[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「本当にいいの?」心配そうに尋ねる母の声に、私は深く、頷いた。未だ迷いがちな自分に、きっぱりと決断を促す様に、深く。
「いいの。やっと、決めたんだから」出来るだけ、笑顔を作って見せる。「だって、これを渡さないと、いつ迄も付回されるのよ? お祖父様の遺産が隠されているだの何だのって……。あの伯父達に付き纏われる位なら、手放した方が気が楽だわ」
「それはそうだけれど……」母は顔を曇らせた。「あるのかどうかも解らない遺産は兎も角、このぬいぐるみは貴女がお祖父様から頂いた只一つの物で、一番の宝物だったじゃないの」
「それは、私だって渡したくはないわ。あの伯父達に渡したら、隠し場所を捜して、直ぐにでも切り刻まれてしまうかも知れない……。勿論、そんなの嫌よ! でも……お父さんも亡くなった今、自分達の身は自分達で守らなくちゃ……」
些か古び、所々ほつれも目立つ、クマのぬいぐるみを、私は最後にぎゅっと、抱き締めた。
向こうの車では伯父達が待っている。
三箇月前、祖父の面倒を最期迄見届けた私達親子を屋敷から追い出し、その癖、祖父の隠し財産を託されているだろうと勝手に私達を付け回し、祖父の形見であるぬいぐるみを奪おうとしている伯父達が。
せめて父が生きていたならば、未だ逃げ果せたかも知れないけれど……父は一箇月前に亡くなった。車のブレーキオイルが漏れていたと言うけれど、その車は車検を受けたばかりだった。
事故なのか、誰かが仕組んだものなのか、その確証は無い。私の中で伯父達が黒であっても、証拠が無ければ世間的にはグレー、法律上では白でしかない。
私は溜息を一つついて、もう一度母に頷いて見せると、伯父達の車に歩み寄った。
「伯父さん、これ、どうぞ調べてみて下さい」運転席のウインドウ越しに、私はぬいぐるみを差し出した。
「おお、大事に調べさせて貰うよ、綾菜ちゃん」伯父は嘘臭い笑みを浮かべて、それを受け取った。「しかし、かなりお気に入りだったんだねぇ。いつも一緒に遊んでいたのか、こんなにほつれて……。何なら、代わりに今度新しいのを買ってあげようか?」
「いいえ」私は微苦笑を浮かべて、頭を振った。「その子の代わりは無いから。じゃ……さようなら、伯父さん、伯母さん」
助手席に座る伯母にも頭を下げ、私は車を離れた。
思わず、早足になる。いっそ、駆け出してしまいたかった。
これでもう、あの子ともさようなら、なんだ。
それでも怪しまれないようにとどうにか堪え、私は母の元に戻った。振り返りもせず、母を伴ってその場を離れる。
早く、早く……この場から去ってしまいたい。伯父達の傍には居たくない。
だって、一旦腹を開いたあの子の中には、ネットで作り方を調べて作った、小型の時限爆弾が仕掛けてあるのだもの。
数分後、私達の背後で起こった爆発音は、想像していたよりも大きく、上がった炎は激しかった。
「……」私はやっと振り返り、涙した。
腹を開いた私には解る。あのぬいぐるみには何も隠されてなどいなかった。
伯父達は自らの妄想で私達から父を奪い、私達を付け回して祖父の形見のぬいぐるみを奪い、そして、自らをも滅ぼす結果となったのだった。
これで気は済んだ、と私は母に強く頷くと、交番の赤色灯を目指した。
―了―
ねーむーいー☆
材料だって意外な物が危険物だったり……。
来年も宜しくです!
なんだか爆弾の作り方なんてものもネットで
簡単にしらべる事が出来るとか?聞いた事が
ありますが・・・・怖ろしい世の中だね、
今年も1年、有難うございました。
来年も宜しくお願いします<(_ _)>
どうぞ良いお年をお迎えくださいネ♪
特にネット社会では色んな情報が漂ってますが、中にはヤバイものもありそうで……。勿論、知っている=使用する、ではありませんけれど、取り敢えずその手の情報はお子様の手の届かない所に保管下さい!?
良い年が迎えられる様に、せめて楽しい話にしてくだされ。(笑)
しかし、ヌイグルミに隠せるって言ったら、せいぜいダイヤモンドぐらいなものでは?
猜疑心が強過ぎますな。
ともあれ、今年も一年、色々とありがとうございました。
良いお年をお迎え下さいませ~。
結局するけど(笑)
でも、明日は夜霧の日! という事で夜霧予報にゃ。
こちらこそ一年間有難うございました(^-^)
よいお年を~♪
開けまして爆弾でしたという話、あんな底意地の悪い伯父にくれてやるにはもったいないぬいぐるみでしたね。
昨年はお世話になりました。また今年もよろしくお願いします!
こちらこそ、今年も宜しくお願い致します。