〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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(承前の為、以下省略)
いつからであったろう?――いつ、などとこの長い生命には然程気にする事でもないのかも知れないけれど――普段眠らない筈の我が『夢』など見る様になったのは。
いつからであったろう?――いつ、などとこの長い生命には然程気にする事でもないのかも知れないけれど――普段眠らない筈の我が『夢』など見る様になったのは。
だが、この『夢』は、果たして我の記憶から生じたものなのか?
青年、少年、老人……珍しく三日続けて浮かんではきたが、他にも老婆、少女、赤子……様々な記憶が我の中には在る。それぞれが何時のものなのかは、我にも判らないが。
だが、それ等全てが我自身の記憶である筈など、無い。
我は動く事も叶わぬ木なのだから。只、人が記憶をその脳に刻む様に、我が身に刻まれた傷の一つ一つに、その主の記憶が刻み込まれていく様だ。
だが……我が自覚も無しに得ているのはその記憶だけなのであろうか? 我の前では生命が喪われていく。猫、少年、老人……ああ、他にも、他にも……。
それは我の腹に虚ろが生まれた頃からであったろうか……?
足繁く通っては我に話し掛けていた老人が斃れ、我にその記憶が宿った。
徐々に拡大していく虚ろはいつしか子供の遊び場となっていた。だが……かくれんぼをしていたあの子が神隠し……? 我に刻まれた名は未だ残っている。忠司、と。
だが、あの子が我を離れていく足音――その振動を感じた覚えは無い。感じたのは、彼が隠れる為に我に近付き……洞ではなく、上に隠れようと我に登った事。そして……。
墜落したその子を最後に見た子供は、それを止めなかった自分の責任だと自らを責めた。幼い心故の混乱だったろうが、それは彼の心的外傷となり……彼はその重さから逃れる為に、我に記憶を預けたのか。彼の中では『忠司』の『死』は無く、只、居なくなっていた。神隠しはその為の方便か。
かつて我を雨の宿とし、ヒトに拾われて行った猫は年老いて、再び我の根元に戻り来たと思えば、何処で拾ったものか、小さな仔猫を咥えていた。あの日も雨……お前は我の根元を頼りにと来たのか。仔猫は翌日お前を探しに来たヒトが再び拾って行った。お前の遺骸と共に。だから安心するといい――お前の最期の記憶は仔猫の心配だったからね。
それにしても――虚ろは未だ拡大を続けている。我自身をも飲み込みそうな程に。
これは本当に我の一部なのか? それとも……我自身が見る悪夢なのか?
また、ヒトが死に、我に記憶が宿るのか?
そして、虚ろが成長を続ける……そういう事なのか?
まぁ、いい。もう直ぐ夢も見ない眠りの時期――冬がやって来る。
晩秋の風に、変色した我の葉が舞った。
―了―
四夜連続企画(?)終了~☆
時系列的には三夜→二夜→一夜になりますな。
そう言えば、草木に電極を取り付けて「切っちゃうぞ」みたいな刺激を与えると、反応するって本当かしらん。記事は読んだ事あるけど。
木は夢を見るか?――謎ですねぇ。
青年、少年、老人……珍しく三日続けて浮かんではきたが、他にも老婆、少女、赤子……様々な記憶が我の中には在る。それぞれが何時のものなのかは、我にも判らないが。
だが、それ等全てが我自身の記憶である筈など、無い。
我は動く事も叶わぬ木なのだから。只、人が記憶をその脳に刻む様に、我が身に刻まれた傷の一つ一つに、その主の記憶が刻み込まれていく様だ。
だが……我が自覚も無しに得ているのはその記憶だけなのであろうか? 我の前では生命が喪われていく。猫、少年、老人……ああ、他にも、他にも……。
それは我の腹に虚ろが生まれた頃からであったろうか……?
足繁く通っては我に話し掛けていた老人が斃れ、我にその記憶が宿った。
徐々に拡大していく虚ろはいつしか子供の遊び場となっていた。だが……かくれんぼをしていたあの子が神隠し……? 我に刻まれた名は未だ残っている。忠司、と。
だが、あの子が我を離れていく足音――その振動を感じた覚えは無い。感じたのは、彼が隠れる為に我に近付き……洞ではなく、上に隠れようと我に登った事。そして……。
墜落したその子を最後に見た子供は、それを止めなかった自分の責任だと自らを責めた。幼い心故の混乱だったろうが、それは彼の心的外傷となり……彼はその重さから逃れる為に、我に記憶を預けたのか。彼の中では『忠司』の『死』は無く、只、居なくなっていた。神隠しはその為の方便か。
かつて我を雨の宿とし、ヒトに拾われて行った猫は年老いて、再び我の根元に戻り来たと思えば、何処で拾ったものか、小さな仔猫を咥えていた。あの日も雨……お前は我の根元を頼りにと来たのか。仔猫は翌日お前を探しに来たヒトが再び拾って行った。お前の遺骸と共に。だから安心するといい――お前の最期の記憶は仔猫の心配だったからね。
それにしても――虚ろは未だ拡大を続けている。我自身をも飲み込みそうな程に。
これは本当に我の一部なのか? それとも……我自身が見る悪夢なのか?
また、ヒトが死に、我に記憶が宿るのか?
そして、虚ろが成長を続ける……そういう事なのか?
まぁ、いい。もう直ぐ夢も見ない眠りの時期――冬がやって来る。
晩秋の風に、変色した我の葉が舞った。
―了―
四夜連続企画(?)終了~☆
時系列的には三夜→二夜→一夜になりますな。
そう言えば、草木に電極を取り付けて「切っちゃうぞ」みたいな刺激を与えると、反応するって本当かしらん。記事は読んだ事あるけど。
木は夢を見るか?――謎ですねぇ。
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~旦⊂(_^ )有難う
夜霧の言葉は謎だらけっす。
「怪しい楡棗ー」……メインキャラ迄怪しんでくれるな……(--;)
「怪しい楡棗ー」……メインキャラ迄怪しんでくれるな……(--;)
おつかれさま♪
最終話、おつかれさまでございました(^o^)丿
やっと話がつながりました!
お馬鹿ですみません。
「切っちゃうぞ」みたいな刺激を与えると、反応するって話。
根拠はわかんないけど、ほんとだと思います。
だって、挨拶してかわいがって育てると、
草木はすくすく育つってよくいいますもん。
それに、ちょっとかわいそうだけど、
食肉用の豚さんや牛さん、車に乗せられると
最後に涙を流すそうです。
だから(?)、私は電池切れの電卓にも
お礼を言ってから捨てるようにしてます(^^ゞ
やっと話がつながりました!
お馬鹿ですみません。
「切っちゃうぞ」みたいな刺激を与えると、反応するって話。
根拠はわかんないけど、ほんとだと思います。
だって、挨拶してかわいがって育てると、
草木はすくすく育つってよくいいますもん。
それに、ちょっとかわいそうだけど、
食肉用の豚さんや牛さん、車に乗せられると
最後に涙を流すそうです。
だから(?)、私は電池切れの電卓にも
お礼を言ってから捨てるようにしてます(^^ゞ
Re:おつかれさま♪
有難うございます(^^)
草木も動物との共生関係を――蜜壺の深さを変える等して――意外と積極的に保っているという話も聞きますからねぇ。やはり森羅万象、某か在るのかも知れません。
電池切れの電卓……moonさん、優しいなぁ
草木も動物との共生関係を――蜜壺の深さを変える等して――意外と積極的に保っているという話も聞きますからねぇ。やはり森羅万象、某か在るのかも知れません。
電池切れの電卓……moonさん、優しいなぁ
Re:な~る。
歳じゃのぅ(笑)
お互い様ですか(^^;)
夢って滅多に見ないけど、色は……あんまり付いてた覚えが無いなぁ。一部だけ付いてたり。
ポチ有難うございます
お互い様ですか(^^;)
夢って滅多に見ないけど、色は……あんまり付いてた覚えが無いなぁ。一部だけ付いてたり。
ポチ有難うございます
無題
こんばんは。最後まで一気に読んじゃいました。
夢って不思議な力がありますよね。夢と老木。言われてみれば、なにか近いパワーみたいなのがあったり。
もの書きにとって、夢っていいネタになりますが、うまく使われていると思います。(くだらないモノ書いている私が、エラそうに…失礼しました)
他のも読ませていただきます。お疲れ様でした。
夢って不思議な力がありますよね。夢と老木。言われてみれば、なにか近いパワーみたいなのがあったり。
もの書きにとって、夢っていいネタになりますが、うまく使われていると思います。(くだらないモノ書いている私が、エラそうに…失礼しました)
他のも読ませていただきます。お疲れ様でした。
Re:無題
有難うございます(^^)
同じくもの書きさんから言われると照れますにゃ
夢とか年経りた石木とか、何かしら不思議なものには惹かれますねぇ。
同じくもの書きさんから言われると照れますにゃ
夢とか年経りた石木とか、何かしら不思議なものには惹かれますねぇ。
Re:無題
ファブイ有難うございます(^^)
一作目を書いて、何と無く続けたくなったのよね~。
一作目を書いて、何と無く続けたくなったのよね~。