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何気なく車のバックミラーを見て、ふと、思った。
今夜は自棄に車が少ないな、と。より具体的に言えば、後続車が。
いつものこの曜日、この時間なら、ヘッドライトが眩しい位に距離を詰めた車が列をなしているものだが、今夜はバックミラーが、暗い。反対車線はそれなりの車の流れなのだが。
片側だけでも車列が無いと、夜の幹線道路ってこんなに暗いものだったっけ?
まぁ、いい。後ろからせっつかれて走るのは好きじゃない。法廷速度を少し下回る位の速度で、私は車を走らせた。
と――不意にけたたましいクラクションの音が耳を突き刺し、慌てふためいた私はその音の出所も判らない儘、飛び上がった。
慌てて周囲を確認するけれど、反対車線はごく正常に流れているし、交差点でもないから横から車が来る事もない。
けど、後ろは――そう思ってバックミラーを見遣った私は目を瞠った。
眩しい程のヘッドライトの列! 私ののろのろ運転に業を煮やした様に皓々と連なって、ミラー越しに私の目を射る。
ついさっき迄、真っ暗だったのに……! 動転しながらも、私はアクセルを踏み込んだ。
ごめんなさい、ごめんなさい、と何度も口の中で呟きながら。
帰宅して、人心地ついた頃、同僚から電話があった。
そうして言うには、どうやら同じ方面に帰宅する彼女は、私の車の直ぐ後ろを走っていたらしい。
でも、一体いつの間に近付いていたのだろう? 後続車も一杯……。
それを訊く前に、彼女が逆に尋ねてきた。
「貴女の車の後ろ、黒い影みたいなのが蟠ってたんだけど……大丈夫だった? 何か怪しかったんで、咄嗟にクラクション鳴らしてみたら、さっと居なくなっちゃったんだけど」
「……」
その影の所為で後続車のライトが見えなかっただけだったのかと納得しながらも、そんな得体の知れないものを車に付けた儘帰宅せずに済んだ事を、私は同僚に感謝したのだった。
取り敢えず……いつも以上に暗い道には、ご用心。
―了―
や、何か今日は自棄に車が少なかったのさ~。