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爪が折れたと、彼女は文句を言った。
長く伸ばして、それでも丁寧に整えられていた、彼女の爪。色取り取りのデコレーションがなされていた事もあった、彼女の自慢の爪。
その手指の全ての爪が、折れてしまった。ぼろぼろに、罅割れて、更には泥と血に塗れて。
悲しい、悔しいと、車の運転席に座る僕の隣で嘆く。
次には髪が汚れたと、彼女は言い募った。
背中まで緩く優雅なウェーブを描いていた彼女の髪。明るめの茶色に染めたそれの手入れに、彼女は細心の注意を払っていた。
その髪色艶もなくし、手間を掛けて納得のいく様に作った髪型も崩れてしまった。ふんわりとしていた髪は頭皮にべったりと張り付いて。
恥ずかしい、恨めしいと、買って一回しか使っていないシャベルを道路端の海に放り投げる僕の後ろで泣く。
更には息が苦しいと、彼女は訴えた。
胸と喉元を押さえ、少しでも酸素を取り込もうと喘ぐ。唇が蒼い。
最早声にさえならない声が、僕に訴え掛ける。
――どうして、と。
僕は答えず、再度運転席に乗り込む。
確かに彼女は美しい女性だった。
僕なんかでは吊り合わないとも、思っていた。
けれど、彼女が僕を選んでくれた時、僕はそれを信じてしまった――からかわれていたのだと知ったのは、数日前の事だった。
怒りに任せて殴り付けると、彼女は意識を失ってしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……!――僕は彼女の報復を恐れた。
ついカッとなってしまった。済まなかった。そんな素直な謝罪を聞き入れてはくれないだろう。苦痛に歪んだ彼女の顔を見て、僕はそう悟った。
傷害罪で訴えられるか、余りにも高額の治療費と慰謝料を請求されるか。どちらにしても、身の破滅を予感した。
だから――僕はシャベルを買い、慎重に毛布に包んだ彼女を、車のトランクに乗せた。人里離れた森の中に埋めた彼女には、未だ息があったかも知れない……。もう、後戻りは出来ないけれど。
顔が痛いと、彼女は嘆いた。
細面の、小さな顔。通った鼻筋、色艶のよい頬。大きく印象的な瞳。勿論、彼女が一番入念に手入れし、それとなくではあるが誇っていた顔。
それは今、青黒く腫れ、蒼褪めた唇からは血を滴らせ、生気を失った目はじっと、恨めしげに僕を見据えている。
僕の目の前、フロントガラスに張り付いて。
運転中に視界を奪われた僕は海側のガードレールを突っ切り……僕はやはり、と苦笑した。
彼女が命よりも大事にしていた、顔。
それを傷付けて、許される筈はなかったのだ。
ああ……身体が痛い、海水を飲み込んだ胸が苦しい……僕は……これを誰に訴えればいいんだろう?
―了―
自業自得、という事で?
何にしても性格悪くなったら、魅力半減?
巡回してて、また来てしまった^^;;;;w
ここの小説って、短編読みきり小説なんだぁー w(°0°)w ホッホー
最初の読み出しで「んん?前回の学園ものから、どうつながるんだぁ?」とか思いながら中盤で「星新一と同じ、短編読みきりだぁー^^v」とか思って、後半で「ホラーだぁ><;ギャーw」って、なりました。
眠いんだけど、おトイレ行くのが・・・こわいよぉ~~~~(T_T) ウルウル
シリーズは幾つかありますが、いずれも単独でもお読み頂ける……筈(笑)