〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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がばっ! 一瞬、何処で寝ていたのか解らなくなって跳ね起きる。
ここ数日、毎朝の事だ。
それと言うのも、一人暮らしのマンションだと言うのに、目覚まし時計が鳴り出したと同時に「おはよう! すばるお姉ちゃん!」と言う男の子の声で起こされるからだ。
元々は町立鹿嶋記念図書館に繋ぎ止められていた、創立者の息子でもある鹿嶋良介君――の幽霊。どこぞの中途半端な霊媒師が祓う心算で解き放ってくれた為、今や、旧知の場所や、私を通じて行った場所には瞬時に移動出来るらしい。
だからって幽霊のモーニング・コールって……。
お陰で寝過ごす心配は無くなったけどさ。
「どうかした?」私がベッドで胡坐をかいていると、屈託の無い表情で訊いてくる。七歳という年齢で亡くなったその儘の姿。どういう訳か私にしか見えないらしく、それだけにやっとまともに話が出来る相手を見付けて、嬉しいらしい。
「なぁんでもない」私は頭を振って、一人分の朝食を作る為に、キッチンに立った。幾らこうしてはっきり見えてはいても、食事を一緒にって訳には行かないのよね。
「良介君ってさ、夜の間はどうしてるの?」トーストにピーナツバターを塗りながら、私は尋ねた。度々訪ねて来るようになった良介君だけど、夜の間は図書館に帰って行く。小さいながらも女性の一人暮らしに気を遣ってるのかとも思ったけど、それだけでもないみたい。「ずっと図書館? 寂しくない?」
「今迄ずっとそうだったし」事も無げに、良介君は笑った。「最近は偶に、昔通ってた小学校や公園に行ったり、山名さんの所にも行ってみたり……。後は図書館内を見回ってる」
真夜中の図書館を歩き回る人影――そんな七不思議をいつだったか小学生達が集めていたなぁ。見える人が見たらそんな状態かも。真夜中の図書館に人は居ないけど。
「今の所、変な本は無い?」冗談交じりに、私は訊いてみる。珈琲の香りがすっきりと意識を覚醒させてくれる。なのに朝食時の話し相手が何故幽霊なんだろう、私。
類は友を呼ぶのか、他の図書館には良介君みたいな子が居ないから判らないだけなのか、あの図書館では時折、妙な物が見付かる。開けてはいけない本だったり、いつの間にか移動する人形だったり……。
「今の所は無いみたい。でも、山名さんが出張してるんだ」
「山名さんが出張するとどうなの?」
「山名さんの出張って言うとね、時々寄贈される古い本を見に行く事なんだ。だから古本が増える――新刊よりよっぽど何か憑いて来る可能性高いよね」そう言って笑う。
いや、笑われても困る。私は何故か山名さんからは「見付ける人」として見られている様だけど、別に霊能者でも何でもないんだから。現に良介君以外の霊なんて、見た事無いし。まぁ、良介君が感じた事、見付けた物を知らせる事は出来るけど。
「じゃあ、出張から帰って来てからが、問題なのね」軽く溜め息をついて、私は言った。「何も無いといいけど。それにしてもどうして、本に憑いて来るのかしらね?」
「それは……」目を丸くして、良介君は言った。あるいは彼には自明の事と映ったのかも知れない。「本は思いの塊だもん。書いた人や、読んだ人や、関わってきた人の。だから、古い本程、それが降り積もってる」
私の脳裏で、海底のマリンスノーの様に、茫洋としたものがゆっくりゆっくりと降り積もって行く。一冊の本に向かって。そして本はそれに埋もれる事も無く、それを吸収し続けるのだ
「なるほどね」私は頷いた。
そして時計を指差す良介君に急かされて、慌てて朝食を平らげ、支度に取り掛かる。時間はフレキシブルだけど、遅れる訳には行かない。
「行ってらっしゃい」マンションのオートロックの外玄関迄出て、良介君は私を送り出してくれた。まぁ、この子にオートロックも何も無いんだけど。
防犯カメラにおかしく映らない程度に振り向いて、私は行って来ますと合図した。
と、数歩離れた所で、良介君のこんな声が聞こえて、私は思わず振り返った。
「あ。おはようございます!」
擦れ違いで入って行った人も居なかったし、ちょっと待っても出て来る人も居ない。第一、良介君が私以外の生きている人に声を掛ける事なんて……。
それとも、私の目には見えない……?
類は友を呼ぶ――私はこの諺が真実か否か、確かめるべきか無視するべきか、今、迷っている。
―了―
幽霊のモーニング・コール(笑)
絶対目が醒めると思う。あ。山名さん最近出番無いなぁ。
「今迄ずっとそうだったし」事も無げに、良介君は笑った。「最近は偶に、昔通ってた小学校や公園に行ったり、山名さんの所にも行ってみたり……。後は図書館内を見回ってる」
真夜中の図書館を歩き回る人影――そんな七不思議をいつだったか小学生達が集めていたなぁ。見える人が見たらそんな状態かも。真夜中の図書館に人は居ないけど。
「今の所、変な本は無い?」冗談交じりに、私は訊いてみる。珈琲の香りがすっきりと意識を覚醒させてくれる。なのに朝食時の話し相手が何故幽霊なんだろう、私。
類は友を呼ぶのか、他の図書館には良介君みたいな子が居ないから判らないだけなのか、あの図書館では時折、妙な物が見付かる。開けてはいけない本だったり、いつの間にか移動する人形だったり……。
「今の所は無いみたい。でも、山名さんが出張してるんだ」
「山名さんが出張するとどうなの?」
「山名さんの出張って言うとね、時々寄贈される古い本を見に行く事なんだ。だから古本が増える――新刊よりよっぽど何か憑いて来る可能性高いよね」そう言って笑う。
いや、笑われても困る。私は何故か山名さんからは「見付ける人」として見られている様だけど、別に霊能者でも何でもないんだから。現に良介君以外の霊なんて、見た事無いし。まぁ、良介君が感じた事、見付けた物を知らせる事は出来るけど。
「じゃあ、出張から帰って来てからが、問題なのね」軽く溜め息をついて、私は言った。「何も無いといいけど。それにしてもどうして、本に憑いて来るのかしらね?」
「それは……」目を丸くして、良介君は言った。あるいは彼には自明の事と映ったのかも知れない。「本は思いの塊だもん。書いた人や、読んだ人や、関わってきた人の。だから、古い本程、それが降り積もってる」
私の脳裏で、海底のマリンスノーの様に、茫洋としたものがゆっくりゆっくりと降り積もって行く。一冊の本に向かって。そして本はそれに埋もれる事も無く、それを吸収し続けるのだ
「なるほどね」私は頷いた。
そして時計を指差す良介君に急かされて、慌てて朝食を平らげ、支度に取り掛かる。時間はフレキシブルだけど、遅れる訳には行かない。
「行ってらっしゃい」マンションのオートロックの外玄関迄出て、良介君は私を送り出してくれた。まぁ、この子にオートロックも何も無いんだけど。
防犯カメラにおかしく映らない程度に振り向いて、私は行って来ますと合図した。
と、数歩離れた所で、良介君のこんな声が聞こえて、私は思わず振り返った。
「あ。おはようございます!」
擦れ違いで入って行った人も居なかったし、ちょっと待っても出て来る人も居ない。第一、良介君が私以外の生きている人に声を掛ける事なんて……。
それとも、私の目には見えない……?
類は友を呼ぶ――私はこの諺が真実か否か、確かめるべきか無視するべきか、今、迷っている。
―了―
幽霊のモーニング・コール(笑)
絶対目が醒めると思う。あ。山名さん最近出番無いなぁ。
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無題
こんばんわ(^o^)丿
可愛い目覚まし君ですね(^^)(幽霊だけど!)
成仏しちゃったら、すばるちゃん、さみしいだろうなぁ・・・ペットロスならぬゴーストロス^^;
ひょっとして新しい幽霊さんの出現!?
可愛い目覚まし君ですね(^^)(幽霊だけど!)
成仏しちゃったら、すばるちゃん、さみしいだろうなぁ・・・ペットロスならぬゴーストロス^^;
ひょっとして新しい幽霊さんの出現!?
Re:無題
朝っぱらから出る幽霊ってのもどうなんだか(苦笑)
そしてやっぱり馴染み過ぎなすばるさん(笑)
案外灯台下暗しだったりして……。
そしてやっぱり馴染み過ぎなすばるさん(笑)
案外灯台下暗しだったりして……。
想い
書いた人等の想いが本に宿るなら、さしずめ家に有る本達は【早く読んで~】という思いを現在の所、宿してるんだろうな…。
積ん読本達ゴメンよ~~~(T-T)
それにしても、幽霊の目覚まし良いな。
幽霊目覚まし係を、一人暮らしの人間用にレンタルしたら、かなり儲かりそうだ(笑)
幸い良介君以外にも幽霊いるみたいだしね(笑)
それで、幽霊のバイト代は遺族に送るの。
駄目かなぁ?
積ん読本達ゴメンよ~~~(T-T)
それにしても、幽霊の目覚まし良いな。
幽霊目覚まし係を、一人暮らしの人間用にレンタルしたら、かなり儲かりそうだ(笑)
幸い良介君以外にも幽霊いるみたいだしね(笑)
それで、幽霊のバイト代は遺族に送るの。
駄目かなぁ?
Re:想い
うう~、積読の霊が~(苦笑)
幽霊目覚まし(笑)
募集要項:余り過激な姿で現れる方はご遠慮下さい。二度寝(気絶とも言う)の可能性があります。
尚、面接は御利用予定者と行って頂きます。見えない、聞こえないでは出来ませんので。
……とか?(笑)
幽霊目覚まし(笑)
募集要項:余り過激な姿で現れる方はご遠慮下さい。二度寝(気絶とも言う)の可能性があります。
尚、面接は御利用予定者と行って頂きます。見えない、聞こえないでは出来ませんので。
……とか?(笑)
Re:無題
清々しいっすか?(笑)
今の所、すばるさんに見えてるのは良介君だけです。こういう世界に馴染んできたので、この後、どうなるか解りませんが(苦笑)
今の所、すばるさんに見えてるのは良介君だけです。こういう世界に馴染んできたので、この後、どうなるか解りませんが(苦笑)
Re:効果抜群!
此処にも幽霊目覚ましレンタル希望者が!?(笑)
流石にキースケ君がひくかも(^^;)
にゃんこ、霊感強そうだし♪
流石にキースケ君がひくかも(^^;)
にゃんこ、霊感強そうだし♪
うおお!
やっと落ち着いてお邪魔しに来たら、良介君だった!いえそれはいいんやけど、何やら別の世界のお友達の存在が…!なんて、も少ししたらベッドに入るのに、これは夢に見そうです(笑)
すばるさんの波長と良介君の波長がぴったり合ってるんだと私は思ってるんですが、ひょっとしてすばるさんの方が電波を発信してるような感じもしてきましたよ(笑)
本の想い、積読の想い…ごめんごめんごめん~(汗)そりゃバベルも崩れますわね…。
すばるさんの波長と良介君の波長がぴったり合ってるんだと私は思ってるんですが、ひょっとしてすばるさんの方が電波を発信してるような感じもしてきましたよ(笑)
本の想い、積読の想い…ごめんごめんごめん~(汗)そりゃバベルも崩れますわね…。
Re:うおお!
積読バベルが圧し掛かって来る~(笑)
類友……実はすばるさんが元!?(爆)
類友……実はすばるさんが元!?(爆)
おはよう~
携帯の目覚ましで飛び起きる私には
良助君のモーニングコールは要らないな。
良助君に起こしてもらうと
「あ、見間違い!気のせい気のせい、夢、夢」と思い、二度寝すること間違いないな・・・
山名さんもそのうち見えるんじゃないですか?
見えてほしいなぁ。
山名さんなら信頼できるでしょ~。
良助君のモーニングコールは要らないな。
良助君に起こしてもらうと
「あ、見間違い!気のせい気のせい、夢、夢」と思い、二度寝すること間違いないな・・・
山名さんもそのうち見えるんじゃないですか?
見えてほしいなぁ。
山名さんなら信頼できるでしょ~。
Re:おはよう~
二度寝しちゃいますか(^^;)
起きる迄騒いじゃいますよ? 良介君(笑)
山名さん、良介君としては一番信頼出来るおじさんなんだけど……。波長かな?
起きる迄騒いじゃいますよ? 良介君(笑)
山名さん、良介君としては一番信頼出来るおじさんなんだけど……。波長かな?
無題
むむ、すばるさんの知らないうちに、良介君が幽霊仲間を部屋に迎え入れてるよお!
しかし、すばるさん、化粧とか全く気にしてないなあ。すっぴんで十分きれいなんだ。て、ことは作者も?(ゴマすってみました…笑)
しかし、すばるさん、化粧とか全く気にしてないなあ。すっぴんで十分きれいなんだ。て、ことは作者も?(ゴマすってみました…笑)
Re:無題
寧ろ最初から居たのに気付かなかっただけだったりして(笑)
はっはっは。作者は綺麗じゃないけど化粧に無頓着なのが露見してしまいましたな(笑)
寧ろ銀河さん、何故そう、女性心理に詳しいの!?(^^;)
はっはっは。作者は綺麗じゃないけど化粧に無頓着なのが露見してしまいましたな(笑)
寧ろ銀河さん、何故そう、女性心理に詳しいの!?(^^;)
こんにちは♪
おぉ!なんと朝から幽霊に起こされる!
まぁ~良介君なら良いかな?
でも一瞬ギョとするかな?
この調子だと良介君は、今後もドンドン進化?していくのかな?
朝の挨拶の相手は?
ん~~楽しみだなぁ♪
まぁ~良介君なら良いかな?
でも一瞬ギョとするかな?
この調子だと良介君は、今後もドンドン進化?していくのかな?
朝の挨拶の相手は?
ん~~楽しみだなぁ♪
Re:こんにちは♪
目ぇ醒めますよ~(^^)
もしくは二度寝するか(笑)
朝の挨拶の相手……誰でしょうね~。取り敢えず礼儀正しい子です、良介君(笑)
もしくは二度寝するか(笑)
朝の挨拶の相手……誰でしょうね~。取り敢えず礼儀正しい子です、良介君(笑)
こんばんは
今回は何の事件も怒らなかったのね。
次の展開への準備かぁ?
本格的に話が広がっていく予感が。
この上、幽霊が増えていってどうするんだぁ。^^;
段々、図書館の話から、幽霊一家の話になっていったりして。
何処へ向かっているんだぁ~~~~~。^^;
次の展開への準備かぁ?
本格的に話が広がっていく予感が。
この上、幽霊が増えていってどうするんだぁ。^^;
段々、図書館の話から、幽霊一家の話になっていったりして。
何処へ向かっているんだぁ~~~~~。^^;
めっけたぁ!返し(笑)
何の事件も怒らなかったのね→起こらなかったのね(笑)
夜霧に「ない図書館」って言われた~☆
意味不明の様でよく読んでる!?(爆)
そろそろ山名さんの話に持って行かないとね~^^;
夜霧に「ない図書館」って言われた~☆
意味不明の様でよく読んでる!?(爆)
そろそろ山名さんの話に持って行かないとね~^^;
無題
こんばんは~☆
良介くん、すてきな朝の演出ですねっvv
山名さんの持ち帰る寄贈本のエピソード、きっと何かあるに違いないとちょっと期待してる私(すばるちゃんには嬉しくなかったりして;)。
類は友を呼ぶかぁ……ワタシは無視できないタイプですね…ははは…。
良介くん、すてきな朝の演出ですねっvv
山名さんの持ち帰る寄贈本のエピソード、きっと何かあるに違いないとちょっと期待してる私(すばるちゃんには嬉しくなかったりして;)。
類は友を呼ぶかぁ……ワタシは無視できないタイプですね…ははは…。
Re:無題
古本と言えば何か憑いている……私の勝手な思い込み(笑)
さぁて、何にしようかな?^^
さぁて、何にしようかな?^^
Re:こんばんはっ
佐内さん、朝良介君に見送られ。
仕事上がりに図書館でかくれんぼ。
帰ったら「お帰りなさい」と迎えられ……あれ?(笑)
と、取り敢えず夜中は図書館に帰ってるけど……誰か居る?(爆)
仕事上がりに図書館でかくれんぼ。
帰ったら「お帰りなさい」と迎えられ……あれ?(笑)
と、取り敢えず夜中は図書館に帰ってるけど……誰か居る?(爆)
こんばんわ★
あの…
どうやったら、良介君からモーニングコール、してもらえるんでしょうね?
ぜひぜひ元気よく、モアイネコの耳元で
「おはよう♪」
と言ってほしいものです(^_^;)
ところで、誰におはよう、言ったのかな?
どうやったら、良介君からモーニングコール、してもらえるんでしょうね?
ぜひぜひ元気よく、モアイネコの耳元で
「おはよう♪」
と言ってほしいものです(^_^;)
ところで、誰におはよう、言ったのかな?
Re:こんばんわ★
朝から元気のいい幽霊……(^_^;)
それ以前にチビズ☆が起こしてくれるのでは♪ 猫さんの朝は早そうな気がする(汗)
ふふふ、誰かなぁ?
それ以前にチビズ☆が起こしてくれるのでは♪ 猫さんの朝は早そうな気がする(汗)
ふふふ、誰かなぁ?