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今日夜霧――担任の夜原霧枝先生――は、学園の建物内の絵画をつぶさに見て回り、その内、紫外線や蛍光灯による日焼けや褪色の見られた物が次々と回収された。
何でも、教頭先生から、絵画が傷んでいると注意を受けたそうなのだが……。
勿論、夜霧の機嫌は最悪だった。
「まぁ、大事にするには越した事はないですよね」結局、回収を手伝わされながら、僕は愛想笑いを浮かべた。「美術部の人達が描いた物なんでしょう? 先輩方とか……」
因みに、回収作業にはいつもの顔触れ――双子の兄の京、同級生の知多勇輝と間宮栗栖も付き合わされている。別に僕達は夜霧の助手じゃあないんだけどなぁ。
ともあれ、僕が言った様に学園内に掛けられている絵の殆どは、美術部の作品だった。それは、校長室とかには名のある画家の作品が飾られているけれど。
だからまぁ、絵画とは言ってもその価値は金銭的なものではなく、思い出や記念といったものだろう。
「それにしても、直射日光が当たらないように窓から離して掛けてあっても、日焼けとかするものですね」両手に額を抱えた京が、夜霧に言った。
「蛍光灯の灯だって、直射日光程じゃないけど、やっぱり絵画にとっては敵よ」また一枚、絵を検めながら夜霧は答えた。「学園内なんて、曇で薄暗かったりすると昼間でも蛍光灯点けっ放しじゃない。北側にある職員室前なんて特に。だから最初、廊下に作品を飾る事になった時、私は教頭にそう言ったのよ。それでも飾らせておいて、今頃……!」
夜霧の目が怖い。
どうやら火に油を注いでしまったらしい。ここは迂闊な事を言って更に煽る事のないよう、黙々と作業を遂行するべきか。
そんな僕の思惑とは逆行する様に、京は更に話を続けた。
「それはまた……教頭先生には振り回されますね」眉間に皺を寄せて言う。「飾れと言ったり、下ろせと言ったり……。仮にも要職にある人間ならよくよく考えてから物を言って頂きたい」
「でしょう?」同意者を得て、夜霧の声が大きくなった。「私はそれよりも、ちゃんとした収納庫を作って欲しいって要望したのよ。絵は増える一方だし。それでも校内に飾るなら対紫外線仕様の硝子を買ってくれって掛け合っても、費用がどうだこうだって安いのしか買ってくれなかったし。そりゃ、これだけの枚数を買うと、費用は嵩むとは思うけど……」
教頭、せこいぞ。まぁ、他の部との兼ね合いもあるし、美術部だけにそんなに費用を出せる訳もないか。
ともあれ、その後も僕達は重い額を持った儘、夜霧の愚痴を聞かされ続けたのだった――勘弁して欲しいよ。
「それにしても、教頭は何で今頃になって、急にそないな事言い出したんやろな?」作業から解放されて寮に帰る道すがら、いつもの柔らかい関西弁で栗栖が言った。
「偶々校内を歩いていて、傷みが目に付いたんだろ」しょうもない事を言うなとばかりに、京が肩を竦める。「見た目には拘るからな、教頭は」
「ほな、その見た目に拘る教頭が何で、夜霧から注意されてた――日焼けの可能性を知っとったのに、絵を飾らせとったんやろ?」
「だから、単に見た目の問題だろ?」噛み付く様に、京は言った。「校内に生徒の絵が飾ってあれば、うちは芸術にも力を入れてますよって格好が付くじゃないか」
「誰に?」
「父兄とか、教育委員会とかだろうが!」遂に、京は怒鳴り返した。「解り切った事を訊くな! 俺をおちょくってるのか!?」
「おちょくってへんて」栗栖は苦笑しつつも宥める。「確認したかっただけや。なるほど、滅多に来ぇへん父兄や教育委員会の為になぁ。けど、それやったら、尚の事、ちゃんとした対紫外線硝子使うた方がよかったんちゃうかなぁ」
「それはまぁ……」京は唸る。
「それだけ生徒の作品を大事にしています、というアピールも出来るだろうしな」勇輝が皮肉気に笑う。
それをせずに、傷むに任せていた辺り、やはりあの教頭と言うべきか……。
「傷んどった絵、どないなるんやろ?」栗栖は首を傾げて見せた。
「処分するとか言ってたな」勇輝は不機嫌そうに鼻を鳴らす。「修復に出す程の物でもないとは、俺も思うけど」
「美術部とは言え、生徒の習作だからねぇ」僕は軽く溜息をついた。「然も年々増え続けるし、収蔵しておく場所もないし」
「それやな」不意に、栗栖はそう言った。
絵画は元々、消耗品ではない。
それは気分で架け替えたり、何かで駄目になって買い換えたりという事はあるだろう。けれど、そのペースは普通、非常にゆったりしたものだろう。何故なら、ちゃんと管理している限りにおいては、何十年でも保管が可能だから。
それを確認しておいて、栗栖は言葉を続けた。
「夜霧は前に保管用の収納庫を作って欲しいと要望を出したんやったな。せやけど、今日集めて回っただけでもかなりの数があったやろう? 傷んでないのは未だ架けた儘やし、場所が無ぅて美術室に置いた儘のも未だ未だあったし、これからも増えるやろう。それだけのもんを収められる収納庫、どんな規模になると思う?」
僕達は顔を見合わせ、揃って頭を振った。これから描かれる分迄収めようと思ったら、どれだけの物を造ってもいずれ足りなくなるだろう。
「当然、費用も掛かる。教頭としてはそないな金、出したくない訳や。と言うか、学園としても無理やろうな。相当な寄付金集めでもせんと」
「じゃあ、真逆、絵を減らす為にこんな事を?」僕は眉を顰めた。「傷んだ絵を処分するのなら、仕方ないかってなるし……。ああして飾っておけば、傷みも早くなるから?」
「……かも知れん、いう話や」栗栖は肩を竦めた。「勿論証拠はないし、せやからって俺等にどうこう出来る問題でもないやろう。精々……」
意味ありげに言葉を途切れさせた栗栖に、僕達の視線が集まった。
「夜霧に習うて傷んだ絵の修復に精出す位やな」
修復され、傷の失せた絵ならば処分する必要も理由もない。教頭が処分したいと言っても、生徒――詰まりは僕達だ――が自主的に修復したいと言うのを止められるか? いや、対外的にもそれは言い難いだろう。
結局、夜霧と僕達は未だ未だ忙しい日々が続きそうだ。
―了―
長くなったー(--;)
こないだ米して、「あ、小説書いてるんだぁー。。。」とか思ってて、気になって、また来ちゃいましたw
おお!すごい!書けるんだぁー、小説。
私も昔~~~~し、小説書いて、公募に出したことがあります^^;w 見事、落ちましたけどwwwwww
小説書くのって、精神力をこれでもかぁー!ってくらい、注がないといけなかったから、それから小説書ける人を尊敬の眼差しで見るようになってしまったwwwwwww
ちなみに、私は、公募で書いたっきり。。。燃え尽きて真っ白な灰になってしまいましたorz (単に興味が他へ移ったともいいますw)
これって、過去記事から続いてるんですよね。
今度のお正月は、巽さんの小説で、小説三昧だぁー><v
うーん、やっぱり関西弁キャラが出てくるのは、デフォですね^^v
じゃまたー^^/
や、拙いものですが、お暇な時にでもどぞです(^^)
小説、真剣に書くとかなーりMP使います(笑)
ってか、小説に対するコメントは無しかい!
荒しスレスレやん。(^_^;)
nukunukuさん、あんまりお騒がせせんようにね。(^_^;)
巽さん、お騒がせ致しております。
お許し下さいませ。
今後とも、nukunukuさん共々、宜しく。m(__)m
なんか、私の保護者のように構ってくれてるのね(T_T) ウルウル
afoolさんって、なんて優しいんだぁ(*^o^*) テレテレ
っと、巽さんのブログで記事に関係ない話題をafoolさんに振ってみる^^;;;
・・・辰巳さん、ごめんなさーい^^;;;アラシト ヨバナイデ><W