〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「おーい、授業中ボーっとしてたけど、どした?」
終業ベルが鳴り、担任教諭が行ってしまったのを見届けて、千裕は隣の席の友人の肩をつついた。
その友人、美帆はやはりぼうっとした様子で、それに答えた。
「ごめん、ちょっと睡眠不足……」答えながらも眠そうに目を擦っている。「授業中に寝ないように、これでも頑張ってるんだけど」
「何? 深夜テレビでも見てた? 真逆夜中迄試験勉強って線はないわよね?」
「確かにその線はないけど……それを言ったら千裕だって同じでしょ?」
まぁね、と千裕は肩を竦める。
「でも、本当、どしたの? あたしが言うのも何だけど、夜更かしも程々にしといた方がいいよ? 肌とか荒れるし」
「あんた、幾つよ?」お互い十七歳。未だそんな歳じゃないと、美帆は笑う。
「いやいや、油断は大敵だって」友人の笑顔に、千裕自身も頬を緩める。
が、次の瞬間には美帆は笑みを収め、やや充血気味の目で机の天板を見下ろした。釣られる様に、千裕の笑みも失せる。
「どうしたの?」一転して真剣な表情と声音で、千裕はそう尋ねた。
この所眠れないのだと、美帆は答えた。
いつもと同じ様に十二時前にはベッドに入り、眠ろうとする。一日の疲れもあって、普通に眠気もある。普段なら小一時間としない内に眠りに就く筈だった。
それがここ一週間程だろうか、午前二時を回り、三時を回っても眠る事が出来ずにベッドの中で転々と寝返りを打っているのだと言う。
「昨日――じゃなくて今朝か――なんて、朝刊の配達が来た音迄聞いちゃったよ。早朝って静かだから、逆に色んな音が聞こえるんだね」美帆は僅かに苦笑を浮かべる。
「美帆、何か心配事でもあるの? そんなに眠れないなんて……」
それとも逆に余程楽しみな事でもあって、興奮して眠れずにいる?――いや、それなら本人も悩まないだろうし、どれ程楽しみな事が待ち受けていたとしても、そんなに持続もしないだろう。
ならばやはり、深刻な悩み事でもあって、落ち着いて眠れずにいるのか。
「ほら、心配事って、誰かに話してみると軽くなる事があるって言うじゃない。遠慮なく言ってみよう。教室じゃ何だったら、場所移して……」
「いやいや、本当にそんな心配事なんてないから」美帆は苦笑して、パタパタと手を振った。「心配してくれてありがと」
「そう?」気遣わしそうに眉根を寄せて、千裕は友人の顔色を窺う。確かに無理をしている様には見えないが。
「大丈夫、大丈夫。悩みって言ったら、ダイエット中なのに気になっちゃうお菓子の事とか、テストの山勘が当たらない事とか、ある事はあるけど、そんなの最近に始まった事じゃないし」
確かに、とやはり同じ悩みを抱える千裕は頷いた。
「でも、それじゃ何なんだろ? 何か環境変わった?」
「そうねぇ……」美帆は首を捻った。「裏の空き家に人が越して来た位かな?」
「あ、その人が夜中迄近所迷惑に騒いでるとか!」犯人見付けたり、とばかりに千裕は言った。
が、美帆は頭を振る。
「ううん、静かなもんよ? 時々本当に居るのかなって思う位。そう言えばあの人、いつ、越して来たんだろ? 引越し荷物を運び込んでる風もなかったし」
「挨拶もなし?」それは感心せんな、と千裕は唸る。「じゃ、何で越して来たって解ったの?」
「え? 一週間前位かな? うちの殆ど倉庫になってる二階奥の和室の片付けを言い付けられて、普段締め切ってるから風も通して置こうと思って窓を開けたら――丁度裏の家に面してるのよ、その窓――そしたら、そこの二階に何かボーっとした男の人が居て。未だ若そうだったけど、蒼白い顔してて、何か気味悪かったからそそくさと窓閉めちゃった」感じ悪かったかな、と美帆はぺろりと舌を出す。
「……その人、それ以前に見た事は?」
「ないよ。お母さんも知らないって言ってた。見た事もないって」
「……」千裕は、暫し考えた挙句、美帆を図書室に引っ張って行った。
何をしているのかと問う美帆にちょっと待ってとだけ言い置いて、パソコンで彼女の家近辺の地名を打ち込み、何やら検索している。手掛かりが無く、苦心していた様だが、やがて「あっ」と声を上げた。
「美帆ん家の裏の家ね、三十年も前に男の人が亡くなってるんだって。何でも遺産の事とかで悩んで悩んで、夜も眠れない程、精神のバランスを崩して……服毒だって」
「ちょっ……と、真逆、あの男の人がその……幽霊だって言うの? 前から居たのに、あたしが偶々窓を開けて見ちゃったから……あたしに取り憑いた……? いや……っ!」
大声を上げ掛けた美帆を押し留めて、千裕は再びパソコンに向かった。やはりまた、検索ボックスに字句を打ち込んでいる。
検索ワードは住所に加えて「寺」「神社」「お払い」「除霊」……。
「大丈夫だからね」千裕は言った。「ちゃんと眠れるようにしてあげるから。美帆も……その男の人も」
「ん……」美帆は頷いた。「大丈夫。千裕みたいな友達が居るだけで、何か安心……で……」図書室の椅子に座った儘、美帆は机に突っ伏して眠ってしまった。眠気がピークに達したのと、千裕への信頼感故だろう。
その寝顔に苦笑を浮かべて、千裕はまた、情報の海に漕ぎ出した。
三日程後、美帆は自室のベッドで思う存分、安眠を貪り――件の霊は眠りに就いたと言う。
―了―
ね、眠い……(--;)
眠いのに長くなる~☆
終業ベルが鳴り、担任教諭が行ってしまったのを見届けて、千裕は隣の席の友人の肩をつついた。
その友人、美帆はやはりぼうっとした様子で、それに答えた。
「ごめん、ちょっと睡眠不足……」答えながらも眠そうに目を擦っている。「授業中に寝ないように、これでも頑張ってるんだけど」
「何? 深夜テレビでも見てた? 真逆夜中迄試験勉強って線はないわよね?」
「確かにその線はないけど……それを言ったら千裕だって同じでしょ?」
まぁね、と千裕は肩を竦める。
「でも、本当、どしたの? あたしが言うのも何だけど、夜更かしも程々にしといた方がいいよ? 肌とか荒れるし」
「あんた、幾つよ?」お互い十七歳。未だそんな歳じゃないと、美帆は笑う。
「いやいや、油断は大敵だって」友人の笑顔に、千裕自身も頬を緩める。
が、次の瞬間には美帆は笑みを収め、やや充血気味の目で机の天板を見下ろした。釣られる様に、千裕の笑みも失せる。
「どうしたの?」一転して真剣な表情と声音で、千裕はそう尋ねた。
この所眠れないのだと、美帆は答えた。
いつもと同じ様に十二時前にはベッドに入り、眠ろうとする。一日の疲れもあって、普通に眠気もある。普段なら小一時間としない内に眠りに就く筈だった。
それがここ一週間程だろうか、午前二時を回り、三時を回っても眠る事が出来ずにベッドの中で転々と寝返りを打っているのだと言う。
「昨日――じゃなくて今朝か――なんて、朝刊の配達が来た音迄聞いちゃったよ。早朝って静かだから、逆に色んな音が聞こえるんだね」美帆は僅かに苦笑を浮かべる。
「美帆、何か心配事でもあるの? そんなに眠れないなんて……」
それとも逆に余程楽しみな事でもあって、興奮して眠れずにいる?――いや、それなら本人も悩まないだろうし、どれ程楽しみな事が待ち受けていたとしても、そんなに持続もしないだろう。
ならばやはり、深刻な悩み事でもあって、落ち着いて眠れずにいるのか。
「ほら、心配事って、誰かに話してみると軽くなる事があるって言うじゃない。遠慮なく言ってみよう。教室じゃ何だったら、場所移して……」
「いやいや、本当にそんな心配事なんてないから」美帆は苦笑して、パタパタと手を振った。「心配してくれてありがと」
「そう?」気遣わしそうに眉根を寄せて、千裕は友人の顔色を窺う。確かに無理をしている様には見えないが。
「大丈夫、大丈夫。悩みって言ったら、ダイエット中なのに気になっちゃうお菓子の事とか、テストの山勘が当たらない事とか、ある事はあるけど、そんなの最近に始まった事じゃないし」
確かに、とやはり同じ悩みを抱える千裕は頷いた。
「でも、それじゃ何なんだろ? 何か環境変わった?」
「そうねぇ……」美帆は首を捻った。「裏の空き家に人が越して来た位かな?」
「あ、その人が夜中迄近所迷惑に騒いでるとか!」犯人見付けたり、とばかりに千裕は言った。
が、美帆は頭を振る。
「ううん、静かなもんよ? 時々本当に居るのかなって思う位。そう言えばあの人、いつ、越して来たんだろ? 引越し荷物を運び込んでる風もなかったし」
「挨拶もなし?」それは感心せんな、と千裕は唸る。「じゃ、何で越して来たって解ったの?」
「え? 一週間前位かな? うちの殆ど倉庫になってる二階奥の和室の片付けを言い付けられて、普段締め切ってるから風も通して置こうと思って窓を開けたら――丁度裏の家に面してるのよ、その窓――そしたら、そこの二階に何かボーっとした男の人が居て。未だ若そうだったけど、蒼白い顔してて、何か気味悪かったからそそくさと窓閉めちゃった」感じ悪かったかな、と美帆はぺろりと舌を出す。
「……その人、それ以前に見た事は?」
「ないよ。お母さんも知らないって言ってた。見た事もないって」
「……」千裕は、暫し考えた挙句、美帆を図書室に引っ張って行った。
何をしているのかと問う美帆にちょっと待ってとだけ言い置いて、パソコンで彼女の家近辺の地名を打ち込み、何やら検索している。手掛かりが無く、苦心していた様だが、やがて「あっ」と声を上げた。
「美帆ん家の裏の家ね、三十年も前に男の人が亡くなってるんだって。何でも遺産の事とかで悩んで悩んで、夜も眠れない程、精神のバランスを崩して……服毒だって」
「ちょっ……と、真逆、あの男の人がその……幽霊だって言うの? 前から居たのに、あたしが偶々窓を開けて見ちゃったから……あたしに取り憑いた……? いや……っ!」
大声を上げ掛けた美帆を押し留めて、千裕は再びパソコンに向かった。やはりまた、検索ボックスに字句を打ち込んでいる。
検索ワードは住所に加えて「寺」「神社」「お払い」「除霊」……。
「大丈夫だからね」千裕は言った。「ちゃんと眠れるようにしてあげるから。美帆も……その男の人も」
「ん……」美帆は頷いた。「大丈夫。千裕みたいな友達が居るだけで、何か安心……で……」図書室の椅子に座った儘、美帆は机に突っ伏して眠ってしまった。眠気がピークに達したのと、千裕への信頼感故だろう。
その寝顔に苦笑を浮かべて、千裕はまた、情報の海に漕ぎ出した。
三日程後、美帆は自室のベッドで思う存分、安眠を貪り――件の霊は眠りに就いたと言う。
―了―
ね、眠い……(--;)
眠いのに長くなる~☆
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この記事にコメントする
こんばんは☆
すっかりご無沙汰しちゃって…
まとめて読ませてもらうねm(__)m
引っ越してきたヤツが幽霊だった
じゃなくって
隣の先住民に見初められちゃったのねw
無事にみんなが眠れて良かったです☆☆
私も今日は寝られそうです(^^)サッカー無いし♪
まとめて読ませてもらうねm(__)m
引っ越してきたヤツが幽霊だった
じゃなくって
隣の先住民に見初められちゃったのねw
無事にみんなが眠れて良かったです☆☆
私も今日は寝られそうです(^^)サッカー無いし♪
Re:こんばんは☆
お疲れ様です(^-^)
ゆっくりお休み下さいにゃ♪
サッカー無いし(^^;)
ゆっくりお休み下さいにゃ♪
サッカー無いし(^^;)
無題
小学生の頃は美帆のような夜を送ってましたよ、別に幽霊に狙われてはなかったけど(^^;
しかもそれで昼間も眠くなかった。思い返すと奇妙(笑)
最近、真逆を「マギャク」と読むのがテレビでも通用してきたんだけど違和感ありませんか?
しかもそれで昼間も眠くなかった。思い返すと奇妙(笑)
最近、真逆を「マギャク」と読むのがテレビでも通用してきたんだけど違和感ありませんか?
Re:無題
ま・さ・か、読み違えてる人、居ませんよねぇ?( ̄▽ ̄;)
テレビで使われてる言葉でも「ええ~?」っていうの、ありますよね。残念な事に。
小学校の頃はね、夜布団に入ると、部屋の隅の暗い所で何か蠢いてるみたいな気がして……少々暑くても布団に潜り込んでました(笑)
今はそう見えない……子供特有の何か、だったのかも知れません。
テレビで使われてる言葉でも「ええ~?」っていうの、ありますよね。残念な事に。
小学校の頃はね、夜布団に入ると、部屋の隅の暗い所で何か蠢いてるみたいな気がして……少々暑くても布団に潜り込んでました(笑)
今はそう見えない……子供特有の何か、だったのかも知れません。