〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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これは、お客様方のお好みも心得ていく必要がありますね――私、カメリアは溜め息を一つついて、氷の塊を抱えて部屋にお戻りになられる、ちょっとシロクマに似た雪男様を見送りました。この、どちらかと言えば寒冷地にある屋敷でさえ、暑いなんて……。
まぁ、雪男様がおられるのとは正反対に延びた屋敷の翼にはサラマンダー様もお泊りになられてますから、いつもより若干、温度は高いかも知れませんが。
人間達の世界では何でもクリスマス――聖夜だと各地で祝われるこの夜、旦那様のお屋敷には各地から妖の方々が集まって来られました。
勿論、目的はクリスマスパーティーなどではなく――避難、でした。
まぁ、雪男様がおられるのとは正反対に延びた屋敷の翼にはサラマンダー様もお泊りになられてますから、いつもより若干、温度は高いかも知れませんが。
人間達の世界では何でもクリスマス――聖夜だと各地で祝われるこの夜、旦那様のお屋敷には各地から妖の方々が集まって来られました。
勿論、目的はクリスマスパーティーなどではなく――避難、でした。
元は古の神々であり、後から台頭して来た宗教に追われて零落し、人々の信仰の衰退と共に力も失った――そう主張する精霊の方々からすれば、クリスマスに各地で開かれるミサやそこで歌われる賛美歌など、聞くに堪えない、との事でございました。勿論、お嬢様方も十字架を掲げた人間の一団になど、関わりたくはないでしょう。
それに近年ではライトアップも盛んに行なわれ、身の置き場の無い妖も多いのだとか。
だからと言って、此処に集まられても困るのですが……。あ、いえ、お客様に文句など申し上げられませんが。それに旦那様方がお許しになられているのですから。
只、問題なのはそれぞれ個性的な方々だという事でございます。
極度の低温を好まれる方、逆に高温を望まれる方、あるいは極度の乾燥、極度の湿度、極度の暗闇……。
私、生き人形でよかったかも知れません。そんなに生息条件は厳しくございませんもの。
それは兎も角、お客様方には不自由の無い様にお世話致しませんと。私はそれぞれのお部屋をお伺いしてみる事に致しました。
屋敷の西翼、先程雪男様が戻って行かれた部屋の近辺には、やはり氷雪系の精霊、妖の方々がお泊りでした。あ、お部屋の扉につららが……。
先程の方はご満足頂けた様ですので、お隣の氷の精霊様の所へ。
「如何ですか? 何かお困りの事等、ございませんでしょうか?」私がお伺い致しますと、彼女は透き通った氷細工の様なお姿で、優美に首を傾げてから、頭を振られました。
「特に無いわ。有難う。ご面倒をお掛けするわね」お姿に似ず、温かいお言葉を賜ってしまいました。私は恐縮しながら、部屋を辞しました。
そのお隣はウンディーネ様、言わずと知れた水の精霊です。
私が先程の様にお伺い致しますと、彼女はちょっと眉を顰めて仰いました。
「ちょっとねぇ、寒過ぎるって言うかぁ。じっとしてると凍っちゃいそうなんだけどぉ」隣からの冷気で、と視線が仰せです。
「東翼のサラマンダー様のお隣のお部屋でしたら、未だ空いておりますが……」
「蒸発しちゃうわよぉ」そう思って東西に分けたのですが、やはり駄目でしたか。
「解りました、蒸発しない程度の火をお持ちしましょう。サラマンダー様なら温度調節も自在とお聞きしましたから」
「お願いねぇ」
途中の方々は特にこれと言ったご注文も無く、私は東翼へと足を伸ばしました。
サラマンダー様のお部屋を目指しつつも、私はお客様のお部屋を訪ねます。
闇の精霊シェイド様のお部屋では灯を離してから覗いたお部屋は何も見えず、直後に覗き込んだウィル・オー・ウィスプ様の部屋では目が眩みと紆余曲折ありましたが、サラマンダー様の二つ隣の部屋でお休みのケットシー様とすっかり懐いたらしいフリューゲルの寝顔に癒されたりもしつつ――端の部屋に辿り着きました。
「如何ですか? 何かお困りの事等、ございませんでしょうか?」先ずはそう一言。
すると火蜥蜴の姿で床に這っていたサラマンダー様は、口から先の割れた舌と炎をちろりと出しながら、仰せになられました。
「此処は寒過ぎないか?」
私は思わず天を仰いでしまいました。
「申し訳ないのですが、これ以上温度を上げられますと……」
「ああ、解っている。氷どもが煩いのだろう?」肩を竦める代わりに、舌をぺろり。「そもそもこの部屋では思い切りこの身を燃やす事も出来ぬしな」
と――。
「ならば私の部屋に来るか?」私の後ろから飛んだ声は、お嬢様でした。「但し、応接室の方だが」
そこなら思い切り燃やしてもいいのかと、嬉々としてサラマンダー様はお嬢様に付いて行かれました。
あ、勿論その前に適温の炎は頂きましたよ?
それにしても……お嬢様の応接室には大量の蔵書もあった筈。大丈夫なのでしょうか?
私はウンディーネ様に炎を届け、早々にお嬢様達の様子を窺いに戻りました。
「今日は冷えるからな」私の顔を見てそう仰って笑うお嬢様のお部屋では、暖炉の中にサラマンダー様……。
確かに思い切り燃えて、ご機嫌麗しげですが……。
「適材適所という事だよ」お嬢様は適度に距離を取り、悠々と読書をなさっておいでです。
と、サラマンダー様が部屋から移られた事に気付かれたのでしょう、ケットシー様がフリューゲルを伴っておいでになられました。寒い寒い、と暖を求める様は、やはり、猫。
その隣に浮いていたフリューゲルはふと何かに気付いた様に窓辺へ。釣られて見ると――。
「雪、ですね」やや色の付いたガラスを通しても判る程の、雪。
「冷える筈だ」お嬢様は微笑み、ページを一枚、捲りました。「人間ならホワイトクリスマスとか言って喜ぶんだろうが……。ま、皆集まる、そんな日があってもいいか」
「さようでございますね」調節は大変ですが。
私は夜空を舞い踊る雪を眺めて、ふっと暖かいものを感じておりました。そして同時に――明日の雪掻き、サラマンダー様が手伝って下さらないかしら、と思ったのは秘密でございます。
―了―
「も心得ていく」をどうしようかと(笑)
ちょっと変わったクリスマス☆
それに近年ではライトアップも盛んに行なわれ、身の置き場の無い妖も多いのだとか。
だからと言って、此処に集まられても困るのですが……。あ、いえ、お客様に文句など申し上げられませんが。それに旦那様方がお許しになられているのですから。
只、問題なのはそれぞれ個性的な方々だという事でございます。
極度の低温を好まれる方、逆に高温を望まれる方、あるいは極度の乾燥、極度の湿度、極度の暗闇……。
私、生き人形でよかったかも知れません。そんなに生息条件は厳しくございませんもの。
それは兎も角、お客様方には不自由の無い様にお世話致しませんと。私はそれぞれのお部屋をお伺いしてみる事に致しました。
屋敷の西翼、先程雪男様が戻って行かれた部屋の近辺には、やはり氷雪系の精霊、妖の方々がお泊りでした。あ、お部屋の扉につららが……。
先程の方はご満足頂けた様ですので、お隣の氷の精霊様の所へ。
「如何ですか? 何かお困りの事等、ございませんでしょうか?」私がお伺い致しますと、彼女は透き通った氷細工の様なお姿で、優美に首を傾げてから、頭を振られました。
「特に無いわ。有難う。ご面倒をお掛けするわね」お姿に似ず、温かいお言葉を賜ってしまいました。私は恐縮しながら、部屋を辞しました。
そのお隣はウンディーネ様、言わずと知れた水の精霊です。
私が先程の様にお伺い致しますと、彼女はちょっと眉を顰めて仰いました。
「ちょっとねぇ、寒過ぎるって言うかぁ。じっとしてると凍っちゃいそうなんだけどぉ」隣からの冷気で、と視線が仰せです。
「東翼のサラマンダー様のお隣のお部屋でしたら、未だ空いておりますが……」
「蒸発しちゃうわよぉ」そう思って東西に分けたのですが、やはり駄目でしたか。
「解りました、蒸発しない程度の火をお持ちしましょう。サラマンダー様なら温度調節も自在とお聞きしましたから」
「お願いねぇ」
途中の方々は特にこれと言ったご注文も無く、私は東翼へと足を伸ばしました。
サラマンダー様のお部屋を目指しつつも、私はお客様のお部屋を訪ねます。
闇の精霊シェイド様のお部屋では灯を離してから覗いたお部屋は何も見えず、直後に覗き込んだウィル・オー・ウィスプ様の部屋では目が眩みと紆余曲折ありましたが、サラマンダー様の二つ隣の部屋でお休みのケットシー様とすっかり懐いたらしいフリューゲルの寝顔に癒されたりもしつつ――端の部屋に辿り着きました。
「如何ですか? 何かお困りの事等、ございませんでしょうか?」先ずはそう一言。
すると火蜥蜴の姿で床に這っていたサラマンダー様は、口から先の割れた舌と炎をちろりと出しながら、仰せになられました。
「此処は寒過ぎないか?」
私は思わず天を仰いでしまいました。
「申し訳ないのですが、これ以上温度を上げられますと……」
「ああ、解っている。氷どもが煩いのだろう?」肩を竦める代わりに、舌をぺろり。「そもそもこの部屋では思い切りこの身を燃やす事も出来ぬしな」
と――。
「ならば私の部屋に来るか?」私の後ろから飛んだ声は、お嬢様でした。「但し、応接室の方だが」
そこなら思い切り燃やしてもいいのかと、嬉々としてサラマンダー様はお嬢様に付いて行かれました。
あ、勿論その前に適温の炎は頂きましたよ?
それにしても……お嬢様の応接室には大量の蔵書もあった筈。大丈夫なのでしょうか?
私はウンディーネ様に炎を届け、早々にお嬢様達の様子を窺いに戻りました。
「今日は冷えるからな」私の顔を見てそう仰って笑うお嬢様のお部屋では、暖炉の中にサラマンダー様……。
確かに思い切り燃えて、ご機嫌麗しげですが……。
「適材適所という事だよ」お嬢様は適度に距離を取り、悠々と読書をなさっておいでです。
と、サラマンダー様が部屋から移られた事に気付かれたのでしょう、ケットシー様がフリューゲルを伴っておいでになられました。寒い寒い、と暖を求める様は、やはり、猫。
その隣に浮いていたフリューゲルはふと何かに気付いた様に窓辺へ。釣られて見ると――。
「雪、ですね」やや色の付いたガラスを通しても判る程の、雪。
「冷える筈だ」お嬢様は微笑み、ページを一枚、捲りました。「人間ならホワイトクリスマスとか言って喜ぶんだろうが……。ま、皆集まる、そんな日があってもいいか」
「さようでございますね」調節は大変ですが。
私は夜空を舞い踊る雪を眺めて、ふっと暖かいものを感じておりました。そして同時に――明日の雪掻き、サラマンダー様が手伝って下さらないかしら、と思ったのは秘密でございます。
―了―
「も心得ていく」をどうしようかと(笑)
ちょっと変わったクリスマス☆
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Re:メリークリスマス
は~い、姐さんもお疲れ様(^^)ノ
カメリアさん、個性的なお客様達に振り回されてます(笑)
更にそのお客様を振り回すお嬢様……(^^;)
あ、あっちのも読みましたよー。何か懐かしいです、あのメンバー♪
カメリアさん、個性的なお客様達に振り回されてます(笑)
更にそのお客様を振り回すお嬢様……(^^;)
あ、あっちのも読みましたよー。何か懐かしいです、あのメンバー♪
無題
どもども!
また随分と多種多様なメンバーが集まったんですね~w
サラマンダーと雪男、一緒の部屋にしたら適温になったんじゃない?(笑)
あっ!家の雪かきにもサラマンダー様に手伝ってもらえたら…妖の者と魂の契約をしても構わないんだけど♪
また随分と多種多様なメンバーが集まったんですね~w
サラマンダーと雪男、一緒の部屋にしたら適温になったんじゃない?(笑)
あっ!家の雪かきにもサラマンダー様に手伝ってもらえたら…妖の者と魂の契約をしても構わないんだけど♪
Re:無題
魂売りますか(笑)
でも、確かに大変ですよね、雪掻き。これからのシーズン、ギックリやらないように、気を付けて頑張って下さいね!
サラマンダーと雪男、一緒にしたら適温の「お湯」が……(爆)
でも、確かに大変ですよね、雪掻き。これからのシーズン、ギックリやらないように、気を付けて頑張って下さいね!
サラマンダーと雪男、一緒にしたら適温の「お湯」が……(爆)
Re:無題
一家に一匹サラマンダーベビー(笑)
でも、丈夫な暖炉が必須かも(^^;)
でも、丈夫な暖炉が必須かも(^^;)
あいたたた…
巽さん、おはようございます。
ううう、私の背中に矢が刺さっております……自覚なかったけど私もカメリアさんをふりまわすワガママ妖の仲間かもしれない……申し訳ない。
生き人形のカメリアさんは食べないかもですが、お詫びの気持ちにシフォンケーキ作ります……ぺこり。
雪男さんとはなかなかお友達になれないような気もしますが、サラマンダー様の方は、気持ちよさそう…うっとり見惚れるかも…燃え盛る炎の中かー♪ほんまに適材適所、ですね(笑)
ううう、私の背中に矢が刺さっております……自覚なかったけど私もカメリアさんをふりまわすワガママ妖の仲間かもしれない……申し訳ない。
生き人形のカメリアさんは食べないかもですが、お詫びの気持ちにシフォンケーキ作ります……ぺこり。
雪男さんとはなかなかお友達になれないような気もしますが、サラマンダー様の方は、気持ちよさそう…うっとり見惚れるかも…燃え盛る炎の中かー♪ほんまに適材適所、ですね(笑)
Re:あいたたた…
雪男さんか氷の精霊さんとは夏場限定でお付き合いしたいかも(笑)
みけねこさんの場合、寧ろ女王様のワガママに振り回されてる様な……(失礼)
みけねこさんの場合、寧ろ女王様のワガママに振り回されてる様な……(失礼)
Re:おはよう

やっぱり携帯で長文はきついかも(^^;)
本当、冷え込んできましたね。風邪にはご注意を~☆
本当、冷え込んできましたね。風邪にはご注意を~☆
Re:こんにちは♪
意図せず妖達のパーティー会場と化してたりして(笑)
カメリアさん、大忙し☆
カメリアさん、大忙し☆
こんばんは
ちょっとした、いや、大掛かりな仮装パーティーみたいだなぁ~。(笑)
吸血鬼にとっては、クリスマスは最も忌まわしい日かもしれんが。(笑)
ところで屋敷の翼って何?
あと
>旦那様が他が
なんか変じゃない?
なんて書こうとしたの?
「旦那様方が」かな?
吸血鬼にとっては、クリスマスは最も忌まわしい日かもしれんが。(笑)
ところで屋敷の翼って何?
あと
>旦那様が他が
なんか変じゃない?
なんて書こうとしたの?
「旦那様方が」かな?
Re:こんばんは
屋敷の翼ってこう玄関ホールがあって、屋敷の中心部分から左右に延びてる部分の事です。棟って書いた方が解り易かったかな?
旦那様が他が……うげげ☆直します(汗)
旦那様が他が……うげげ☆直します(汗)