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色々な土地で、色々なホテルや宿に泊まったことがある。しかし、こんな宿は生まれて初めてだ。
夜の夜中に、私はフロントに駆け込んだ。電話で従業員を呼び付けてもよかったのだが、一秒たりとも、あの部屋に居たくなかったのだ。
「如何なさいましたか? お客様」血相が変わっているだろう私の姿を見ても、フロント係は涼しい顔で平然とそう尋ねた。
「あの部屋! 絶対何かおかしいぞ! 誰も居ないバスルームからずっと水音がしてるし、締め忘れかと思って見ても水なんて出てないし!」そもそも入った当初から何やら肌寒くてしようがなかった。「その……非科学的な事なんて信じちゃいなかったが、どう考えても……」心霊現象、という言葉は辛うじて飲み込んだ。おかしいと思われるのも、言い掛かりを付けていると思われるのも嫌だ。
だが、フロント係はあっさりと、こうのたまった。
「ああ、あのお部屋ではかつてバスルームで自殺されたお客様がおられまして。何でも信じていた方に裏切られたショックで、との事でございますが、それ以来ああして水音が……」
「知っててそんな部屋に案内したのか!? 冗談じゃないぞ!」私は思わず相手の言葉を遮った。
「お気に召されませんでしたか」フロント係は心底残念そうに項垂れた。
「当たり前だよ!」私は一喝した。当然だろう。本当ならこんな宿、今直ぐにでもチェックアウトしたい所だったが、生憎と今は深夜。然も此処は趣味のバイク旅行中、下調べが甘かったのか他に空いた宿も無く、峠に一軒だけ、やっと見付けた宿だった。「部屋を替えてくれ」
「かしこまりました」フロント係は深々とお辞儀をして、奥のラックから新たな鍵を持って来た。「こちらならきっと、お気に召して頂けるかと」営業スマイルでそう言いつつ。
「おい!」一時間としない内に、私は再度フロント係に詰め寄っていた。「今度の部屋は何なんだ! 電気を消すといきなり身体が動かなくなった上に、外から凄い勢いで窓ガラスを叩く音が……! あの部屋、四階だぞ!?」再びの奇怪現象への怒りと気合で金縛りを解いて逃げ出して来たものの、私の脚は流石に戦慄いていた。
しかしフロント係、やはり平然と、いや、寧ろ満足そうにこう言った。
「あのお部屋には何でも霊道が通っているとかで、かなりの確率でお客様が仰った様な現象が報告されております」
私は流石に怒髪天を突く勢いで、フロント係に食って掛かった。
「冗談じゃない! 客を何だと思ってるんだ、この宿は! 態とそんな部屋に通すなんて!」
「お気に召されませんでしたか……?」やはり心底、残念そうなフロント係。寧ろ困った客だという感情を押し殺している様にさえ見えた。困った客? 誰がだ!
今度こそチェックアウトを考えたものの、外は未だ暗い。時計を確かめれば未だ午前三時半。今から冷たい夜気の中バイクを走らせて、運良く他の宿が見付かったとしても門戸を開いてくれるかどうか……。
「部屋を替えてくれ。これで最後だ」これでまともな部屋じゃなかったら、夜中だろうと何だろうと出て行く、そう自分自身にも気合を入れる様に、私は言った。
「かしこまりました」フロント係は悄然としながらも奥から鍵を持って来る。「お詫びも兼ねまして、当ホテルで一番の部屋をご案内致します。最上階で、何でも当ホテルの前オーナーが経営難を苦に首を吊ったという曰くがございまして……お客様? どうかされましたか? お客様!?」
私はほうほうの体で荷物を掻き集め、幽霊ホテルを逃げ出した――その幽霊を売りにしているのだとは、後々噂で聞いたのだけれど。
もの好きも居るものだ……二度と行くもんか!
―了―
このカテゴリーも久し振り★
取り敢えずこんなホテルはやだ★
西洋では歴史のある館をホテルに改装してる所なんかもあるそうで、そういう所はやはり……
流石に全ての部屋で惨劇が……という訳には行かないでしょうが、かなりの確率でご覧頂けます(笑)
何かそういう人を惹き付けるものでもあるのかも?
尚、未だ若干の空き室がございますので……永久に棲み付かれる方もどうぞ、当ホテルへ……。
とか言ったら、笑えん(--;)
あ~、某お嬢様ご来日の際の御用達にはぴったりかも!?
死者を見世物にするなとか、そもそも自殺者に懇々と説教しそう(苦笑)
ってか、バイク乗りなら野宿せんかいっつ!!
(真冬の北国ならアレだけどさ)
ロンドン時間旅行昨夜終わったけど、ピカラット使いすぎて、もう一度いくはめに…
なので、引き続きコメントがズレますが、ごめんね
最近ゲームとかチェックしてなかったから、CM見てやっと解ったわ~(笑)
難しかったっすか?