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島には別荘だったと思われる館と、その離れらしい小屋が一軒ずつあるだけ。この島自体が個人所有なのかも知れない。しかし、今現在ここには誰も住んでいないし、近々人が来そうな様子も無かった。
それと言うのもこの館には管理人さえおらず、かつては繋がっていたらしいライフライン――上下水道や電気、ガス――も切れ、電話線は何者かに断ち切られていた。
その事が俺に首を傾げさせた。只この別荘を捨てたのなら、態々電話線を切って行くだろうか。使えない事には違いないが、普通は手続きだけで済む事だろう。
胸騒ぎを感じて、俺は館内を探索する事にした。
打ち捨てられて五年は経っているだろうか? しかし、手入れもされていない館は、海風の所為で尚更傷みが早いかも知れない。だとすればもっと短期間か?
何にしてもかつては立派だっただろう、傷んだロビー、食堂、応接室……そのいずれにも、残された儘の家具と、残された儘の生活感。傷みや埃、年月を取り除けば今しも人が現れそうな気配がそこ此処に感じられた。それはやはり、計画的な移転と言うよりは突然の退去を思わせた。
だが――俺の脳裏に切られた電話線がぶら下がった――やはり何かおかしい。
俺は幅の広い階段を二階へと上った。廊下の奥に見える細い階段は三階の塔へ行く為のものの様だ。
階上は個人の寝室や客間だろう。開けてみればやはりその予想通りで――予想外だったのはそこにも残されたソファに、遺体が腰掛けていた事だった。
他の部屋も捜索し、見付かったのは最早白骨と化した遺体が六体。
年代は大きさから見て大人ばかりか。医学知識でもあればもっと詳しい事が解るのだろうが、生憎俺にそんな知識は無い。只、そのいずれにも、肋骨の隙間――詰まりは胸部――に大振りのナイフが遺されていた。よくよく見ればその周りには赤黒い染み。
要するにここは――殺人事件の現場だったという事か。
そしてそれは発覚する事無く、この島に眠っていた……。
既に消え去った筈の血臭(けっしゅう)を嗅いだ気がして、俺は館を這う様にして出た。絶海の孤島での殺人事件。そんな小説の舞台に俺は紛れ込んでしまったのか? 幸いなのは既に幕が降りた後だという事か。俺は力が抜け、暫し砂浜に寝転がって海風に吹かれていた。蒼い空から館の陰が覆い被さってくる様だ。
それから少なくとも二日――俺は離れの一間しか無い小屋に籠っている。あれから「もし未だ幕が降りていなかったら?」という考えが頭から消えない。
それと言うのも浜に寝転がったあの時、館の最上階の塔に、あのナイフを思わせる煌めきが見え、この離れには未だ使用可能な保存食が、封を切られて転がっていたから。
何があったのか、犯人も長く船を見ていないのかも知れない。
―了―
クローズド・サークルから犯人が逃げ損ねたら? という話。
例によって尺が短い……これも「小話」に回した方がよかったかな。
それだともうちょいじわじわと「誰か居る!?」感を出しつつ……結局ホラーっぽくなるよん(笑)
「いやぁ、私も難破して辿り着いたんですがこの有り様で……」とか言う計算は働きそうにないですね。
やっぱりホラー……

殺し屋と、孤島で2人(プラス死体)・・・
いっそ手早く殺してほしいかも。
ライフラインのないとこでは、
生きられないです(根性無し)。
最近夜霧ちゃん、俳句詠むようになってきましたね☆
そんなあっさりと(苦笑)
確かにライフライン無いときついですよね(--;)水は一杯あるけど、海水なんて飲んだら塩分濃度高過ぎて死んじゃうよ。
>最近夜霧ちゃん、俳句詠むようになってきましたね☆
「あの母の 管理したれば 世捨て人」←こんなんですよ(笑)
船じゃなくてヘリかもしれませんね?(大笑)
ライフライン、特に水が無いと、一週間保つかなあ。缶詰の水分で凌ぐにも限界があるし。
殺人犯との持久戦ですね。
水……殺人犯の心配さえ無ければ館には家具一式、調理道具も残っているので、火種さえあれば海水を沸騰させてその上になるべく清潔なビニールでも張り、付着した水蒸気には塩分含まれないので、それを冷ませば真水は調達可能だったりはします。そんな余裕があればだけどね。くっくっくっ……。
ただ、気になる点は……
保存食の量です。
もしくは、何処で買ってきているのか?
まぁ、これは犯人が残っていたらの話になりますけどね。
ちょっと、そこだけシンは気になりました。
話はミステリアスでよかったです。
追記として、クローズド・サークルっていう単語を初めて知って勉強になりました。ありがとうです。
保存食は管理人が常駐管理してたとして、非常用に溜め込んでいた物かと(笑)海が荒れると買い物にも出られない。こんな所に勤める管理人――怪しい(笑)
クローズド・サークル……所謂「吹雪の山荘物」とか「絶海の孤島物」ミステリーで言う閉鎖空間ですね。勿論、普通犯人は脱出手段を持っているか、数日内に迎えが来るとかですが。
このカテの「お題」元、有栖川有栖先生の『月光ゲーム』(創元社文庫刊、マッグガーデンからコミックも出てます♪)に始まるシリーズもそうですね。
>ヘリ…ハッシー♪(笑)
さっき鴉が一杯飛んでたー★(笑)
練り直して短編にしようかな?

犯人が持っているのも含めて七本…
島に上陸した時、殺人鬼は大振りのナイフを七本も持って来たのよね…。
何だか犯人も大変だなぁー
ガチャガチャガチャ
「あ、痛い!」☆(/ * o*)/
「…畜生!ナイフ全部使いきってやる!」
こうして犯人に殺意が芽生えたのだった…
なんてね?
七本纏めて持ってたら怪し過ぎますよ(爆笑)
蛇と蛙の様に睨み合ってる間に、徘徊するナメクジ殺人鬼に二人はやられるのだろうか?
死体の情況から、そこまで逃げてる人間がいるとは思えないんだけど、何となくそう思いました。
何か逃げられそうな気がしてきた!
もうちょい年月短くしたら、それもアリかも^^
その分保存食とか問題が複雑化するけど(--;)