〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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京は、奮闘する筈だった――のだが、昼過ぎには寮のロビーでソファに腰掛けてぼーっとしているのを見付けて、僕は首を傾げた。
「あれ? 京、何してんの? 図書室で宿題未達成者用の勉強会やるって張り切ってなかったっけ?」僕は尋ねた。
「別に張り切ってる訳じゃない」不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、我が双子の兄は言った。「この時期に夏休みの宿題を終えていない者が居るなんて、寮の纏め役としての責任が……」
「そこ迄責任負う事じゃないと思うよ?」僕は溜め息をつきつつ向かいの椅子に座り、京の言葉を遮った。「そりゃ、宿題はちゃんとやるものだけど、未だ日にちもあるし……。やらなかった生徒が居たとしても、京が怒られる筋合いのものじゃないだろう?」
「それはそうだが……」眉間の皺が深くなる。「何か、指導力不足を問われている様で気に食わん」
兄貴よ、そんなの、先生が気にする事だよ。僕は流石に内心、呆れる。
寮の纏め役と言ったって大した権限がある訳じゃない。強制的に宿題をさせられる訳でもないし、要らぬ世話と突っ撥ねられたらそれ迄だ。
それでも今日は勉強会をすると言って数日前からこのロビーの掲示板に告知もしてあったのだけれど……。
「あれ? 京、何してんの? 図書室で宿題未達成者用の勉強会やるって張り切ってなかったっけ?」僕は尋ねた。
「別に張り切ってる訳じゃない」不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、我が双子の兄は言った。「この時期に夏休みの宿題を終えていない者が居るなんて、寮の纏め役としての責任が……」
「そこ迄責任負う事じゃないと思うよ?」僕は溜め息をつきつつ向かいの椅子に座り、京の言葉を遮った。「そりゃ、宿題はちゃんとやるものだけど、未だ日にちもあるし……。やらなかった生徒が居たとしても、京が怒られる筋合いのものじゃないだろう?」
「それはそうだが……」眉間の皺が深くなる。「何か、指導力不足を問われている様で気に食わん」
兄貴よ、そんなの、先生が気にする事だよ。僕は流石に内心、呆れる。
寮の纏め役と言ったって大した権限がある訳じゃない。強制的に宿題をさせられる訳でもないし、要らぬ世話と突っ撥ねられたらそれ迄だ。
それでも今日は勉強会をすると言って数日前からこのロビーの掲示板に告知もしてあったのだけれど……。
「誰も来なかったんだ」些か悄気た様子で、京はぽつりと、言った。
「え、一人も?」僕は目を丸くしつつも、京の受けたダメージがいかばかりかと少し、同情する。直接声を掛けた訳ではないにしても、誰一人来なかったというのは纏め役を自任する京としては、それこそ力不足を突き付けられた様なものだろう。
それで拗ねてこんな所で時間を持て余していたのか。
宿題をやっていないだろうと思われる生徒が居たとしても、流石に直接呼び出しって訳にもいかないよなぁ。お前やってないだろう、なんて冗談なら兎も角、京みたいに真面目腐って言われたら――本当にやってなくても――むっとするし。
因みに僕は夏休み前半に終えてある。そもそも、京と同室で逃れられる訳もない! まぁ、お陰で今こうして余裕がある訳だけど。
「先ずやってないだろうと思う生徒には一応、直接声も掛けたんだが……」
掛けたんかい!――僕は京を未だ甘く見ていた様だ。
「無視されたのかい?」
「いや、終わったと自信満々にノートを見せられた」
「は?」僕はぽかんと口を開けて呆ける。「ええと、本当に終わってたの?」
こっくりと、京は頷く。然も声を掛けた数人が皆、同じ反応だったと言う。何れも去年、京の勉強会に集まった面々の中でも宿題が殆ど進んでいなかった生徒で、だからこそ京も声を掛けたのだそうだけれど。
「まぁ、でも、いい事じゃないのかな、それは。他の皆だってもう済んだから、今日来なかったのかも知れないし」僕は笑って言う。
「……ならいいんだが……」そう言いつつも、眉間の皺は解けない。
どうあっても世話を焼きたいのだろうか――僕は浮かべた愛想笑いが引き攣るのを感じた。
けれど、一人も来ないだなんて、それ程迄に京が嫌われているとは――身内の贔屓目はあるかも知れないけど――思えないし、他に来なかった理由なんて……。
二人して首を捻っていると、玄関が開いて大きなバッグをを抱えた栗栖が入って来た。
「栗栖、お帰り。帰省はどうだった?」久し振りに見る顔に、僕は立ち上がって声を掛けた。
「ただいま。まぁ、ぼちぼち楽しんで来たわ」エアコンの噴出し口に陣取って汗を拭いながら、栗栖は笑う。「二人してどないしたんや?」
「別に」何故か喧嘩腰に、京。栗栖に対する基本姿勢ではあるけれど、今日は普段以上に、素っ気無くも棘がある。声を掛けたのに誰も来なかった、なんて事を聞かれたくないのだろう。栗栖は別に、そんな事からかいもしないだろうに。
「ぎりぎり迄向こうに居るかと思ったのに、早かったね」取り繕う様に、僕が話を継ぐ。
「それが宿題がちょびっと残っとってなぁ」栗栖は頭を掻く。「然もそのノートをこっちに置いた儘やったんや。慌てて切り上げて来たで。まぁ、家におってもゴロゴロするなって言われるだけやしな」
宿題が未だ、と聞いて京の目が光った様な気がする……。
「実は後でもええわと思うてたんやけど、勇輝からメール貰うてな。宿題全部終わったか、って。何でもこの寮には二十日過ぎても宿題終えてへんもんには滅茶苦茶な不運が訪れるっちゅう都市伝説があるとか無いとか――去年の今頃には終えてたから、俺は知らんかったんやけど」そう言う栗栖の目は笑っている。「勇輝の事やから、あっちこっちの知り合いにメールしまくっとるんやろうなぁ」
「栗栖、それって……」僕は京の顔色を窺いつつ、声を潜める。「その都市伝説の根っこ、多分……」
京やろ? と栗栖は視線だけで答える。
当の京は何やら呟きつつ、ふらりと立ち上がる。
「結果的に皆の宿題が進んだのはいい……。それはいい。が……誰が滅茶苦茶な不運だ、勇輝の奴!」言うなり、駆け出しそうになって慌てて歩調を抑えようとしてたたらを踏む。壁には京自身の字で「廊下は走るな!」と書かれた紙が張られていた。
『……』僕と栗栖は黙ってそれを見送った。
結局、勇輝のメールと去年の勉強会に参加させられた生徒達の口コミ効果もあって、皆早めに宿題を終えていた結果、今日は誰も集まらなかったという事らしいけど……。
これほど効果のある都市伝説の元になる京の勉強会、それはやはり、遊び呆けた後に来る、最凶の不運なのかも知れない。
―了―
取り敢えず奮闘してみました☆
「え、一人も?」僕は目を丸くしつつも、京の受けたダメージがいかばかりかと少し、同情する。直接声を掛けた訳ではないにしても、誰一人来なかったというのは纏め役を自任する京としては、それこそ力不足を突き付けられた様なものだろう。
それで拗ねてこんな所で時間を持て余していたのか。
宿題をやっていないだろうと思われる生徒が居たとしても、流石に直接呼び出しって訳にもいかないよなぁ。お前やってないだろう、なんて冗談なら兎も角、京みたいに真面目腐って言われたら――本当にやってなくても――むっとするし。
因みに僕は夏休み前半に終えてある。そもそも、京と同室で逃れられる訳もない! まぁ、お陰で今こうして余裕がある訳だけど。
「先ずやってないだろうと思う生徒には一応、直接声も掛けたんだが……」
掛けたんかい!――僕は京を未だ甘く見ていた様だ。
「無視されたのかい?」
「いや、終わったと自信満々にノートを見せられた」
「は?」僕はぽかんと口を開けて呆ける。「ええと、本当に終わってたの?」
こっくりと、京は頷く。然も声を掛けた数人が皆、同じ反応だったと言う。何れも去年、京の勉強会に集まった面々の中でも宿題が殆ど進んでいなかった生徒で、だからこそ京も声を掛けたのだそうだけれど。
「まぁ、でも、いい事じゃないのかな、それは。他の皆だってもう済んだから、今日来なかったのかも知れないし」僕は笑って言う。
「……ならいいんだが……」そう言いつつも、眉間の皺は解けない。
どうあっても世話を焼きたいのだろうか――僕は浮かべた愛想笑いが引き攣るのを感じた。
けれど、一人も来ないだなんて、それ程迄に京が嫌われているとは――身内の贔屓目はあるかも知れないけど――思えないし、他に来なかった理由なんて……。
二人して首を捻っていると、玄関が開いて大きなバッグをを抱えた栗栖が入って来た。
「栗栖、お帰り。帰省はどうだった?」久し振りに見る顔に、僕は立ち上がって声を掛けた。
「ただいま。まぁ、ぼちぼち楽しんで来たわ」エアコンの噴出し口に陣取って汗を拭いながら、栗栖は笑う。「二人してどないしたんや?」
「別に」何故か喧嘩腰に、京。栗栖に対する基本姿勢ではあるけれど、今日は普段以上に、素っ気無くも棘がある。声を掛けたのに誰も来なかった、なんて事を聞かれたくないのだろう。栗栖は別に、そんな事からかいもしないだろうに。
「ぎりぎり迄向こうに居るかと思ったのに、早かったね」取り繕う様に、僕が話を継ぐ。
「それが宿題がちょびっと残っとってなぁ」栗栖は頭を掻く。「然もそのノートをこっちに置いた儘やったんや。慌てて切り上げて来たで。まぁ、家におってもゴロゴロするなって言われるだけやしな」
宿題が未だ、と聞いて京の目が光った様な気がする……。
「実は後でもええわと思うてたんやけど、勇輝からメール貰うてな。宿題全部終わったか、って。何でもこの寮には二十日過ぎても宿題終えてへんもんには滅茶苦茶な不運が訪れるっちゅう都市伝説があるとか無いとか――去年の今頃には終えてたから、俺は知らんかったんやけど」そう言う栗栖の目は笑っている。「勇輝の事やから、あっちこっちの知り合いにメールしまくっとるんやろうなぁ」
「栗栖、それって……」僕は京の顔色を窺いつつ、声を潜める。「その都市伝説の根っこ、多分……」
京やろ? と栗栖は視線だけで答える。
当の京は何やら呟きつつ、ふらりと立ち上がる。
「結果的に皆の宿題が進んだのはいい……。それはいい。が……誰が滅茶苦茶な不運だ、勇輝の奴!」言うなり、駆け出しそうになって慌てて歩調を抑えようとしてたたらを踏む。壁には京自身の字で「廊下は走るな!」と書かれた紙が張られていた。
『……』僕と栗栖は黙ってそれを見送った。
結局、勇輝のメールと去年の勉強会に参加させられた生徒達の口コミ効果もあって、皆早めに宿題を終えていた結果、今日は誰も集まらなかったという事らしいけど……。
これほど効果のある都市伝説の元になる京の勉強会、それはやはり、遊び呆けた後に来る、最凶の不運なのかも知れない。
―了―
取り敢えず奮闘してみました☆
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Re:こんばんは
いい奴なんだけど、空回り(笑)
や、去年の勉強会の結果が今年に繋がってるんだから、これでいいのか?(^^;)
でもやっぱりいじられキャラ(笑)
や、去年の勉強会の結果が今年に繋がってるんだから、これでいいのか?(^^;)
でもやっぱりいじられキャラ(笑)
Re:おはよう!
宿題「は」! 他は何が残ってたのかな~?( ̄ー ̄)
恐るべき京の勉強会。そしてそれを吹聴する勇輝(笑)
クラスに一組、要りませんか?(爆)
恐るべき京の勉強会。そしてそれを吹聴する勇輝(笑)
クラスに一組、要りませんか?(爆)
Re:こんにちは
結果オーライなのに、何か納得してない京(笑)
先生より厄介かも知れない☆
先生より厄介かも知れない☆
こんにちは♪
都市伝説になってしまうほどの勉強会って、
どんだけ凄いんだろうねぇ~!
私も夏休みの終わりごろに大車輪でやる方だった
から・・・・京君と一緒だったとしたら・・・
メッチャクッチャしごかれたのかな?
ん~~それは、やはり辛いものがあるかもねぇ!
どんだけ凄いんだろうねぇ~!
私も夏休みの終わりごろに大車輪でやる方だった
から・・・・京君と一緒だったとしたら・・・
メッチャクッチャしごかれたのかな?
ん~~それは、やはり辛いものがあるかもねぇ!
Re:こんにちは♪
京と一緒だったら……大変だよ?( ̄ー ̄)
そりゃもう、出来る迄図書室に缶詰めだよ(笑)
そりゃもう、出来る迄図書室に缶詰めだよ(笑)
Re:きょうはきゃらめ
先生みたいな告知……それは京がやったからしなくていいよ、夜霧サン☆(^^;)
Re:夜霧www
またBP学園で?(笑)
しかしまた……意味不明だ(^^;)
しかしまた……意味不明だ(^^;)
Re:無題
京、ある意味ではしっかり役立ってる!?(笑)
と言うか、寮生全員が宿題を終えている学校……それも都市伝説かも知れないっす(爆)
と言うか、寮生全員が宿題を終えている学校……それも都市伝説かも知れないっす(爆)
Re:こんにちは
可愛らしさですか!(爆)
京、指導力には「?」かも(笑)
京、指導力には「?」かも(笑)