〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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会場にかけつけると、もうなつかしい顔がそろっていた。久しぶりの同窓会だ。
「よう、久し振りだなぁ。佐藤。お前、全然変わらないな、直ぐに判ったぞ?」手近な所に居た丸顔の男に、私は話し掛けた。余り丸い丸いと言うと怒り出すから口には出さないが、本当に昔と変わらない、盆の様な丸顔だ。
佐藤はその丸い顔にきょとんとした表情を浮かべた後、取り繕う様に笑顔を作った。
「あ、ああ……久し振り。えっと、もうどの位会ってなかったっけ?」
「前の同窓会からは十年。大学出てからは二十年か……。それでも意外と皆面影が残ってるもんだなぁ。直ぐに誰だか判るぞ」
「そ、そうだな」どこか歯切れ悪くも佐藤は頷き、人集りの中に仲のよかった友人を見付けて、じゃあ後でとそそくさと行ってしまう。
何だ、愛想のない奴だなぁ。
見れば合流した友人と一緒にこちらを窺う様に振り返り、何事か頭を振っている。
もしかして、私が誰か判らないのか? 二人共?――そんなに変わってしまっただろうか? 私は。
憮然としつつも踵を返し、他の友人に声を掛ける事にした。
「山田じゃないか、久し振りだな」次に声を掛けたのは痩せぎすのっぽの山田。相変わらず中年太りなどとは縁のなさそうな体型で羨ましい限りだ。
「あ……ああ、久し振りだね」佐藤と、同じ様な反応。もしかしてこいつも私の事が判らないのか? 薄情な奴等だ。
それでもこんな席で親しげに声を掛けて来るのだから同窓生の誰かだろうと、必死に思い出そうとしてくれてはいるらしく、視線が落ち付かなげに右往左往している。こういった場合――私も含めてだが――正面切って「どなたでしたっけ?」とは訊き辛く、当たり障りのない会話でお茶を濁しつつ、その間に思い出そうと足掻いてしまうものだ。
問題はそれでも答えが出なかった時、どうするかなのだが……。
「おーい、鈴木、お前もこっち来ないか?」山田は手近に居た友人を会話に引き擦り込んだ。もしかしたら鈴木が思い出して私の名前でも呼んでくれるか知れないと期待している様だった。名前さえ出れば思い出せるんだとばかりに。
が。
「おお、山田、久し振り」親しげに片手を上げてやって来た大柄な鈴木は、しかし私を見るとふと、疑問符を含んだ視線を山田に投げ掛けた。誰だっけ? そう言っている様な視線を。
そうなると山田も焦る。自分が訊きたくて呼んだのに、先に尋ねられてしまうとは。
「俺ってそんなに印象薄かったのか……?」かつての口調に戻して、私は嘆息した。「俺だよ、俺。渡辺!」
「渡……!」二人は揃って、声を詰まらせた。そして何故だか、怒り出した。
私を窓際迄引き寄せると、窓外の暗さの為に鏡と化した硝子を見るようにと言った。
訳が解らない儘、その言に従った私は、そこに異様な取り合わせを見た。
痩せぎすのっぽと大柄――二人の中年男に挟まれる様にしてそこに居たのは、明らかに二十歳そこそこの青年。然もそれは……。
そうして私は思い出した。この同窓会直前に事故に遭った事を。
「渡辺は未だ意識不明で、然も息子さんが行方不明になって大変なんだよ。ふざけてんじゃねぇよ!」
ここに留まって、この身体がその息子で、自分の意識が知らず知らずの間に乗っ取ってしまったのだと説明するべきか、どうやれば意識が戻れるのかは解らないが取り急ぎ自分の身体の元へ戻るべきか、私は悩んだのだった。
私の為に、涙目で見知らぬ青年に説教してくれている友人達の為にも。
―了―
どんだけ行きたかったんだ、同窓会(--;)
佐藤はその丸い顔にきょとんとした表情を浮かべた後、取り繕う様に笑顔を作った。
「あ、ああ……久し振り。えっと、もうどの位会ってなかったっけ?」
「前の同窓会からは十年。大学出てからは二十年か……。それでも意外と皆面影が残ってるもんだなぁ。直ぐに誰だか判るぞ」
「そ、そうだな」どこか歯切れ悪くも佐藤は頷き、人集りの中に仲のよかった友人を見付けて、じゃあ後でとそそくさと行ってしまう。
何だ、愛想のない奴だなぁ。
見れば合流した友人と一緒にこちらを窺う様に振り返り、何事か頭を振っている。
もしかして、私が誰か判らないのか? 二人共?――そんなに変わってしまっただろうか? 私は。
憮然としつつも踵を返し、他の友人に声を掛ける事にした。
「山田じゃないか、久し振りだな」次に声を掛けたのは痩せぎすのっぽの山田。相変わらず中年太りなどとは縁のなさそうな体型で羨ましい限りだ。
「あ……ああ、久し振りだね」佐藤と、同じ様な反応。もしかしてこいつも私の事が判らないのか? 薄情な奴等だ。
それでもこんな席で親しげに声を掛けて来るのだから同窓生の誰かだろうと、必死に思い出そうとしてくれてはいるらしく、視線が落ち付かなげに右往左往している。こういった場合――私も含めてだが――正面切って「どなたでしたっけ?」とは訊き辛く、当たり障りのない会話でお茶を濁しつつ、その間に思い出そうと足掻いてしまうものだ。
問題はそれでも答えが出なかった時、どうするかなのだが……。
「おーい、鈴木、お前もこっち来ないか?」山田は手近に居た友人を会話に引き擦り込んだ。もしかしたら鈴木が思い出して私の名前でも呼んでくれるか知れないと期待している様だった。名前さえ出れば思い出せるんだとばかりに。
が。
「おお、山田、久し振り」親しげに片手を上げてやって来た大柄な鈴木は、しかし私を見るとふと、疑問符を含んだ視線を山田に投げ掛けた。誰だっけ? そう言っている様な視線を。
そうなると山田も焦る。自分が訊きたくて呼んだのに、先に尋ねられてしまうとは。
「俺ってそんなに印象薄かったのか……?」かつての口調に戻して、私は嘆息した。「俺だよ、俺。渡辺!」
「渡……!」二人は揃って、声を詰まらせた。そして何故だか、怒り出した。
私を窓際迄引き寄せると、窓外の暗さの為に鏡と化した硝子を見るようにと言った。
訳が解らない儘、その言に従った私は、そこに異様な取り合わせを見た。
痩せぎすのっぽと大柄――二人の中年男に挟まれる様にしてそこに居たのは、明らかに二十歳そこそこの青年。然もそれは……。
そうして私は思い出した。この同窓会直前に事故に遭った事を。
「渡辺は未だ意識不明で、然も息子さんが行方不明になって大変なんだよ。ふざけてんじゃねぇよ!」
ここに留まって、この身体がその息子で、自分の意識が知らず知らずの間に乗っ取ってしまったのだと説明するべきか、どうやれば意識が戻れるのかは解らないが取り急ぎ自分の身体の元へ戻るべきか、私は悩んだのだった。
私の為に、涙目で見知らぬ青年に説教してくれている友人達の為にも。
―了―
どんだけ行きたかったんだ、同窓会(--;)
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Re:こんばんは
生霊がお祓いされたらどうなるんだろう……?(・・;)
Re:こんばんは♪
同窓会、私はどうでもいいと言うより出る気も無いですが(笑)
お父ちゃん、どんだけ~(^^;)
お父ちゃん、どんだけ~(^^;)
Re:こんにちは
や、事故に遭ったのは同窓会の前位。その前とかは普通に行ってたんだけど(^^;)
果たして無事に戻れるのか!?
果たして無事に戻れるのか!?
こんにちは♪
あれまぁ~!息子の体に入り込んでしまったの?
元の自分の体への戻り方が分からない!
これは大変だ!
あまり長く体から離れていると本当に戻れなく
なってしまうらしいものね、大丈夫かな?
焼き場で突然戻れたりしたら最悪だよねぇ・・・
幽体離脱の練習していて、フトそんな事考えたらゾゾ~としてやめちゃった!
元の自分の体への戻り方が分からない!
これは大変だ!
あまり長く体から離れていると本当に戻れなく
なってしまうらしいものね、大丈夫かな?
焼き場で突然戻れたりしたら最悪だよねぇ・・・
幽体離脱の練習していて、フトそんな事考えたらゾゾ~としてやめちゃった!
Re:こんにちは♪
クーピーさん、練習してたんですか、幽体離脱の(^^;)
確かに戻れなくなったらって考えたら、怖いですよね~。
確かに戻れなくなったらって考えたら、怖いですよね~。
Re:無題
「おい、渡辺来てるぞ。事故に遭ったんじゃなかったのか?」
「え? 嘘だろ? 俺、昨日見舞いに行ったばかりで、とてもじゃないけど今日来れる状態じゃあ……」
そして同窓会の会場は混乱の極みに陥ったのだった。
なんて事になりますよ~!?(^^;)
「え? 嘘だろ? 俺、昨日見舞いに行ったばかりで、とてもじゃないけど今日来れる状態じゃあ……」
そして同窓会の会場は混乱の極みに陥ったのだった。
なんて事になりますよ~!?(^^;)