〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「此処には来ないでって言わなかった?」頭上の窓からの言葉に、僕はそっと微笑を返した。
「でも、君に会いたかったんだ」素直な言葉が、口に上る。
困った顔で、それでも彼女はぎこちない笑みを返した。周囲を気にしながらも、ベランダから身を乗り出す様にして僕に囁き掛ける。
「早く帰った方がいいわ。家の者が見付けたら……。私は貴方を失いたくはない」
解っている。彼女以外の者に気取られたら終わりだ。僕は多分、この世から葬られる。
それでも会いたいと思ってしまうのは――彼女だからなのか。
月明かりに浮かぶ、古びた石造りの屋敷に他者の影は無い。広い屋敷の殆どの窓は鎧戸が閉ざされ、長らく開けられた事も無いのか蔦が這い回っている。
それでも、何ものかの気配を、僕と彼女は感じていた。
だから、見詰め合いながらも僕達は焼け付く様な緊張感に曝されていた。
見付かる訳には行かない――彼女以外の者に。
ここは妖の屋敷の一つ、そして彼女は魅魔――魅了した者の生気を吸う魔物なのだから。そして屋敷に棲むのもまた同族。
それを知っていながらも、僕は窓辺に佇む彼女に惹かれた。それが彼女の力の成せる業なのかどうか、最早僕には解らないし、どうでもよかった。只、彼女は僕の生気を摂る事もなく、同族に僕が見付かる事を避ける為、此処には来るなと言った。
それを種族だの能力だのを無視した、二人の本当の想いだと自負するのは、僕の思い上がりだろうか?
勿論、僕だって彼女以外の者には見付かりたくはない――彼女以外の餌にはなりたくはない。
「でも、本当にもう、此処には来ないで」声を潜めつつも、彼女は言った。「でないと私……毎晩夢に見るのよ。貴方を……」俯いて、言葉を途切れさせる。
「構わないさ」僕は言った。「君になら……」
彼女は哀しげに僕を見た。
「夢に見るの。既に死者である貴方の死の気を吸って斃れる様を」
僕が……死者?――そうか、そうだったのか……。
生気を吸う彼女達にとって、死気は毒の様なものなのだろう。だから同属にも吸わせたくはないし、自らが吸えば――どの途僕との別れとなる。
只一つの救いは、それが解っていながらも彼女が僕の気を望んでいるという事か。
僕は寂しさの籠もった微笑を一つ残して、踵を返した。
自らが眠る、冷たい墓地へと。
―了―
某お嬢様の屋敷とは別であります。はい。
「でも、君に会いたかったんだ」素直な言葉が、口に上る。
困った顔で、それでも彼女はぎこちない笑みを返した。周囲を気にしながらも、ベランダから身を乗り出す様にして僕に囁き掛ける。
「早く帰った方がいいわ。家の者が見付けたら……。私は貴方を失いたくはない」
解っている。彼女以外の者に気取られたら終わりだ。僕は多分、この世から葬られる。
それでも会いたいと思ってしまうのは――彼女だからなのか。
月明かりに浮かぶ、古びた石造りの屋敷に他者の影は無い。広い屋敷の殆どの窓は鎧戸が閉ざされ、長らく開けられた事も無いのか蔦が這い回っている。
それでも、何ものかの気配を、僕と彼女は感じていた。
だから、見詰め合いながらも僕達は焼け付く様な緊張感に曝されていた。
見付かる訳には行かない――彼女以外の者に。
ここは妖の屋敷の一つ、そして彼女は魅魔――魅了した者の生気を吸う魔物なのだから。そして屋敷に棲むのもまた同族。
それを知っていながらも、僕は窓辺に佇む彼女に惹かれた。それが彼女の力の成せる業なのかどうか、最早僕には解らないし、どうでもよかった。只、彼女は僕の生気を摂る事もなく、同族に僕が見付かる事を避ける為、此処には来るなと言った。
それを種族だの能力だのを無視した、二人の本当の想いだと自負するのは、僕の思い上がりだろうか?
勿論、僕だって彼女以外の者には見付かりたくはない――彼女以外の餌にはなりたくはない。
「でも、本当にもう、此処には来ないで」声を潜めつつも、彼女は言った。「でないと私……毎晩夢に見るのよ。貴方を……」俯いて、言葉を途切れさせる。
「構わないさ」僕は言った。「君になら……」
彼女は哀しげに僕を見た。
「夢に見るの。既に死者である貴方の死の気を吸って斃れる様を」
僕が……死者?――そうか、そうだったのか……。
生気を吸う彼女達にとって、死気は毒の様なものなのだろう。だから同属にも吸わせたくはないし、自らが吸えば――どの途僕との別れとなる。
只一つの救いは、それが解っていながらも彼女が僕の気を望んでいるという事か。
僕は寂しさの籠もった微笑を一つ残して、踵を返した。
自らが眠る、冷たい墓地へと。
―了―
某お嬢様の屋敷とは別であります。はい。
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Re:こんばんは!
死者の生気は吸えませんよねぇ(^^;)
と言うか、生気無いし(苦笑)
と言うか、生気無いし(苦笑)
無題
どもども!
最初はロミオとジュリエット風だな~って思ってたんだけど、やっぱり妖の者を出さないと気がすまないんですね~(爆)
たまには純愛だけでってのもいいんじゃない?
えっ、鳥肌が立つから止めてくれってか?(笑)
最初はロミオとジュリエット風だな~って思ってたんだけど、やっぱり妖の者を出さないと気がすまないんですね~(爆)
たまには純愛だけでってのもいいんじゃない?
えっ、鳥肌が立つから止めてくれってか?(笑)
Re:無題
あはは、ばれました?(笑)
純愛系……嫌いではないけど、自分で書くと思うと関西風に言うてさぶいぼが(爆)
純愛系……嫌いではないけど、自分で書くと思うと関西風に言うてさぶいぼが(爆)
Re:こんばんは
悲恋……なのかな、一応(^^;)
魅魔も彼の事は心憎からず、しかしその生気は吸えず……。
魅魔も彼の事は心憎からず、しかしその生気は吸えず……。
Re:こんにちは♪
妖に弱点は付き物です(きっぱり)
彼女は負の者だけに、生(正)の気を求め、それで安定するのだけれど、負に負は反発し……って電子か!?(^^;)
彼女は負の者だけに、生(正)の気を求め、それで安定するのだけれど、負に負は反発し……って電子か!?(^^;)
Re:こんにちはっ♪
妖の屋敷はあちらこちらにある様で……( ̄ー ̄)
Re:こんばんは
きっと恋は盲目という奴でしょう(笑)
自分さえも見えなさ過ぎ(爆)
自分さえも見えなさ過ぎ(爆)
Re:おはようございます♪
そうね、相手は選んだ方がいいかもね(笑)
彼女も困る(^^;)
彼女も困る(^^;)