〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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夜の森に迷った旅人は、とある館に行き着いた。窓に、ぽっと明かりが灯っている。
玄関先で呼ばわるも、出て来る者は無い。鍵の他に閂も掛かっているのか、扉はびくともしない。仕方なく周囲を巡り、開いていた窓から失礼する。
しかし、誰も居ない訳ではなかった。偶然飛び込んだその部屋には四人の男女がおり、更に一人が、彼等に囲まれて床に倒れ伏していた。息は無い――直観的にそう悟った。
俯せに倒れたその老人は、鈍器の一撃を食らった様で、後頭部から赤黒い血を流し、逆に顔は蒼白だった。傍らには凶器らしきクリスタルの灰皿。指紋の曇りは見当たらない。
彼を囲む一同は、それぞれが猜疑心の体現とでも言うべき顔で互いを窺い合っている。
誰がやったのか。言う迄もなくこの場での最重要議題だった。
「物音を聞いて、私が来た時にはもう彼が倒れてたわ」第一発見者らしき女が言った。
「僕は居間におって、ここに来たんは最後やったよ」と、男の一人が関西弁で。
「私は部屋で……彼女の悲鳴で駆け付けました」第一発見者を指して、別の男が言う。
残る一人、怯えた眼をした女がおずおずと言った。「窓が開いているわ。犯人はここから入って、もう逃げたんじゃないかしら。だから疑い合うのは止めて……」
「馬鹿な」一言の元に、彼女の意見は斬って捨てられた。「解ってる筈ですよ? あり得ません。この中に犯人が居るんです。それとも、そこのそいつが犯人だとでも?」
太い指で指され、旅人は慌ててバタバタ手を振った。
「いっそそうなら……いえ、そうね。こいつの所為にしてしまわない? ね? 凶器も処分して事故だって事にして上げるから」発見者の女は部外者に囁き掛ける。言外に、真犯人に言っているのかも知れない。追及しないから殺さないでくれと。あるいは……。
どちらにしても冗談ではない――少しの間羽を休めた彼は、探査を開始した。
四人の中に犯人が居る。それは男が言う様に間違いない事だ。何故ならこの窓の外は切り立った崖。ロープを張った痕も無い。玄関は中から閂も掛かっていた。
彼は最初の女の証言が事実であるなら、存在する筈のものを探した。彼の特技で。
それは一見他と何ら変わりない壁の向こうにあった。細い細い隠し通路。直ぐ横の、上から見ていては先ず判らない微かな出っ張りが仕掛けだった。彼がそれに爪を掛けてキーキー騒ぐと、関西弁の男がさっと顔色を変え、彼を追い出そうとした。しかし僅かに遅く別の男が訝しげな顔で仕掛けを操作してしまった。開いた通路の先を確認し、質す。
「犯行後、ここを通って居間に行き、何食わぬ顔で最後に来た……そうですね?」
超音波の反響で通路を発見した功労者は皮の翼をはためかせて、窓から出て行った。
―了―
館物第二弾。
ちょっと判り難いかなと思いつつ、夜が得意なあいつです。
∧∧
( ・・ )
/⌒ ⌒\
(( ⌒⌒∧∧⌒⌒ ))
しかし、誰も居ない訳ではなかった。偶然飛び込んだその部屋には四人の男女がおり、更に一人が、彼等に囲まれて床に倒れ伏していた。息は無い――直観的にそう悟った。
俯せに倒れたその老人は、鈍器の一撃を食らった様で、後頭部から赤黒い血を流し、逆に顔は蒼白だった。傍らには凶器らしきクリスタルの灰皿。指紋の曇りは見当たらない。
彼を囲む一同は、それぞれが猜疑心の体現とでも言うべき顔で互いを窺い合っている。
誰がやったのか。言う迄もなくこの場での最重要議題だった。
「物音を聞いて、私が来た時にはもう彼が倒れてたわ」第一発見者らしき女が言った。
「僕は居間におって、ここに来たんは最後やったよ」と、男の一人が関西弁で。
「私は部屋で……彼女の悲鳴で駆け付けました」第一発見者を指して、別の男が言う。
残る一人、怯えた眼をした女がおずおずと言った。「窓が開いているわ。犯人はここから入って、もう逃げたんじゃないかしら。だから疑い合うのは止めて……」
「馬鹿な」一言の元に、彼女の意見は斬って捨てられた。「解ってる筈ですよ? あり得ません。この中に犯人が居るんです。それとも、そこのそいつが犯人だとでも?」
太い指で指され、旅人は慌ててバタバタ手を振った。
「いっそそうなら……いえ、そうね。こいつの所為にしてしまわない? ね? 凶器も処分して事故だって事にして上げるから」発見者の女は部外者に囁き掛ける。言外に、真犯人に言っているのかも知れない。追及しないから殺さないでくれと。あるいは……。
どちらにしても冗談ではない――少しの間羽を休めた彼は、探査を開始した。
四人の中に犯人が居る。それは男が言う様に間違いない事だ。何故ならこの窓の外は切り立った崖。ロープを張った痕も無い。玄関は中から閂も掛かっていた。
彼は最初の女の証言が事実であるなら、存在する筈のものを探した。彼の特技で。
それは一見他と何ら変わりない壁の向こうにあった。細い細い隠し通路。直ぐ横の、上から見ていては先ず判らない微かな出っ張りが仕掛けだった。彼がそれに爪を掛けてキーキー騒ぐと、関西弁の男がさっと顔色を変え、彼を追い出そうとした。しかし僅かに遅く別の男が訝しげな顔で仕掛けを操作してしまった。開いた通路の先を確認し、質す。
「犯行後、ここを通って居間に行き、何食わぬ顔で最後に来た……そうですね?」
超音波の反響で通路を発見した功労者は皮の翼をはためかせて、窓から出て行った。
―了―
館物第二弾。
ちょっと判り難いかなと思いつつ、夜が得意なあいつです。
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