〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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町はずれの建設現場は、大きなシートに覆われていた。何かができつつある。
随分広い敷地だ――と正人は思った。ほんの通りすがりの彼が、つい脚を止めて見上げてしまう程の広さ、そして高さだった。
一体何を建てているのかと周囲を見回す。しかし、看板等は設置されていない様だ。正人は首を傾げた。これ程の大工事なら建設業社が誇らしげに看板を掲げていそうなのに。
公共施設なら尚の事だし、商業施設ならそれこそ大々的に飾り付けているだろう。カウントダウン付きで。
ならば……真逆これが個人宅? どんな大豪邸だよ。
正人は好奇心の赴く儘、丁度休憩に入ったらしい作業員の一人を捕まえた。
「随分大きな工事ですね。何が建つんですか?」
タオルの下から真っ黒に焼けた顔を覗かせて、作業員は苦笑した。
「関わらない方がいいよ」探る様に正人を見ながら、そんな言葉を吐く。
いきなりそう言われては、却って気になってしまうではないか。正人は――これが狙いかと思いつつも――自販機でよく冷えたお茶を二本買い、一本を彼に投げた。
悪いね、と言いつつ作業員は軽く手を上げた。
「いや、この屋敷なんだがね……本当ならもうとっくに完成してなけりゃおかしいんだよ」
「工事が遅れてるんですか?」
「だったらこうしてのんびり駄弁っちゃいられねぇさ」苦笑する。「確かに予定はオーバーしてるが、俺等の所為じゃねぇ」
何せこっちは設計図通りに造ってるのに、設計図がころころ変わっちまうんだからと笑う。
「設計図が?」どういう事かと更に問うと、男はふと、声を潜めた。
「幽霊がな……書き変えちまうんだとよ」
「……幽霊除けに増築を繰り返した館の話なら聞いた事あるけど……」
幽霊が書き変える? どうやって? 何故?
「どうやってかは知らねぇがな、この土地、前はある推理作家が住んでたんだとよ。それが亡くなった後、土地が人手に渡り……今の地主が館を建てようって事になったが、設計図がさっき言った通りでな。これがどうも、作家が死の間際に考えていた作品の舞台に似ているらしい。実は地主はその作家のファンでね……好きな様に造ってやってくれ、だとさ。しかし次々変わるのは……未だ未だ書きたかったのかねぇ」しんみり、呟く。
正人はシートからそっと覗き見て、自動書記でもして書いてくれればいいのに、と思った。
―了―
どんな館かはご想像にお任せします(笑)
因みに「幽霊除けに増築を~」は実在しますね。
一体何を建てているのかと周囲を見回す。しかし、看板等は設置されていない様だ。正人は首を傾げた。これ程の大工事なら建設業社が誇らしげに看板を掲げていそうなのに。
公共施設なら尚の事だし、商業施設ならそれこそ大々的に飾り付けているだろう。カウントダウン付きで。
ならば……真逆これが個人宅? どんな大豪邸だよ。
正人は好奇心の赴く儘、丁度休憩に入ったらしい作業員の一人を捕まえた。
「随分大きな工事ですね。何が建つんですか?」
タオルの下から真っ黒に焼けた顔を覗かせて、作業員は苦笑した。
「関わらない方がいいよ」探る様に正人を見ながら、そんな言葉を吐く。
いきなりそう言われては、却って気になってしまうではないか。正人は――これが狙いかと思いつつも――自販機でよく冷えたお茶を二本買い、一本を彼に投げた。
悪いね、と言いつつ作業員は軽く手を上げた。
「いや、この屋敷なんだがね……本当ならもうとっくに完成してなけりゃおかしいんだよ」
「工事が遅れてるんですか?」
「だったらこうしてのんびり駄弁っちゃいられねぇさ」苦笑する。「確かに予定はオーバーしてるが、俺等の所為じゃねぇ」
何せこっちは設計図通りに造ってるのに、設計図がころころ変わっちまうんだからと笑う。
「設計図が?」どういう事かと更に問うと、男はふと、声を潜めた。
「幽霊がな……書き変えちまうんだとよ」
「……幽霊除けに増築を繰り返した館の話なら聞いた事あるけど……」
幽霊が書き変える? どうやって? 何故?
「どうやってかは知らねぇがな、この土地、前はある推理作家が住んでたんだとよ。それが亡くなった後、土地が人手に渡り……今の地主が館を建てようって事になったが、設計図がさっき言った通りでな。これがどうも、作家が死の間際に考えていた作品の舞台に似ているらしい。実は地主はその作家のファンでね……好きな様に造ってやってくれ、だとさ。しかし次々変わるのは……未だ未だ書きたかったのかねぇ」しんみり、呟く。
正人はシートからそっと覗き見て、自動書記でもして書いてくれればいいのに、と思った。
―了―
どんな館かはご想像にお任せします(笑)
因みに「幽霊除けに増築を~」は実在しますね。
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昔なら大丈夫
法改正した今だと、設計図をいくら変えても、始めに設計した通りじゃなきゃ駄目なのよね~役所が許さないから
ただただ、はた迷惑な悪戯幽霊ですな(笑)
あ、家だけでも案内板は出しますよ~日付以外も書く事有るからね。
って、また意地悪ばかり言ったりして(笑)
祟られるかな?f^_^;
ただただ、はた迷惑な悪戯幽霊ですな(笑)
あ、家だけでも案内板は出しますよ~日付以外も書く事有るからね。
って、また意地悪ばかり言ったりして(笑)
祟られるかな?f^_^;
Re:昔なら大丈夫
役所の迄書き変えてたりして
んじゃ、姐さんは何建てますか~(^^)
んじゃ、姐さんは何建てますか~(^^)
Re:ううっ・・・
祟りじゃ~ とか言うと懐かしい映画を思い出してしまいますね。
う~む、先に看板でばれても面白い物~?
建設許可がどうの迄言い出したら、キリが無いな。
いきなり廃墟風のビルとか建てたら、何でや? と話が展開しそうやけど。
う~む、先に看板でばれても面白い物~?
建設許可がどうの迄言い出したら、キリが無いな。
いきなり廃墟風のビルとか建てたら、何でや? と話が展開しそうやけど。
Re:うっ・・・・
ひゅ~どろどろ……(笑)
夜霧、寝てる所をクリックすると「う~ん…」って、何の夢見てるのか寝言言います。
「血…」とか……。怖っ!
夜霧、寝てる所をクリックすると「う~ん…」って、何の夢見てるのか寝言言います。
「血…」とか……。怖っ!
わかった!
何度も何度も…
建築主も施主も名前は同じなのに、必ず途中迄行くと解体して、さら地に戻されている。それが何度も繰り返されたら如何でしょうか?
シートの奥でまた何かあったのか!?と疑わせるのに充分かと思いますが?
夜霧ちゃんは私には何もしてくれません…携帯だから?
建築主も施主も名前は同じなのに、必ず途中迄行くと解体して、さら地に戻されている。それが何度も繰り返されたら如何でしょうか?
シートの奥でまた何かあったのか!?と疑わせるのに充分かと思いますが?
夜霧ちゃんは私には何もしてくれません…携帯だから?
Re:わかった!
う~ん、賽の河原か波打ち際の砂の城。あるいは「こんなもん未完成じゃー!」と焼いたばかりの壺を打ち割る頑固爺な陶芸家(笑)
そんなイメージが浮かびますな。
夜霧、携帯だと見られないからなぁ……(ノ_;)
そんなイメージが浮かびますな。
夜霧、携帯だと見られないからなぁ……(ノ_;)
Re:無題
確かに! 金持ちの道楽でもなきゃ出来ないな、これは(^^;)