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それで夜霧が出ない内に、このカメリアが写真に注意さえすれば、発覚など多分しないですよと申し上げました。
私なら遠目には人間と変わりありませんもの。
それに、こんな人里離れた化け物屋敷になど、誰が来るのでしょう――そう思っておりましたのに……。
早朝から良いお天気で、まさに洗濯や館内の掃除には打って付け。まぁ、屋敷の御主人や、此処に住まう方々の殆どには、この日光も忌まわしいものですけれど。
だからこそ、私の様な生き人形でもお役に立てるのですけれどね。
それにしても御主人様達、吸血族の方々の煌びやかな服飾品の多さは、私達人形以上ですわね。そして惰眠を貪るのは人間以上。そういう種族だから仕方ないのでしょうけれど。
注意を要する織物のクリーニングを終え、ベッドのシーツやテーブルクロスや、広いバルコニーが埋まりそうな程の洗濯物を広げていると、門前の森の一角が、がさりと音を立てて割れました。
慌てて振り向いた私の眼に映ったのは、一瞬恐れた通り、動物ではなくて、人。未だ若い――二十代位だろうか?――男性でした。小さなナップザック一つという軽装で、見た所一人。この深い森に迷い込んだのか、他の目的があったのか。
ともあれ、その方は緑深い森に突如現れた屋敷に、途惑っておられる様でした。無理もない所でしょうね。此処から一番近くの町でも十キロは離れ、然も彼等が頼りとする車が入れる道はその内の半分で途切れている。
そうすると、彼はどうやって、此処迄?――私は少し、興味が湧きました。
しかし、如何に名工の手で生じた生き人形とは言え、余りに近寄ってはばれてしまうでしょう。だからこそ、後で検分出来る写真を撮られたくもないのですが。
バルコニーの上から、私は声を掛けました。
「何処からいらしたのです? 此処は私有地ですよ?」
「こ、これは失礼しました」呆気に取られながらも、彼は答えました。「少々……道に迷ってしまいまして……もし、宜しければ町に出る道をお教え願えませんでしょうか?」
迷子とはまた困りましたわ――私は此処から出る事は殆どありませんし、御主人様方は……夜の外出に道など使用なさいませんもの。少なくとも、人の道は。
私が言葉に詰まっておりますと、屋敷の奥からお嬢様の声が聞こえました。連れて来るように、と。私は思わず、迷い人の行く先を思って、身を竦めました。
玄関の大扉を最低限開けて、私は彼を招じ入れました。広く暗い屋敷内に、彼は明かりを捜している風でしたが、私は蝋燭を一本、用意しただけ。私の姿をはっきり見られても困りますし、またお嬢様にしても明るいのは好まれませんから。
案内した先はお嬢様の書斎。古い本の匂いと、何やら薬の匂いに溢れた、部屋。扉正面の窓は真昼だと言うのに夜を思わせる程の、色濃く厚い硝子で蒼く彩られております。
お嬢様はその窓の前の机に、席を占めておられました。
「その方? 迷子とおっしゃるのは」人間にすれば二十歳になったかどうかでしょうか、実際の年齢は……極秘事項とされております。お嬢様は席を立ち、机を回り込んで彼の傍らに立たれました。亜麻色の髪が揺れ、碧の眼が彼の眼を捉えました。見ている私の方がどきどきする様な――人形に心臓などありませんのにね――蠱惑的な瞳です。
が、お嬢様は直ぐに興味を失くした様に視線を外されました。
「カメリア、この方、適当に外に放り出しておいて」素っ気無く、そんな事をおっしゃいます。
「え、でも、この方、町に帰る道が……」元より、お嬢様がそれを教える気など無い事は解っておりましたが、私は口を挟みました。「この儘お帰しして、宜しいのですか?」含みを込めて、そう尋ねても、お嬢様は肩を竦めるだけ。
しかし更に驚いたのは、彼があっさりと退いた事。ご迷惑をお掛けしました、と呟く様に言って踵を返されました。
私は慌ててお見送り。彼が敷地から遠ざかるのを気配で確認してから、お嬢様の元に戻りました。
「宜しかったのですか? お嬢様」彼を招き入れた時にはてっきり彼の血が目当てと思ったのですが……。二十代位の男性、見目も然程悪くなく、お嬢様のお眼鏡に適うかとも。
「カメリア、この様な所に参る者には先ず、二種類、居る。本当に迷い込む者と、何か目当てがあって来る者」席に着いて、お嬢様は仰せになられました。「迷い込むとすればこの森にキャンプに来たか……それにしても此処迄来ようと思えば、それなりの装備はするもの。あんな軽装で行き帰り出来る程甘くはない。そして目当てがあったとすれば……この森には精々我等が屋敷の他、無い。森の奥深くに化け物屋敷がある、位の噂は広まっておろうからな」
「では、此処を探して……? それでは尚更、あの儘帰して宜しかったのですか?」
「……彼の眼の中には、死の願望が見えた」事も無げにお嬢様はおっしゃいますが、私には全く解りませんでした。種族としての特殊能力なのか、年の功……いえ、経験の差なのか。
「それは、詰まり……此処がこういう屋敷と知っていながら、死を望んで来られたという事ですか?」それなら荷物がやけに少ないのも頷けます。片道で充分なのですもの。
「死を望んで、でも自分で命を絶つのは怖くて……そんな所だ」冷たい眼をして、お嬢様はおっしゃいます。「あんな血、不味くて飲めるか」
そうでした。お嬢様は美食家でした。
「何より、死の味の血など、同属の血を飲むも同じ。そんな真似が出来るか」
しかし、どの途あの儘では、森に迷い、この樹海の中で斃れ、朽ち果てるしかないのでしょうね。あの方。
私がそう思っておりますと、ワインを頼まれたお嬢様がぽつりと、漏らされました。
「あんなのにこの近所で死なれてはおかしなものが集まって来るやも知れん。狼に町への道迄追い込むように命じておいてやったわ。因みに、目を見た時に此処の事は忘れるようにきっちり暗示を掛けておいた」
ふっと心が軽くなった様な気がして、私は――洗濯物の事をすっかり忘れました。勿論、やり直しです。
明日も、クリーニングで一日、潰れそうでございます。
―了―
何の話になったんだか(笑)
オカルトコメディ? 取り敢えずカメリアさん、頑張れ(笑)
未だ寒いから気を付けてね!
多分彼等の基準で判断しているので、一般的ないい、悪いとは掛け離れてるかも(笑)
吸血鬼と言えば、鏡に映らないとか、水の流れる所を渡れないとか、銀の十字架に弱い、日光に弱い、にんにくに弱い……弱っ!
あ、でも蝙蝠やら狼やら眷属が居るなぁ。
なのに結局嫌いじゃないんだよな~(笑)
「悪い夜霧ー!」って言ってた。少しは自覚あるみたい(笑)
因みにカメリア(Camellia)はラテン語で椿の属名らしい。
(@▽@;)
しかも生き人形まで!すごいサービス満点♪
これも続くんでしょう?
ρ( ^o^)b_♪ランラン♪楽しみ~♪
今回はお嬢様だけの顔見世なのネ!
となにやら催促しているのであった。(笑)
お嬢様のお名前募集してみたり(するんかい)
やっぱり物の怪、愉しいんですよね~♪
>実際の年齢は……極秘事項とされております。
うわ、どっかの誰かさんと一緒だと思いました。
でもそんなちゃちゃを入れたらいけないと思って読み進むと、オカルトコメディ? 怖いけどおもしろくて楽しかったです。
それから申し訳ないのですが、私の作品「ロマンスの神様」は削除させてもらいました。せっかくコメントをいただいたのにごめんなさい。
女性の年齢はやっぱり極秘事項ですよね!(^^)
どんどんちゃちゃ入れちゃって下さい(笑)
コメントの件は気にしないで下さいな。後書きも読んで知った上で、面白かったって言いたかっただけですから♪
この作品、すごく良かったです~♪
吸血鬼・大好き~♪この独特の世界観がたまらないですね(^^)
「あんな血、不味くて飲めるか」
ってお嬢様の意気込み、素敵です!
シリーズ化希望です(^^♪
吸血鬼、お好きですか? 美形揃いやもんねぇ。あの種族♪
そしてお嬢様は美食家なのであった(笑)
![](/emoji/D/284.gif)
太陽光の下に平気で居る吸血鬼って、それだけで何故かコメディっぽい気がする(笑)
またまた、オトコマエなお嬢様だー!(笑)
この吸血鬼さんご一家の邸宅で、さつじんじけんとか起こったら……このお嬢様が探偵役?カメリアさんがワトソンかな?(どこまでもミステリ変換…)
いずれにしても、またシリーズ増えましたねv(断言/笑)
本物の吸血鬼宅で殺人事件か……面白そう(にやり)
殺「人」じゃないのもあったりして……。
私は吸血鬼ではないぞ?
面白い~お嬢様は美食家かぁ~
美味しい血って・・・・・どんなんやろ?^^
私も、貧血やし~きっとドロドロやから、不味いと思うわ~カメリアさん!お嬢様に伝えといてね~♪
ブログサービスにもよるみたいだけど(スパム対策きつい所だと不可みたい)「ペットの投稿」設定で何週間に一度の目安とか、ペットの投稿の際のメアド(小文字で好きな文字列で可)を設定しておくと、するみたい。
相変わらず意味不明だけど(笑)
偶に外人さん書きたかったのでカメリアさん(^^;)
狼さんはヴァンパイアの眷属なので♪ 使い魔みたいなもん?
そういやみすぼらしい格好の吸血鬼はあまり出てこないね。。。
死の味の血ってすごい表現!なんかわかるけど。
カメリアさん掃除してくれるんだ。。。ウチにも欲しいな(笑)
カメリアさん、うちも欲しいです(笑)
うるさいんでしょうね。
いや、たぶん、推測ですよお。
献血した血なんてまずくて飲めないで
すよね?
時々にんにくの匂いするし。
漢数字の「十」を「拾」に統一するように
運動しましょうか?
見つめるとなんかめまいがしますよね?
カメリアさんもお嬢様も人(?)がいいのか悪いのか(笑)
そしてちょっぴりうっかりな生き人形☆
物の怪だから行ったらモアイネコ家保安係のモミジさんのパンチ食らうかも☆
で、でも、本文中にあった脱字は気付かなかったね?(爆)
もう直したよ~ん♪