と。
 流石、単刀直入、一直線な我が兄だ。もう少し、思考を楽しむとかしてもいいんじゃないかと思うけれど。
 その京は夜霧本人から予定変更の話を聞いたらしい。何でその時に訊かなかったんだと尋ねたら、興味がないからとの返答だった。
「どうせ勇輝の奴が本を傷めたかどうかして、反省を兼ねて命じられたんじゃないのか?」興味がないなりに、一応考えてはみたらしい。「夜霧は担任だからな。サボっていないか見届けるように頼まれたんだろう。図書館の管理責任者から」
 因みに図書館の管理責任者は元々古文の教師でもあった教頭先生だ。
 なるほど、筋は通っている様な気はする。
 が、僕は一つ、気に掛かっていた。
 何故、画集だけなのかと。 

きょう夜霧がユウキと破損するつもりだった?

*このエントリは、ブログペットの「夜霧」が書きました。


 何をだ(--;)
 破壊活動禁止~!

「自殺したんだよ」
 寝付かれず、幾度目かの寝返りを打った直後に耳をよぎった言葉に、私は思わず毛布を跳ね飛ばしてベッドの上に身を起こした。
 常夜灯だけの部屋の中には私の他に誰も居ない。マンションの一番奥にあるこの寝室に外からの声は届かないし、何よりあれは決して大きな声ではなく、寧ろ耳元でそっと囁いた様だった。
 空耳……錯覚だったのだろうか。それとも、半ば寝惚けた頭を取り止めもなく巡っていた複数の単語の中の一つが不意に顕在化した?
 それとも――私は壁に架けた黒い服を見遣った。飾り気のない、黒のワンピース。喪服だから、それでいい。
 時計を見れば午前一時。という事は、もう今日なのだ。友人の葬儀は。
 余りに突然の報せに、昨日あった通夜には参加出来なかった。せめて葬儀には……気が滅入るけれど。
 その為にもちゃんと寝よう、と私は再び横になり、目を閉じた。

 道を間違えたのかと思った。
 余りに、辺りの景色が変わっていたから。
 それに此処に来るのは十数年振りなのだ。多少道順を忘れていても、無理もない。
 だが、よくよく見ればそこかしこに、変わらない、見覚えのある光景。

 雑貨屋の壁に貼られた色の剥げたブリキの看板、昔のガス灯をモチーフにしたらしい古めかしい電灯、雑貨屋の前の小さな児童公園、大して遊具も無いそこにぽつんと置かれたオート三輪。今では滅多に見掛ける事もない代物だが、十数年前に来た時は未だ現役で、雑貨屋の荷物を運んでいた筈だった。
 どうしてこんな所に停められているのだろう、と近寄って見れば、かつては店の顔としてそれなりに綺麗に磨かれていた青い車体も所々塗装が剥げ、白い傷跡が覗いている。子供達が遊び道具にでもしたのだろうか、傷の中にはマルバツ遊びの跡もある。その様子から察するに、もう長い事、此処に留め置かれているのだろう。
 私は雑貨屋を振り返った。
 正面の硝子戸も、タバコ売りの店番の老婆が陣取っていた小さなカウンターも、今はきっちりと閉ざされ、外から板で打ち付けられている。もう随分前に、閉店と相成った様だ。
 そこから数軒行った先には新しく明るいコンビニエンスストア。時代の流れという奴だろうが……。
 私は少々物寂しくなって、オート三輪に手を掛けた。
「お前も、お払い箱になって此処に居るのか?」詮無い、問い。
 答えのある筈もないその言葉に、思いがけず声が返った。
「お払い箱って何?」
 見ればオート三輪の陰に、小さな女の子が、立っていた。

「要らなくなって捨てられたって事だよ」しゃがみ込んで目線を合わせ、私は答えた。
「じゃあ、もって何?」
「え?」私は一瞬意味が解らず目を瞬いた。
「おじちゃん、さっき『お前も』って言ったでしょ? 何で『も』なの?」
「それは……」リストラ、などという言葉をこんな、幼稚園に上がったかどうか位の子供に言って解るだろうか。解ったとしても、こんな幼い子に、そんな寂しい言葉は未だ覚えさせたくないし、私の身の上を語っても仕方がない。「ほら、あっちのお店も閉まっちゃってるだろう?」
 女の子は雑貨屋を振り返った。
「あのお店、あたしがこの公園に遊びに来るようになった頃にはもう閉まってたの」と、彼女は言った。「この足三本しかない車もあってね、お祖父ちゃんは昔はこんなのが普通に街中を走ってたんだよって言ってた。でも、足が三本しかない車って、壊れてるんじゃないの?」
「足三本か」小首を傾げる女の子に、私はふと、苦笑する。「足じゃなくてタイヤ。それにこれは壊れてるんじゃなくて、元からタイヤは三本なんだよ。ほら、今の車は前に二本、後ろに二本だけど、これは前の真ん中に一本、後ろに二本でバランスが取れてるだろう? 尤も、こいつはもう……走れないだろうけどね」
「でも、これは此処に置いておくんだって言ってたよ、お祖父ちゃん」と、女の子。「昔、こんなのがあったんだよって、忘れないようにだって」
「そうか……。こいつにはこいつの役割が未だあるのかも知れないな……」
 かつての日本の街の姿を伝えて行くという……。

「も、だよ。おじちゃん」
「え?」感慨に耽っていた私を、女の子の言葉が現実に呼び戻す。
「あのお店も、お店はやってないけど人は住んでるの。役目が変わっただけなんだって、お祖父ちゃんは言ってた。未だ未だ、要るものなんだって」
「……そうか……」私は二週間前にリストラ――子会社への出向――が決まってから初めて、ほんのりと笑う事が出来た、と思う。「そうか、役目が変わっただけか」
「うん!」女の子は元気よく頷いた。そして夕日に彩られ始めた空を見上げ、そろそろ帰るね、と踵を返した。
 気を付けてお帰り、と彼女を見送り、私は再度、オート三輪に話し掛けた。
「私も、未だ別の役目があるのかも知れないな……」
 そうであって欲しいという希望も込めて。

 何もかもが変わって行き、それに付いて行けない物寂しさから逃れようと訪れた街だったが……街だっていつ迄も同じ姿ではない。
 きっと、私も――。

                      ―了―
 


 今日は仕事で疲れてミステリー考える余力がありませーん( ̄▽ ̄;)
 オート三輪……未だ見掛けます?

fimg_1258289553.png え~、またもメンテが入る模様です(^^;)

 日時:2009年11月18日(水) AM 1:00~AM 7:00
 例によってこの間は管理、閲覧が出来なくなります。ご了承下さいませm(_ _)m
 
 やはり新しい機能を入れると、何処かしら不具合が出るものなのでしょうか。そして実際に入れてみないと、それは予測出来ないものなのかな?(・_・?

 視界は最悪だった。
 どれだけワイパーが頑張ろうとも、雨粒は瞬く間にフロントガラスに飛沫の花を散らし、夜の風景を歪める。
 対向車が無いのをいい事にライトをハイビームにするが、黒いアスファルトに溜まった水に反射して、却って白線をも隠してしまいそうだった。
 早く帰りたい、と直也は思った。傘は持っていたものの、会社の屋外駐車場では停めた車に乗り込む迄にすっかり雨に濡れてしまい、身体は冷えている。ドライブは嫌いではないが、こんな雨の夜は御免だ。早く帰って家でテレビでも見ていたい、と彼は最近は使っていない、しかし通い慣れた近道に車を乗り入れた。
 と、五十メートル程先の路面に影が差した――様に見えた。
 真逆、人? 直也はブレーキを軽く踏む。
 しかし、雨に流される視界の中、傘を差している様子もない。それに現れ方がおかしかった。道路際から歩いて現れたのでもなく、それは丸で路面から湧き上がり、伸び上がった様な黒っぽい何か。
 そしてそれは、直ぐに消えた。
 もうどれだけ目を凝らしても、人の姿は見付からなかった。ライトの反射で何が書かれているのか判らない看板がある位だ。
 きっとライトの反射もあって、夜の闇が更に濃く蟠って見えたのだろう。直也はそう判断し、再びアクセルに足を乗せた。

 そして影を見たと思った場所に差し掛かった、その時――がくり、と車のスピードが落ちた。
「!?」どれだけアクセルを踏み込んでも、一向にスピードが上がらない。丸で重い何かを引き摺ってでもいる様な……。真逆、と直也は慌ててブレーキを踏み、今通過した場所を振り返った。「真逆、本当に人が居たんじゃ……!」
 車の背後、赤いブレーキランプに照らされた路面に人の姿は無い。
 真逆、この下に……直也は恐る恐る、足元を見遣る。何かを轢いた様な衝撃はなかった。しかし、あの影と言い……。急なエンジントラブルなら未だいいが。
 こうしていても仕方がないと、直也は震える手で、ダッシュボードから小型の懐中電灯を取り出した。どうせ車の下を覗き込んだりしていれば濡れるのは必定と、傘は持たずに降りる。
 幸か不幸か対向車も後続車も無い、山を切り開いて作られた暗い田舎道。頭上では木々が風雨にざわめいている。
 どくどくと脈打つ胸を押さえ、直也は車の周囲を照らした。
 何も無い。
 自分の車を照らしても、一箇月前に買い換えた愛車には何処にも破損した箇所も無ければ、血の跡も無い。尤もこの雨では血痕など、一目見ただけでは判るまいが。
 いよいよ、と車の下に光を伸ばし、息を止めて覗き込む。
「何も……無い……」そこに只の黒い路面を認めて、直也はほっと息をついた。自分が轢いた誰かの遺体が、恨みがましい目付きをこちらに向けていたらどうしよう――真逆とは思いつつもそんな想像をしてしまっていた彼は、怯えていた自分が可笑しくなり、緊張から解かれた反動もあってか激しい雨の中、思わず笑い出していた。
 ふっ……と、その視界が歪んだ。
「え……?」呆けた声を上げた彼の目の前、車との間に、何かが佇んでいた。
 しかし車のライトは変わらず、やや滲んだ光を彼の足元に投げ掛けている。見慣れた車の前面も、見える――何れも丸で水面を通した様に、揺らいではいるが。
 彼の前に佇むもの……それが人の大きさ程の水の塊だと気付いた時には、彼はそれに取り込まれていた。
「!!」もがき、足掻くが水を掻くばかりで抜け出せない。それを殴ろうとして振り上げた懐中電灯は、しかしそれを摺り抜け、車のフロントにぶつかって割れた。
 辺りにも、彼の意識にも闇が訪れた。

                      * * *

「起きて」と、直也を揺り起こす、女性の声。
 直也は汗だくで、ベッドに身を起こした。未だ息が荒い。
「酷くうなされていたわ。悪い夢でも見たのね」
「あ、ああ……。そうか、夢……」徐々に、意識が現実に戻り、更に急上昇して行く。「夢だったんだ! 何だ、あんなものが居る筈がないと思ったんだ! 道理で……!」
 ところで――と、今度は急激に彼の意識は冷め始めた。
「君は……誰だ?」知らない女が何故、自分の部屋に居る? そんな意味も含めての問いに返ってきたのは、くぐもった声音……。
「看板を見れば判るわ――貴方が、やった事……」
 ごぼっ……声は次第にそんな音に飲み込まれ、同時に彼女の姿も崩れ始めた。氷像が急激に溶ける様に。
「うわああああっ!」直也は悲鳴を上げて飛び退り――それから朝迄、カーペットに残された水溜りを見据えてまんじりとも出来ずに固まっていた。

 朝、彼は夢で見た通勤路を走り、看板を確認した。
 そしてその儘、最寄の警察署に出頭した。
 看板で情報提供を呼び掛けられていた、一箇月前のある雨の夜の、女性轢き逃げの犯人として。

                      ―了―

 交通安全祈願~(-人-)
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