〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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早く……こっちにおいで!――その呼び声に幼い少女は激しく頭を振った。
その面は周囲の炎の照り返しを受け、赤く恐怖の色に染まっている。長い髪の先からは蛋白質の焦げる不快な臭いがし始めていた。裾の長い寝巻きにも、今しも火が燃え移りそうだ。
早く……そこは危険だ!――少女は只怯えた目をして、頭を振る。
部屋の壁は焼け落ち始め、お気に入りのぬいぐるみ達も黒く染まり、煙を上げている。少女の周りには炎が溢れ、熱が小さな身を苛んだ。
それでも少女は呼び声に対して嫌々と首を振る。
早く……ここしか逃れる道は無いよ?――それでも。
火に閉ざされたドアを背にして、炎の壁が作る道の先、ベランダを見詰めて。そしてその先の夜空背にした少年を見詰めて。
「嫌だよ!」炎の燃え盛る音と煙に遮られながらも、少女は叫んだ。「ここ、十八階だもん……! そこから落ちたら……。それに、お兄ちゃん、誰!?」
ちっ!――舌打ちを最後に声は止み、辺りは嘘の様に静まり返った。
否、嘘だったのだ。彼女を取り巻く炎も、焼け落ちた壁も、煙を上げるぬいぐるみも、彼女を安全な地へと導く声も。
絨毯の上にへたり込んだ少女の頬を、冷たい夜気が撫でた。
唯一の本物は開いた窓。彼女が眠りに就く前に母親が戸締りを確かめた筈の、ベランダへと続く窓。
それは獲物を死地へと導く罠――。
―了―
短め~。
その面は周囲の炎の照り返しを受け、赤く恐怖の色に染まっている。長い髪の先からは蛋白質の焦げる不快な臭いがし始めていた。裾の長い寝巻きにも、今しも火が燃え移りそうだ。
早く……そこは危険だ!――少女は只怯えた目をして、頭を振る。
部屋の壁は焼け落ち始め、お気に入りのぬいぐるみ達も黒く染まり、煙を上げている。少女の周りには炎が溢れ、熱が小さな身を苛んだ。
それでも少女は呼び声に対して嫌々と首を振る。
早く……ここしか逃れる道は無いよ?――それでも。
火に閉ざされたドアを背にして、炎の壁が作る道の先、ベランダを見詰めて。そしてその先の夜空背にした少年を見詰めて。
「嫌だよ!」炎の燃え盛る音と煙に遮られながらも、少女は叫んだ。「ここ、十八階だもん……! そこから落ちたら……。それに、お兄ちゃん、誰!?」
ちっ!――舌打ちを最後に声は止み、辺りは嘘の様に静まり返った。
否、嘘だったのだ。彼女を取り巻く炎も、焼け落ちた壁も、煙を上げるぬいぐるみも、彼女を安全な地へと導く声も。
絨毯の上にへたり込んだ少女の頬を、冷たい夜気が撫でた。
唯一の本物は開いた窓。彼女が眠りに就く前に母親が戸締りを確かめた筈の、ベランダへと続く窓。
それは獲物を死地へと導く罠――。
―了―
短め~。
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Re:無題
自慢していいっすか(笑)
ゾクッとしてくれれば私としても万々歳\(^▽^)/
ゾクッとしてくれれば私としても万々歳\(^▽^)/
Re:こんばんは!
死神その2(^^;)
怪しい声にも知らないお兄ちゃんにも付いて行っちゃ駄目ですよ~?
怪しい声にも知らないお兄ちゃんにも付いて行っちゃ駄目ですよ~?
Re:冬猫
寧ろ悪霊?(((゜Д゜;)))
Re:こんにちは♪
悪霊に近いかも。死神みたいな明確な目的無いし……。
だから、次は何処に現れるか……?( ̄ー ̄)
だから、次は何処に現れるか……?( ̄ー ̄)
Re:こんにちはっ
実際高層階の火事でも、パニックを起こして飛び降り……なんて事もありますね(>_<)
危険な時程冷静さを!
危険な時程冷静さを!
Re:こんにちは
冷静でなかったら今頃……きゃー(>_<)
Re:こんにちは
悪魔か悪霊か……。彼等の罠に掛かりませんように……。