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「今日迄、ご苦労様でしたー!」
改まった物言いにはやや不似合いな、小さな子供達の声が唱和した。
続いて、ぱらぱらと湧き起こり、やがて爆発的に盛り上がった、拍手の音。
それは惜別の、そして労いの音。
とある幼稚園の庭の片隅、輪になった園児達と職員が見詰めるのは、その中心のたった一本の樹。
園の創設当初に植樹され、ずっとこの場所にあり、数多の園児達を見守り、見送ってきた、桜の樹。
だが、それは年を経て傷み、夏に害虫にやられた事もあって、最早芽を膨らませる力もなく、倒れる危険性があると診断されて、春を前にしたこの日、撤去される事となっていた。
そのお別れの、集いだった。
「寂しくなりますね」ひまわり組の担任が園長に話し掛けた。心なしか、声が湿っている。
「そうですね……」潤んだ目をして、園長は頷いた。「この子は本当によく、これ迄役目を果たしてくれました」
そして、そろそろ園児達を教室へ、と促した。この樹が倒れる所など、見せたくないと。
職員達はそれぞれに担当の園児達を率いて、教室内へと戻って行った。
園長は工事関係者に指示された場所迄下がり、独り、その作業を見守る。
やがて、乾いた悲鳴の様にも聞こえる音を立てて樹はその幹を伐られ、更に残った根が掘り起こされた。
そして、作業員達のざわめきの声が広がった。
「人骨が出た!」と。
「これは先代から聞いた話ですが、設立当初のこの園で、流行り病が蔓延したそうです。どれ程手を尽くしても、病は拡がるばかりで一向に治まらず、ほとほと弱り切っていた時に、先生の一人が志願したそうです――人柱に」事情聴取に、園長は淡々と、そう述べた。「以来、この園ではインフルエンザだって流行りはしませんでしたよ。本当に……よく、護ってくれました」
ご苦労様……呟いて、園長は深く、深く、頭を垂れた。
―了―
眠いですzzz
そして病除けも効力切れ……どうなるやら(←おい)
病が流行らなかったのは、只の偶然か、はたまた別の要因か……。
寧ろ呪われそうな気がしないでもない(^^;)