〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
無視すればよかったのだろうか?――星一つ見えない暗い空を見上げながら、啓子は思案に暮れた。
急激に冷え込んだ夜、か細くもはっきりと耳に届いた声。それは子猫の鳴き声にも似て非なる、赤子の泣き声……だと思われた。
この近所に赤ちゃんの居る家など無いのに、それにこの声が余りに近く、何処かの家の中からではなくて彼女の家の傍の屋外からする様だった。
「もう十一時よ? こんな時間に赤ちゃんを連れて外に居る人なんて……こんなに寒いのに……」不審に思うと同時に、彼女は暖を取っていた炬燵から這い出していた。連れているだろう、親の顔が見たかった。この寒空に赤ん坊を外に連れ出して泣かせるなんて。一事言ってやろう、と彼女は意気込んでいた。
近くの様だから、と厚手のカーディガンだけを羽織り、彼女は家を出た。
声がするのは家の裏手――そちらは空き地の筈だった。
声に引かれる様に、彼女は歩を進めた。
急激に冷え込んだ夜、か細くもはっきりと耳に届いた声。それは子猫の鳴き声にも似て非なる、赤子の泣き声……だと思われた。
この近所に赤ちゃんの居る家など無いのに、それにこの声が余りに近く、何処かの家の中からではなくて彼女の家の傍の屋外からする様だった。
「もう十一時よ? こんな時間に赤ちゃんを連れて外に居る人なんて……こんなに寒いのに……」不審に思うと同時に、彼女は暖を取っていた炬燵から這い出していた。連れているだろう、親の顔が見たかった。この寒空に赤ん坊を外に連れ出して泣かせるなんて。一事言ってやろう、と彼女は意気込んでいた。
近くの様だから、と厚手のカーディガンだけを羽織り、彼女は家を出た。
声がするのは家の裏手――そちらは空き地の筈だった。
声に引かれる様に、彼女は歩を進めた。
ガランとした空き地――それは前々から知っていた事だったのだが。
「ここ迄広かったっけ?」月明かりに照らされた空き地は、いやに広く感じられた。砂利石に覆われた、何も無い空き地。
何も……誰も居ない空き地。
「誰も……居ない?」茫然と、啓子は呟いた。
気付けば件の泣き声も、いつの間にか止んでいた。発生源が移動したとか泣き止んだとか、そういう感触もない儘に。ぴたりと。
不審げに眉を顰めていると、ふっと月明かりが消えた。丸で電灯のスイッチを切ったかの様に。
大きな雲がよぎったのだろう、と振り仰いだ彼女の眼には、月どころか星一つ無い、のっぺりとした闇空。雲さえも……。
「何なの? これ……」彼女は寒さとは別のものに身を震わせ、踵を返して家に戻ろうとした。
そして――砂利だらけの空き地が、見渡す限り広がっている事に愕然とした。
何? 何なの? 此処は……私の家は何処?
聞こえるのは冷たい風の音だけ、と思いきや何処からともなく聞こえ来る、唄。
赤子が誘うは顔見ぬ母か
鬼児が誘うは殺めた母か
鬼児に誘わりゃ逃げられぬ 逃げられぬ
自分は誘われたのか?――啓子はぞっとした。未だ母でさえないと言うのに。
そう、未だ……。あと四箇月は……。彼女は自分の腹を抱く様に押さえた。
ああ、何でこんなカーディガンを羽織っただけで出て来ちゃったんだろう。身体が……お腹が冷えてしまう。
冗談じゃないわ。この子の為にも、帰らなきゃ。
そう決意を決めた時、彼女の視界に靄が掛かり……意識が遠退いて行った。
「!!」跳ね起きた時、そこは彼女の家で、彼女は炬燵に突っ伏した儘、顔にセーターの模様の跡を付けていた。「ゆ……夢?」
あれは夢だったのだろうか? はっきりと泣き声が聞こえたと思ったのに。カーディガンに袖を通して、外に出た覚えもあるのに。そしてあの身体の芯迄冷える様な冷たい空気……あれが夢?
あの唄も?
赤子が誘うは……口ずさめる程、はっきりと覚えていると言うのに。
自分を誘ったのは――と啓子は自分の腹部を見下ろした。
兎に角、同じ母になる者として気になるからと言って、冷たい夜に薄着で出て行ったのは軽率に過ぎた、と彼女は思った。
もしかしたら結果的にこの子を殺め……鬼児にしていたかも知れないのだから。
あの声は私を試したのだろうか?――母になるべき者か否か。
帰り着けたのは母として認められたのだろうか?
それは自分でこれから、そうなるしかないのだと、啓子は確信した。
―了―
何かよく解らん話になった(←おい)
眠いのがいかんのだ、きっと(--;)
「ここ迄広かったっけ?」月明かりに照らされた空き地は、いやに広く感じられた。砂利石に覆われた、何も無い空き地。
何も……誰も居ない空き地。
「誰も……居ない?」茫然と、啓子は呟いた。
気付けば件の泣き声も、いつの間にか止んでいた。発生源が移動したとか泣き止んだとか、そういう感触もない儘に。ぴたりと。
不審げに眉を顰めていると、ふっと月明かりが消えた。丸で電灯のスイッチを切ったかの様に。
大きな雲がよぎったのだろう、と振り仰いだ彼女の眼には、月どころか星一つ無い、のっぺりとした闇空。雲さえも……。
「何なの? これ……」彼女は寒さとは別のものに身を震わせ、踵を返して家に戻ろうとした。
そして――砂利だらけの空き地が、見渡す限り広がっている事に愕然とした。
何? 何なの? 此処は……私の家は何処?
聞こえるのは冷たい風の音だけ、と思いきや何処からともなく聞こえ来る、唄。
赤子が誘うは顔見ぬ母か
鬼児が誘うは殺めた母か
鬼児に誘わりゃ逃げられぬ 逃げられぬ
自分は誘われたのか?――啓子はぞっとした。未だ母でさえないと言うのに。
そう、未だ……。あと四箇月は……。彼女は自分の腹を抱く様に押さえた。
ああ、何でこんなカーディガンを羽織っただけで出て来ちゃったんだろう。身体が……お腹が冷えてしまう。
冗談じゃないわ。この子の為にも、帰らなきゃ。
そう決意を決めた時、彼女の視界に靄が掛かり……意識が遠退いて行った。
「!!」跳ね起きた時、そこは彼女の家で、彼女は炬燵に突っ伏した儘、顔にセーターの模様の跡を付けていた。「ゆ……夢?」
あれは夢だったのだろうか? はっきりと泣き声が聞こえたと思ったのに。カーディガンに袖を通して、外に出た覚えもあるのに。そしてあの身体の芯迄冷える様な冷たい空気……あれが夢?
あの唄も?
赤子が誘うは……口ずさめる程、はっきりと覚えていると言うのに。
自分を誘ったのは――と啓子は自分の腹部を見下ろした。
兎に角、同じ母になる者として気になるからと言って、冷たい夜に薄着で出て行ったのは軽率に過ぎた、と彼女は思った。
もしかしたら結果的にこの子を殺め……鬼児にしていたかも知れないのだから。
あの声は私を試したのだろうか?――母になるべき者か否か。
帰り着けたのは母として認められたのだろうか?
それは自分でこれから、そうなるしかないのだと、啓子は確信した。
―了―
何かよく解らん話になった(←おい)
眠いのがいかんのだ、きっと(--;)
PR
この記事にコメントする
Re:こんばんは
いつでも大変そうだよ~(^^;)
でも、身体は冷やしちゃ駄目よね。
でも、身体は冷やしちゃ駄目よね。
Re:おはようございます♪
確かに。
生物的に母になるのと、人間として母親になるのとは違いがあるんだろうなぁ。特にその責任において。
それだけ不安も大きいですよね。
生物的に母になるのと、人間として母親になるのとは違いがあるんだろうなぁ。特にその責任において。
それだけ不安も大きいですよね。
Re:おはよう!
全くね~(--;)
子供が子供作るから……。
自分のお腹を痛めて生んだ子を虐待する様な男なんて、女の方から捨てるべきだと思うけど☆
子供が子供作るから……。
自分のお腹を痛めて生んだ子を虐待する様な男なんて、女の方から捨てるべきだと思うけど☆
Re:子猫ってなに?
あのね、夜霧?
ブログペットの設定では一応君は「こねこ」だよ?(笑)
ブログペットの設定では一応君は「こねこ」だよ?(笑)
無題
どもども!
よく解らん話だが、不気味さは伝わってきたぞ!!(笑)
確かに身重の体で寒空に出るのは、母になる者としては軽率でしたね。
ただ、自分の立場を理解してるって事で開放されたのかな?
いやいや…たぶん夢だったんですよww
よく解らん話だが、不気味さは伝わってきたぞ!!(笑)
確かに身重の体で寒空に出るのは、母になる者としては軽率でしたね。
ただ、自分の立場を理解してるって事で開放されたのかな?
いやいや…たぶん夢だったんですよww
Re:無題
やっぱりよく解らん話でしたか!(笑)
路線がなかなか決まらない話は私も書いててイマイチすっきりしない(--;)
そして今日も眠い……zzz
路線がなかなか決まらない話は私も書いててイマイチすっきりしない(--;)
そして今日も眠い……zzz
Re:一瞬、子殺しの話かと・・・
あの儘で、これから殺める事になってしまっていたら……ひーっ!![](/emoji/E/432.gif)
![](/emoji/E/432.gif)
Re:つきみぃさん
同感っす!
無題
あらら!冬の妊婦は大変なんですね。
うちの母は「冬に産んだ子は楽」だといって
計画的に妹も冬生まれとなりましたが^^;
汗疹になりづらいから楽だと思ったのかな~♪
怖い夢ってありますよね。起きてからも身震いするほど怖いのに、泣いた形跡まであるのに、朝ごはん食べると忘れちゃうのが不思議です^^
うちの母は「冬に産んだ子は楽」だといって
計画的に妹も冬生まれとなりましたが^^;
汗疹になりづらいから楽だと思ったのかな~♪
怖い夢ってありますよね。起きてからも身震いするほど怖いのに、泣いた形跡まであるのに、朝ごはん食べると忘れちゃうのが不思議です^^
Re:無題
朝ごはん、なかなかの強力アイテムですな(笑)
食べると人心地付く、というのはありますよね、確かに(^-^)
食べると人心地付く、というのはありますよね、確かに(^-^)
Re:こんにちは!
そう言えば私、具合悪くても悪夢って殆ど見ないなぁ。
と言うか、夢自体目覚めると殆ど覚えてないんだけど(汗)
うちは母が時々うなされて妙な声を上げてます。安眠妨害。
と言うか、夢自体目覚めると殆ど覚えてないんだけど(汗)
うちは母が時々うなされて妙な声を上げてます。安眠妨害。