〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
夜霧は逸脱しなかったよ――少なくとも、授業の内容に関しては。
美術教師である夜原霧枝先生が、今日の授業で生徒に水彩画を描かせたのは当然の事だろう。
疑問点があるとすれば、只一つ。そのモチーフだった。
テーマは、雪景色。
春先の麗かな陽気の中、何故雪の絵を描かなければならないのか。今頃なら写生するにしても普通、桜とか新緑の若葉だろう。
気分屋の夜霧の事だから、大した理由は無いのかも知れないけれど……。
それとも記憶力か想像力を鍛える為なのだろうか?
美術教師である夜原霧枝先生が、今日の授業で生徒に水彩画を描かせたのは当然の事だろう。
疑問点があるとすれば、只一つ。そのモチーフだった。
テーマは、雪景色。
春先の麗かな陽気の中、何故雪の絵を描かなければならないのか。今頃なら写生するにしても普通、桜とか新緑の若葉だろう。
気分屋の夜霧の事だから、大した理由は無いのかも知れないけれど……。
それとも記憶力か想像力を鍛える為なのだろうか?
山間にあるこの学園は真冬ともなれば、雪に閉ざされる日もある。そんな時は生徒総出での雪掻き――雪合戦に発展する事もあるが――が行なわれるのだけれど、この所の暖冬傾向で、幸か不幸かそんな日は少なかった。そう言えばこの間もテレビで気象の専門家とやらが騒いでたっけ。でも、地球の歴史レベルで考えたら1℃や2℃の寒暖差が繰り返される事なんて、珍しくないんじゃないかな。寧ろ地球が生きている限り変動し続けるもんだと思うけど。
そんな事を思い出しながらも、僕は拙い筆で絵を描く。正直、絵には余り自信は無い。然も直に見ながらではなく、記憶を頼りに描くのだから。
写生同様、校舎外に出て描いてもいいと、夜霧が言った為か、美術室に居るのは僕を含めてクラスの半数程だろうか。見たからと言ってそれが冬場どんな姿だったか思い出せるとは思えなかったので、僕は留まる事にしたのだった。
隣では京が下絵を描いているけれど――白い。いや、雪の絵なんだから仕方ないか。
全く参考にならない兄貴の絵を横目に、僕は首を捻る。
今年の冬はどんなだったっけ?
雪は比較的少なかった気がする。そうだ、日当たりのいい場所では茶色の地面が見えていた。常緑樹に積もった雪も薄く、深い緑とのコントラストが鮮やかだった。暖かい日もあって、学校指定の厚いコートを羽織っている生徒も少なかったっけ。
そんな事を思い出しながら、僕は下手なりに、僕の絵に色を乗せていった。
やがて外に出ていた連中も戻って来た。
案の定と言うべきか、外組の勇輝の絵を見せて貰うと――白一色。何処で何を思い出して描いていたのか。まぁ、寝癖が物語っているけれど。
やはり外に行っていた栗栖の絵はと言うと、校舎脇の木々と、その根を覆い隠す雪。大体こんなもんやったと思うんやけどなぁ、と笑っていた。
結局京の絵は勇輝のよりは僅かに色彩が多いかな、といった所。どうやら教室の窓から見える、一階建てのクラブ棟の屋根に積もった雪を描いたらしい。
次々に提出された絵を見て、夜霧は眉根を寄せたり頷いたり……。因みに勇輝の絵には完全に呆れた様だった。
やがて授業が終わり……それでも僕は首を捻っていた。
「何で今頃雪景色なんだろう?」教室を移動しながら、思わず口に出る。「雪の絵を描かせたいなら冬にやればいいのに」
「その雪の頃には描かせる気も無かったんやないか?」答えてくれたのはやはり栗栖だった。
「最近になって今更ながら雪の絵を……って?」
「今年の冬は雪が少なかった――描きながら皆思うてたんとちゃうか? これも温暖化の所為やろか、とか」
栗栖の言葉に僕は素直に頷く。聞くともなしに聞いていたらしい京も、確かに、という表情。勇輝は――欠伸するなよ。
「そんで、ついこないだは気象学のセンセとやらが騒いではった――それに影響されて、夜霧なりに記録しとこうと思うたんやないかな。今年の冬を。まぁ、こんなんは長年続けな意味無いし、あの気分屋の夜霧が来年以降も雪の記録付けようと思うかどうかは解れへんけどな」そう言って、栗栖は笑う。
確かにそれは疑問だ、と僕達は深く頷いた。
「写真と違うてその場に無うても記憶から引き出して再現出来るんは、絵のええ所やけど、記憶は主観も一緒くたに記録してまうからなぁ。ま、来年から――続くとしたら――冬場の課題になるとしても、今年のは……資料になるんやろか」
素知らぬ顔をして余所を向いてしまった勇輝を見て、僕達は思わず笑い出していた。
窓から差し込む陽は眩しく、そして暖かだった。
―了―
う~む。夜霧にまともな文を書かれると……妙にやり難いのは何でだ(笑)
そして……やっぱり日曜日は眠い……zzz
そんな事を思い出しながらも、僕は拙い筆で絵を描く。正直、絵には余り自信は無い。然も直に見ながらではなく、記憶を頼りに描くのだから。
写生同様、校舎外に出て描いてもいいと、夜霧が言った為か、美術室に居るのは僕を含めてクラスの半数程だろうか。見たからと言ってそれが冬場どんな姿だったか思い出せるとは思えなかったので、僕は留まる事にしたのだった。
隣では京が下絵を描いているけれど――白い。いや、雪の絵なんだから仕方ないか。
全く参考にならない兄貴の絵を横目に、僕は首を捻る。
今年の冬はどんなだったっけ?
雪は比較的少なかった気がする。そうだ、日当たりのいい場所では茶色の地面が見えていた。常緑樹に積もった雪も薄く、深い緑とのコントラストが鮮やかだった。暖かい日もあって、学校指定の厚いコートを羽織っている生徒も少なかったっけ。
そんな事を思い出しながら、僕は下手なりに、僕の絵に色を乗せていった。
やがて外に出ていた連中も戻って来た。
案の定と言うべきか、外組の勇輝の絵を見せて貰うと――白一色。何処で何を思い出して描いていたのか。まぁ、寝癖が物語っているけれど。
やはり外に行っていた栗栖の絵はと言うと、校舎脇の木々と、その根を覆い隠す雪。大体こんなもんやったと思うんやけどなぁ、と笑っていた。
結局京の絵は勇輝のよりは僅かに色彩が多いかな、といった所。どうやら教室の窓から見える、一階建てのクラブ棟の屋根に積もった雪を描いたらしい。
次々に提出された絵を見て、夜霧は眉根を寄せたり頷いたり……。因みに勇輝の絵には完全に呆れた様だった。
やがて授業が終わり……それでも僕は首を捻っていた。
「何で今頃雪景色なんだろう?」教室を移動しながら、思わず口に出る。「雪の絵を描かせたいなら冬にやればいいのに」
「その雪の頃には描かせる気も無かったんやないか?」答えてくれたのはやはり栗栖だった。
「最近になって今更ながら雪の絵を……って?」
「今年の冬は雪が少なかった――描きながら皆思うてたんとちゃうか? これも温暖化の所為やろか、とか」
栗栖の言葉に僕は素直に頷く。聞くともなしに聞いていたらしい京も、確かに、という表情。勇輝は――欠伸するなよ。
「そんで、ついこないだは気象学のセンセとやらが騒いではった――それに影響されて、夜霧なりに記録しとこうと思うたんやないかな。今年の冬を。まぁ、こんなんは長年続けな意味無いし、あの気分屋の夜霧が来年以降も雪の記録付けようと思うかどうかは解れへんけどな」そう言って、栗栖は笑う。
確かにそれは疑問だ、と僕達は深く頷いた。
「写真と違うてその場に無うても記憶から引き出して再現出来るんは、絵のええ所やけど、記憶は主観も一緒くたに記録してまうからなぁ。ま、来年から――続くとしたら――冬場の課題になるとしても、今年のは……資料になるんやろか」
素知らぬ顔をして余所を向いてしまった勇輝を見て、僕達は思わず笑い出していた。
窓から差し込む陽は眩しく、そして暖かだった。
―了―
う~む。夜霧にまともな文を書かれると……妙にやり難いのは何でだ(笑)
そして……やっぱり日曜日は眠い……zzz
PR
この記事にコメントする
Re:こんばんは♪
白一色っすね(笑)
実際には影もあり、濃淡もあるんだけど……雪って言えば、白だもんねぇ。
実際には影もあり、濃淡もあるんだけど……雪って言えば、白だもんねぇ。
Re:こんばんは
「……っちゅう事も考えられんではないけど、相手は夜霧やからなぁ。大体、考えさせる心算やったら、後からでもそれを教えんと。祥みたいに疑問に思うた生徒ばっかりやないからなぁ。どう見てもいつもの気紛れや、位にしか思うてへんのがおるし。な、勇輝?」と、更に足してみる(笑)
無題
原型のまま使って頂きありがとう。
この前、私が言ったからでしょう?(笑)
珍しくBPネタを連発したね~。
私も冬猫さんの意見に一票。(笑)
それにしても、このシリーズ、段々苦しくなっていくなぁ。(笑)
なんで、態々山間部に学校を・・・、ねぇ夜霧さん?(笑)
それとこれ、前に読み返して思ったんだけど、最初は京だけなんだよね。
うちのユウキの発言が面白かった所から、双子の弟・祥が登場して、語り部に。
最初は居なかった人が、途中から語り部になっているんだから、考えてみたら面白いよね~。
この前、私が言ったからでしょう?(笑)
珍しくBPネタを連発したね~。
私も冬猫さんの意見に一票。(笑)
それにしても、このシリーズ、段々苦しくなっていくなぁ。(笑)
なんで、態々山間部に学校を・・・、ねぇ夜霧さん?(笑)
それとこれ、前に読み返して思ったんだけど、最初は京だけなんだよね。
うちのユウキの発言が面白かった所から、双子の弟・祥が登場して、語り部に。
最初は居なかった人が、途中から語り部になっているんだから、考えてみたら面白いよね~。
Re:無題
や、珍しく意味が通ってるんで、この儘使うてもええかと(関西弁が残っとる・笑)
え~? 夜霧先生を買い被り過ぎですよ(爆)
語り部は最初っから祥だよ~。名前が出てなかったけど(笑)
え~? 夜霧先生を買い被り過ぎですよ(爆)
語り部は最初っから祥だよ~。名前が出てなかったけど(笑)
再び(笑)
おっと、改めてみてみたら、双子自体は登場してた。
ゴメン。
ただ、名前がついたのが、ユウキの発言からなのは確か。
いずれにしろ、成り行きで進んでるよね~、このシリーズ。(笑)
行く末は・・・。
Re:再び(笑)
そうそう、ユウキ君の「しょうも……」から出たんですよね~(笑)
今更だけど何で「しょうも……」?(^^;)
成り行き……ケ~セラ~セラ~♪(←おい)
今更だけど何で「しょうも……」?(^^;)
成り行き……ケ~セラ~セラ~♪(←おい)
Re:無題
お引っ越し……大変だったのね(^^;)
大丈夫です。夜霧センセは白一色でも点数くれますから。多分(笑)
大丈夫です。夜霧センセは白一色でも点数くれますから。多分(笑)
Re:雪〜
こちらは結局雪は積もらずじまいでしたね~。
ちらちら降ったのは降ったんですが……。平野部じゃこんなものかなぁ。
ちらちら降ったのは降ったんですが……。平野部じゃこんなものかなぁ。