〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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今日夜霧――夜原霧枝先生――は、矢鱈と溜め息をついていた。人目に付く事を厭うていない辺り、何か、誰かに話したかったのかも知れない。
ちょっと気にはなったけれど、気分屋の夜霧の事、下手に詮索して気分を害したら、他のクラスメートに迄とばっちりが行く可能性もあるからと、僕はだんまりを決め込んでいた。
と、僕が飲み込んだ言葉をあっさりと吐いた奴が約一名。
「どうかしたんですか? 何か気になる事でも?」
誰だと見遣る迄もなく、その、僕によく似た声で出所は知れていた。
僕の双子の兄、真田京だ。
いや、そもそも京でしかあり得なかったのだ。他の生徒が僕と同じ様に夜霧の顔色を窺っている只中で、はっきりと口に出来るのは。
本当にマイペースと言うか、我が道を行くと言うか……もしくは鈍感なのか。
夜霧といい勝負だ。
その夜霧はと言うと、京の言葉に「大した事じゃないんだけど……」と前置きしつつも――話し相手を見付けて妙に嬉しそうに見えた。
僕は聞くともなしに、二人の会話を聞いていた。
ちょっと気にはなったけれど、気分屋の夜霧の事、下手に詮索して気分を害したら、他のクラスメートに迄とばっちりが行く可能性もあるからと、僕はだんまりを決め込んでいた。
と、僕が飲み込んだ言葉をあっさりと吐いた奴が約一名。
「どうかしたんですか? 何か気になる事でも?」
誰だと見遣る迄もなく、その、僕によく似た声で出所は知れていた。
僕の双子の兄、真田京だ。
いや、そもそも京でしかあり得なかったのだ。他の生徒が僕と同じ様に夜霧の顔色を窺っている只中で、はっきりと口に出来るのは。
本当にマイペースと言うか、我が道を行くと言うか……もしくは鈍感なのか。
夜霧といい勝負だ。
その夜霧はと言うと、京の言葉に「大した事じゃないんだけど……」と前置きしつつも――話し相手を見付けて妙に嬉しそうに見えた。
僕は聞くともなしに、二人の会話を聞いていた。
「この間、姉とその十五歳になる娘――要するに姪ね――に久し振りに会ったんだけど、その姪っ子が私のバッグに付いてたキーホルダーを見て矢鱈と笑いを噛み殺してたのよ。何なのって訊いても笑って誤魔化すだけだし。それで、何だったのか気になってしまって……」
「その年頃の女子なんてどうでもいい事でも大笑いしますからね。気にしなくていいんじゃないですか?」と、京。その年頃って、二つしか違わないじゃないか、兄貴よ。「それとも、余程愉快なキーホルダーでも?」
「普通のキーホルダーよ。銀色のプレートにイニシャルが彫ってあるだけ。何にも笑える要素なんて無いと思うけど」だから意味が解らない、と夜霧は首を捻る。
そして片手間とばかりにさらさらと不要なプリントの裏に描き出したそのキーホルダーの絵は、確かに僕から見ても笑い所なんて無い、ごく普通の物だった。
それの何が可笑しかったのだろう? 然もその訳を誤魔化すなんて。
と、僕の横から覗き込んだのは、好奇心旺盛な知多勇輝と関西人、間宮栗栖。だが、絵を一瞥すると、二人共さっさと別の席に行ってしまった。しかしその肩が僅かながら震えているのを、僕は見逃さなかった。
こっそりと、しかし素早く京と夜霧から離れ、二人に付いて行く。
そして充分に距離を取った頃、僕は訊いた。
「あれ、何が可笑しいんだ? 二人共何か解ったんだろう?」
「何や、祥。気付かへんかったんか」栗栖が笑う。
「何を?」
「夜霧のイニシャル……今見てたやろ?」
「ああ、見てたけど……。夜原霧枝のイニシャルで『K・Y』……」口にして、僕はその響きに気が付いた。「KYって……」
「空気が読めない……ある意味的を射てる様な気もするな」勇輝が笑う。「気分屋でマイペースだもんなぁ、夜霧」
「俺等は普段そんな略語使わへんけど、中には使うてる子もおるやろうしな。ある程度夜霧を知ってたら尚更その符合に笑えるわな」栗栖は苦笑する。
僕も苦笑した。と、もし京がこれに気付いたら――そう思い至って振り返ったのとほぼ同時だった。
その意味を知れば夜霧の機嫌が急変する事位解るだろうに、その略語について説明した京は――そしてやはり急変した空気も、その原因へのクラスメートからのやや恨みがましい視線も気にした風も無い京は――彼自身も「KY」なのかも知れない。
双子だけど僕は違う……と思いたい。
―了―
全っ然ロマンチックな方向には進みませんでした(爆)
や、ある日気付いたら夜霧先生のイニシャルって『K・Y』だよな~って(笑)
京はある意味それ以上に……?
「その年頃の女子なんてどうでもいい事でも大笑いしますからね。気にしなくていいんじゃないですか?」と、京。その年頃って、二つしか違わないじゃないか、兄貴よ。「それとも、余程愉快なキーホルダーでも?」
「普通のキーホルダーよ。銀色のプレートにイニシャルが彫ってあるだけ。何にも笑える要素なんて無いと思うけど」だから意味が解らない、と夜霧は首を捻る。
そして片手間とばかりにさらさらと不要なプリントの裏に描き出したそのキーホルダーの絵は、確かに僕から見ても笑い所なんて無い、ごく普通の物だった。
それの何が可笑しかったのだろう? 然もその訳を誤魔化すなんて。
と、僕の横から覗き込んだのは、好奇心旺盛な知多勇輝と関西人、間宮栗栖。だが、絵を一瞥すると、二人共さっさと別の席に行ってしまった。しかしその肩が僅かながら震えているのを、僕は見逃さなかった。
こっそりと、しかし素早く京と夜霧から離れ、二人に付いて行く。
そして充分に距離を取った頃、僕は訊いた。
「あれ、何が可笑しいんだ? 二人共何か解ったんだろう?」
「何や、祥。気付かへんかったんか」栗栖が笑う。
「何を?」
「夜霧のイニシャル……今見てたやろ?」
「ああ、見てたけど……。夜原霧枝のイニシャルで『K・Y』……」口にして、僕はその響きに気が付いた。「KYって……」
「空気が読めない……ある意味的を射てる様な気もするな」勇輝が笑う。「気分屋でマイペースだもんなぁ、夜霧」
「俺等は普段そんな略語使わへんけど、中には使うてる子もおるやろうしな。ある程度夜霧を知ってたら尚更その符合に笑えるわな」栗栖は苦笑する。
僕も苦笑した。と、もし京がこれに気付いたら――そう思い至って振り返ったのとほぼ同時だった。
その意味を知れば夜霧の機嫌が急変する事位解るだろうに、その略語について説明した京は――そしてやはり急変した空気も、その原因へのクラスメートからのやや恨みがましい視線も気にした風も無い京は――彼自身も「KY」なのかも知れない。
双子だけど僕は違う……と思いたい。
―了―
全っ然ロマンチックな方向には進みませんでした(爆)
や、ある日気付いたら夜霧先生のイニシャルって『K・Y』だよな~って(笑)
京はある意味それ以上に……?
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無題
どもども!
夜霧先生のイニシャル、確かに「K・Y」なんですねww
持って産まれたものだから仕方ないとは言え、今の時代にピッタリすぎて怖いぐらいっす(笑)
で、問題の京君は…
夜霧以上のKYで間違いなさそうっすねwww
夜霧先生のイニシャル、確かに「K・Y」なんですねww
持って産まれたものだから仕方ないとは言え、今の時代にピッタリすぎて怖いぐらいっす(笑)
で、問題の京君は…
夜霧以上のKYで間違いなさそうっすねwww
Re:無題
や、書いてて笑いましたよ(笑)
夜霧……本名として適当に付けただけだったのに、こんなネタがあるとは(爆)
京、どんどんKYに……(汗)
夜霧……本名として適当に付けただけだったのに、こんなネタがあるとは(爆)
京、どんどんKYに……(汗)
Re:こんばんは♪
偶然とは言え恐ろしい(笑)
京は……末恐ろしい!?
京は……末恐ろしい!?
Re:こんばんは
KYな夜霧先生の春は遠い……(笑)
果たして来るのか!?(爆)
果たして来るのか!?(爆)
Re:こんばんは
まさに名は体を表す、ですな。
夜霧……適当に付けたのにこんなにはまるとは(^^;)
夜霧……適当に付けたのにこんなにはまるとは(^^;)
Re:おはよう!
『空気を察しろ賞』(爆)
祥(SS)は何だろね? 本人曰く「繊細な小心者」だそうですけど(笑)
祥(SS)は何だろね? 本人曰く「繊細な小心者」だそうですけど(笑)
Re:こんばんわっ^^
数字やイニシャルにも色々と……(笑)
夜霧が「K・Y」と気付いた時は私も噴き出しましたよ(笑)
夜霧が「K・Y」と気付いた時は私も噴き出しましたよ(笑)
Re:こんばんは☆
全くね。
漫画もいいけどちゃんとした本読んでるのかな?
その辺のおっちゃんじゃなくて一国の首相なんだから、発言には責任を持って頂きたい!
漫画もいいけどちゃんとした本読んでるのかな?
その辺のおっちゃんじゃなくて一国の首相なんだから、発言には責任を持って頂きたい!