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僕達はお化け屋敷の入り口を潜った。
夏の連休の間も流行らなさそうな、古びた遊園地の、古びたお化け屋敷。
表の看板の絵は所々剥げ掛けているし、チケット売り場の金属の窓枠には錆が浮いている。その所為か僕達の他に客もなく、磨り硝子越しに言葉を交わした係員も、元気も愛想もなかった。
内容はと言えば、お決まりの井戸から上がって来る死に装束の幽霊や、突然揺れ出す卒塔婆の列。不意に頭上から噴出す冷風とか。実は十五年程前、未だ子供の頃に一度だけ、来た事があるのだが、その時と何も変わっていない様な気がする……。怖がらせたいんだか、驚かせたいんだか、それすら解らない所も。
連れの彼女はそれなりに楽しんでいた様だけれど、僕にはやはり子供騙しとしか見えなかった。まぁ、子供の時は僕もそれなりに怖がって泣いたけど……そんな事は勿論、内緒だ。
それなら入るなって言われそうだけど、彼女にねだられたんだから仕方ない。何でも、近々このお化け屋敷は取り壊されるのだそうだ。この有様からして客の入りが悪く、他の施設への建て替えを余儀なくされたのだと容易に推測された。それ迄興味もなかったのに、最後だと思うと行ってみたくなる――そんなイベント感が、彼女を後押ししたのだろう。
「あんまり怖くはなかったね」暗いお化け屋敷から出て、陽光の眩しさに目を細めながら、彼女は言った。「何て言うか、時代遅れと取るかノスタルジックと取るか……って感じ」
「ま、目新しさはないな。そんなだから閉められるんだろうけど」
それより何か飲みながら一休みしようと歩き出すと、向こうから係員の制服を着た男が駆けて来た。
「あ、あの、お客様。もしかしてこちらのお化け屋敷、入られましたか?」些か慌てた風の彼に、僕達は共にきょとんとした顔で頷いた。「な、何か変わった事は……?」
更なる問いに、僕達は顔を見合わせる。お化け屋敷に入って、変わった事がなくてどうする?
「い、いえ、そういう事ではなくて……。済みません、半券はお持ちですか?」
意味が掴めない儘、僕達はポケットに突っ込んでいたチケットの半券を差し出した。
彼はじっと、そのチケットに捺されたスタンプを凝視して、やがて眉を開いた。
「よ、よかった……。とんでもない年号じゃなくて」
「は?」僕達は改めて、それを確認した。
当然今日の日付が捺されていると思っていたチケット。だが、そこには十五年前の今日の日付が記されていた。そう、丁度僕が子供時代に訪れた頃の……。
「窓口のミスじゃないんですか?」首を傾げた彼女に、彼は僕達の背後を指差した。
そこにはお化け屋敷の出口があり、数メートル横には入り口が――精々十分程前に通った筈のそこは、黄色いテープで幾重にも封鎖されていた。
「窓口係は疾うに居ませんよ。実は以前にも偶々係の者が席を離れた時にこういう事がありまして。だから已む無く閉鎖する事にしたんですよ。先々月には新しいセットも入れたんですがねぇ。仕方ありません――本当のお化けの出るお化け屋敷なんて」
してみれば、窓口に居た元気も愛想もない係員は、この世のものではなかったか。そして僕達はあの十五年前のお化け屋敷に飛ばされていたと言うのか?
本当のお化けの居るお化け屋敷。売りになるんじゃないかと言ったら、彼は頭を振った。
「出るだけならまぁ、いいんですが……。これでとんでもない年号、例えば此処の開園前の年号なんて捺されると、何処に飛ばされるのか、消えたお客様もおられるので……。兎に角、お客様方、ご無事でよかった」
以来、僕達は何かと日付を確認する癖が付いている。
―了―
遅くなった遅くなった(汗)
愉快犯? 消されたら堪ったもんじゃないけど(^^;)
で、その後、特に変わったことは無いのかねぇ。(^_^;)
それはそうと、そうそう、お化け屋敷って、怖いんじゃなくて、驚くんだよね。
人から見て、怖がってると思われると癪だから、次は何処から何が出るか、予想しながら歩く。(^_^;)
なので、あんまり好きでない。(^_^;)
何処から出て来るか、大体セットで予想は付くけど、偶に頭上から不意打ち(笑)
雨は続くものの、今の所我が家近辺は水没してません(^^;)
とは言え、川とか海が近いんで要注意ですが(汗)