〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「何見てるの? ミオちゃん」深夜、三毛の愛猫を振り返って、私は口元を綻ばせた。
ミオはリビングに腰を落ち着けた私の直ぐ背後で、一点をじーっと凝視している。時折ひげを震わせる以外は微動だにしないその様(さま)はよく出来た彫刻の様。三年前に拾った時点で彼女はもう大人だったけれど、意外にも人懐っこい猫に育ってくれた。
けれどもその視線の先を見遣っても、彼女の興味を引きそうな物は無く、只白い壁紙が広がるばかり。
時折ある事だ。猫飼い仲間の間でもよく聞く、飼い主には見えない何かを見詰める、猫。こんな時には話し掛けても一向に目線をくれない。
実際には見ているのではなく、人間の可聴域を超えた音を聞く事に集中しているのだとも言うけれど、本当の所はどうなの? ミオ?
やっぱり耳さえ動かさず、ミオは壁を見詰めた儘。長い尻尾もぴくりともしない。
そんなに真剣に見られると気になるじゃない――私は釣られる様に染み一つ無い壁紙を見た。
ミオはリビングに腰を落ち着けた私の直ぐ背後で、一点をじーっと凝視している。時折ひげを震わせる以外は微動だにしないその様(さま)はよく出来た彫刻の様。三年前に拾った時点で彼女はもう大人だったけれど、意外にも人懐っこい猫に育ってくれた。
けれどもその視線の先を見遣っても、彼女の興味を引きそうな物は無く、只白い壁紙が広がるばかり。
時折ある事だ。猫飼い仲間の間でもよく聞く、飼い主には見えない何かを見詰める、猫。こんな時には話し掛けても一向に目線をくれない。
実際には見ているのではなく、人間の可聴域を超えた音を聞く事に集中しているのだとも言うけれど、本当の所はどうなの? ミオ?
やっぱり耳さえ動かさず、ミオは壁を見詰めた儘。長い尻尾もぴくりともしない。
そんなに真剣に見られると気になるじゃない――私は釣られる様に染み一つ無い壁紙を見た。
「何も無いじゃない? ミオちゃん?」そう言って視線を外そうとした一瞬、その視界の端に何かが映った様な気がして、私は慌てて視線を戻す。けれど正面から見た壁にはやはり何も無く、見間違えそうな物も無かった。女の独り暮らしにしても色気が無さ過ぎると友達にからかわれる程、私の部屋には余計な物が無い。「……錯覚?」
ミオは相変わらず。そんなに白い壁を見続けて、目が疲れない?
と、ミオの耳が低く、寝た。鼻先に皺が寄り、目が細められ……徐々に姿勢が低くなる。何かに怯えてる? あるいは怒ってる?――けど何に?
私の視線は吸い込まれる様に白い壁に向かった。
白い壁は、僅かの間に黒く染まり、然もその奥で何かが蠢き、ざわめいていた。
「何……!?」私は腰を浮かし、思わずミオを抱えて逃げようとした。けれどミオの身体は私の伸ばした手を擦り抜け、彼女は鋭い牙と爪を剥き出しにして、壁へと駆け出した。「ミオ! 行かないで!」
壁を目前にして立ち止まったミオは、身体を精一杯大きく見せようと毛を逆立て、密林に住む遠縁もかくやという迫力を帯びた形相で、威嚇音を立てた。
と、丸でそれに怯えたかの様に、一旦壁のざわめきが大きくなり、それから潮が引く様に、怪現象は静まって行った。壁も徐々に元の白さを取り戻していく。
「……何があったの? ミオ」私は茫然と、愛猫に呟き掛けた。
ミオは私を振り返って、甘える様に一声、鳴いた。足に擦り寄り、目を細めてごろごろと喉を鳴らす。その姿には先程見せた野生の血など、微塵も感じられず、私は今さっき起こった出来事が夢ではなかったのかと、思わずにはいられなかった。
翌朝、隣のおばさんから聞いた話では、近所に長年放置されていた空き家が一軒、昨日遂に解体されたと言う。出社していた私が知らなかった事だけど、その家の地下室からはそこを塒(ねぐら)とする鼠が大量に発見され、蠢くその群れを忌んだ業者によって駆除されたそうだ。おばさんから聞いたその様は、丸であの黒い壁が蠢く様子に似ていて――私はそれらが行き場を探していたのかと、何と無く納得すると同時に、ぞっとした。
もしミオが居なかったら、あれらはあの壁に居付いたのだろうか?
冗談じゃない、と私は想像を振り払った。そしてうちの小さな猛獣に、おやつをサービスしたのは言う迄もない。
―了―
猫話が続く~。暑いから(?)
ミオは相変わらず。そんなに白い壁を見続けて、目が疲れない?
と、ミオの耳が低く、寝た。鼻先に皺が寄り、目が細められ……徐々に姿勢が低くなる。何かに怯えてる? あるいは怒ってる?――けど何に?
私の視線は吸い込まれる様に白い壁に向かった。
白い壁は、僅かの間に黒く染まり、然もその奥で何かが蠢き、ざわめいていた。
「何……!?」私は腰を浮かし、思わずミオを抱えて逃げようとした。けれどミオの身体は私の伸ばした手を擦り抜け、彼女は鋭い牙と爪を剥き出しにして、壁へと駆け出した。「ミオ! 行かないで!」
壁を目前にして立ち止まったミオは、身体を精一杯大きく見せようと毛を逆立て、密林に住む遠縁もかくやという迫力を帯びた形相で、威嚇音を立てた。
と、丸でそれに怯えたかの様に、一旦壁のざわめきが大きくなり、それから潮が引く様に、怪現象は静まって行った。壁も徐々に元の白さを取り戻していく。
「……何があったの? ミオ」私は茫然と、愛猫に呟き掛けた。
ミオは私を振り返って、甘える様に一声、鳴いた。足に擦り寄り、目を細めてごろごろと喉を鳴らす。その姿には先程見せた野生の血など、微塵も感じられず、私は今さっき起こった出来事が夢ではなかったのかと、思わずにはいられなかった。
翌朝、隣のおばさんから聞いた話では、近所に長年放置されていた空き家が一軒、昨日遂に解体されたと言う。出社していた私が知らなかった事だけど、その家の地下室からはそこを塒(ねぐら)とする鼠が大量に発見され、蠢くその群れを忌んだ業者によって駆除されたそうだ。おばさんから聞いたその様は、丸であの黒い壁が蠢く様子に似ていて――私はそれらが行き場を探していたのかと、何と無く納得すると同時に、ぞっとした。
もしミオが居なかったら、あれらはあの壁に居付いたのだろうか?
冗談じゃない、と私は想像を振り払った。そしてうちの小さな猛獣に、おやつをサービスしたのは言う迄もない。
―了―
猫話が続く~。暑いから(?)
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Re:こんばんは
猫飼い増殖作戦実行中(笑)
暗い部屋でモニター見てると、目が悪くなりますよー?
暗い中、部屋の隅とか見詰めると何か動いてる様な気が……。は、乱視ですかб(^^;)
暗い部屋でモニター見てると、目が悪くなりますよー?
暗い中、部屋の隅とか見詰めると何か動いてる様な気が……。は、乱視ですかб(^^;)
Re:ちゅうちゅう
説得は通じそうにないですね~(^^;)
猫又にでも追い払わせますか☆
猫又にでも追い払わせますか☆
Re:おはようございます♪
キーちゃん&咲ちゃん、何も居ない所を見るのは止めて下さい(苦笑)
鼠君達、猫さんの居る家には居着かない……筈。
鼠君達、猫さんの居る家には居着かない……筈。
Re:こんにちは♪
鼠さん、個体を見ると結構可愛い顔してるんだけど……大群と化すと流石に怖っ!(--;)
猫さん、人知れず番をしてくれてるのかも?^^
猫さん、人知れず番をしてくれてるのかも?^^
Re:こんばんわっ
デグーさんも偶にカチコチしてますからねぇ^^
何を見てるんでしょうね? そして実は番もしてくれてる!?
何を見てるんでしょうね? そして実は番もしてくれてる!?
無題
どもども!
猫ってホント一点凝視するんですよね~。
今回みたいなケースは稀だと思うけど、何を見てるのか気になって仕方ないっすw
猫が家にいるとネズミが逃げ出すって言いますけど…猫が咥えてきて繁殖しちゃった場合は免疫が出来ちゃうんですかね?w
猫ってホント一点凝視するんですよね~。
今回みたいなケースは稀だと思うけど、何を見てるのか気になって仕方ないっすw
猫が家にいるとネズミが逃げ出すって言いますけど…猫が咥えてきて繁殖しちゃった場合は免疫が出来ちゃうんですかね?w
Re:無題
お土産が大増殖(笑)
クマちゃんも加わったし、猫バカさんちがえらい事に(^^;)
真里ちゃん達が全員で一点凝視したら……ちょっと怖いかも☆
クマちゃんも加わったし、猫バカさんちがえらい事に(^^;)
真里ちゃん達が全員で一点凝視したら……ちょっと怖いかも☆