〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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見上げた空から、ぽつり、ぽつりと雨粒が零れ落ちてきた。朝から上空に蟠っていた雲は、遂にその重みを支えられなくなったらしい。
僕は慌てて雨宿り出来る場所を探した。
本当の名前なんて知らないけれど、紫陽花が沢山、色を競っている、通称「紫陽花公園」の中を駆ける。
一旦は紫陽花の根元に蹲ったけれど、葉の上を伝って落ちる雨滴はやっぱり冷たかった。
小さな東屋に駆け込もうとそちらを目指したけれど、不意に目の前に現れた女性の姿に、僕は思わず脚を止めた。
それは女性――と言っても未だ十代後半位だろうか――が丸で僕の進路を遮る様に現れた所為だろうか。それとも……どこか寂しげな笑みを浮かべた彼女の姿が、半透明に透き通っていたから?
僕に覆い被さる様にしゃがみ込み、ごめんね、と呟く彼女。僕は彼女と、彼女が道を塞いだ東屋が気になり、その場を退く事も出来ずにいた。
でも、不思議と、彼女の陰に居る間、雨粒が僕を打つ事はなかった。
半透明で、明らかにこの世の人じゃないんだけど……。僕をこの雨から守ってくれているのは確かだった。
半時程も経っただろうか。彼女がやおら、立ち上がった。細かな雨が降り掛かる。
見上げると彼女はにこりと笑い、その姿が薄れ……。
が、彼女の気配が消え去った後――東屋の方から、さっきの彼女が歩いて来るのが見えた。
但し、半透明ではなく、さっきは持っていなかった鮮やかなブルーの傘を差していた。そして何より、寂しげではなかった。
寧ろ良い事でもあったかの様に頬を紅潮させ、微笑んでいる。
僕は目を丸くした儘、呆けた様に彼女を見上げていた。
「あら、猫ちゃん!」僕に気付いて、彼女は言った。「こんな雨の中、どうしたの? どこかで雨宿り……」
辺りを見回して、しかしそれが出来そうな場所が例の東屋位しかないと見て取ると、彼女は微苦笑して持っていた傘を僕に差し掛けた。
「ごめんね。今、未だお父さんが居るの。お父さんは凄く猫が苦手でね。それに……もう少し、浸らせてあげて」
これ、上げるからと僕の為に傘を置いて、彼女は立ち上がった。
未だ雨のそぼ降る中、自分はどうするのか――僕の疑問を察したのか、微笑んで言う。
「大丈夫。今、とっても気分よくて、この世のもの――この雨さえも好きになれる気分なの。こんな事ならもっと早く決断すればよかった」
くるり、雨を受けながらその場でターンして、笑う。
「……うちの両親ね、三年前に離婚したんだ。それ迄は毎年、父の日には手作りの――まぁ、子供の手作りだからたかが知れてたけど――プレゼント上げてたのよ。でも、私が母方に引き取られてから、会う事も禁じられちゃって……。祖母がね、厳しい人なの。でも、本当は幾つになっても、離れ離れでもお父さんが大好きって、伝えたかった。だから、今日は思い切って呼び出しちゃった」
一日遅れの父の日――それでも、彼女と彼女の父親には、感慨深い日となったのだろう。
先程の寂しげな彼女は、父親に会えない抑圧された心の表れだったのか。
今、晴れ晴れとした笑顔で手を振り、彼女は駆けて行く。
ブルーの傘を打つ雨も、どこか柔らかい音がした。
―了―
携帯でちまちま書いて投稿したら、「――」が「ーー」に……(--;)
結局PCから手直し(^^;)
僕は慌てて雨宿り出来る場所を探した。
本当の名前なんて知らないけれど、紫陽花が沢山、色を競っている、通称「紫陽花公園」の中を駆ける。
一旦は紫陽花の根元に蹲ったけれど、葉の上を伝って落ちる雨滴はやっぱり冷たかった。
小さな東屋に駆け込もうとそちらを目指したけれど、不意に目の前に現れた女性の姿に、僕は思わず脚を止めた。
それは女性――と言っても未だ十代後半位だろうか――が丸で僕の進路を遮る様に現れた所為だろうか。それとも……どこか寂しげな笑みを浮かべた彼女の姿が、半透明に透き通っていたから?
僕に覆い被さる様にしゃがみ込み、ごめんね、と呟く彼女。僕は彼女と、彼女が道を塞いだ東屋が気になり、その場を退く事も出来ずにいた。
でも、不思議と、彼女の陰に居る間、雨粒が僕を打つ事はなかった。
半透明で、明らかにこの世の人じゃないんだけど……。僕をこの雨から守ってくれているのは確かだった。
半時程も経っただろうか。彼女がやおら、立ち上がった。細かな雨が降り掛かる。
見上げると彼女はにこりと笑い、その姿が薄れ……。
が、彼女の気配が消え去った後――東屋の方から、さっきの彼女が歩いて来るのが見えた。
但し、半透明ではなく、さっきは持っていなかった鮮やかなブルーの傘を差していた。そして何より、寂しげではなかった。
寧ろ良い事でもあったかの様に頬を紅潮させ、微笑んでいる。
僕は目を丸くした儘、呆けた様に彼女を見上げていた。
「あら、猫ちゃん!」僕に気付いて、彼女は言った。「こんな雨の中、どうしたの? どこかで雨宿り……」
辺りを見回して、しかしそれが出来そうな場所が例の東屋位しかないと見て取ると、彼女は微苦笑して持っていた傘を僕に差し掛けた。
「ごめんね。今、未だお父さんが居るの。お父さんは凄く猫が苦手でね。それに……もう少し、浸らせてあげて」
これ、上げるからと僕の為に傘を置いて、彼女は立ち上がった。
未だ雨のそぼ降る中、自分はどうするのか――僕の疑問を察したのか、微笑んで言う。
「大丈夫。今、とっても気分よくて、この世のもの――この雨さえも好きになれる気分なの。こんな事ならもっと早く決断すればよかった」
くるり、雨を受けながらその場でターンして、笑う。
「……うちの両親ね、三年前に離婚したんだ。それ迄は毎年、父の日には手作りの――まぁ、子供の手作りだからたかが知れてたけど――プレゼント上げてたのよ。でも、私が母方に引き取られてから、会う事も禁じられちゃって……。祖母がね、厳しい人なの。でも、本当は幾つになっても、離れ離れでもお父さんが大好きって、伝えたかった。だから、今日は思い切って呼び出しちゃった」
一日遅れの父の日――それでも、彼女と彼女の父親には、感慨深い日となったのだろう。
先程の寂しげな彼女は、父親に会えない抑圧された心の表れだったのか。
今、晴れ晴れとした笑顔で手を振り、彼女は駆けて行く。
ブルーの傘を打つ雨も、どこか柔らかい音がした。
―了―
携帯でちまちま書いて投稿したら、「――」が「ーー」に……(--;)
結局PCから手直し(^^;)
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ぼくは猫であるw
こんにちはー^^
あんまり、鬱憤ためると、やっぱりよくないよね^^v
パーーーッとストレス発散した方がいいんだけど。。。
控えめで、大人しくて、慎みやかで、可憐で、物静かな私は・・・あれ?^^;;;;;;;wwwwwwww
うん、やっぱり、地で行く方がいいよね^^;っわははははははのはw
ちなみに、突然、女の人の幽霊が自分の部屋に現れたら、「こ、これは『ある日突然、ハーレム状態』ですかぁ!。。。問題は・・・彼女がデレデレかツンデレかどちらかだ。。。だ、大丈夫だ。DSでシュミレーションをしてきたじゃないか!マニュアル(アニメ・漫画)も熟読してきた!準備は万全だぁー^^/」(←彼女がツンツンという思考には絶対にならない。しかも、彼女の顔から流血してても、見るもおぞましい、顔つきになっていても、オタクフィルターが萌え顔にしてしまうのだぁ w(°0°)w ホッホー)
っという、猫だったら・・・こ、こわい><;ネコガw
あんまり、鬱憤ためると、やっぱりよくないよね^^v
パーーーッとストレス発散した方がいいんだけど。。。
控えめで、大人しくて、慎みやかで、可憐で、物静かな私は・・・あれ?^^;;;;;;;wwwwwwww
うん、やっぱり、地で行く方がいいよね^^;っわははははははのはw
ちなみに、突然、女の人の幽霊が自分の部屋に現れたら、「こ、これは『ある日突然、ハーレム状態』ですかぁ!。。。問題は・・・彼女がデレデレかツンデレかどちらかだ。。。だ、大丈夫だ。DSでシュミレーションをしてきたじゃないか!マニュアル(アニメ・漫画)も熟読してきた!準備は万全だぁー^^/」(←彼女がツンツンという思考には絶対にならない。しかも、彼女の顔から流血してても、見るもおぞましい、顔つきになっていても、オタクフィルターが萌え顔にしてしまうのだぁ w(°0°)w ホッホー)
っという、猫だったら・・・こ、こわい><;ネコガw
Re:ぼくは猫であるw
どんな猫っすか!?(爆)
オタクフィルターは血みどろ幽霊さんにさえ有効ですか( ̄▽ ̄;)
オタクフィルターは血みどろ幽霊さんにさえ有効ですか( ̄▽ ̄;)
Re:無題
確かに携帯だと区別付かないね(^^;)
にゃんこは生霊に会った模様☆
猫が苦手なお父さんと会ってる所に邪魔されたくなかったんだね☆
にゃんこは生霊に会った模様☆
猫が苦手なお父さんと会ってる所に邪魔されたくなかったんだね☆
Re:無題
そうか、彼女はくのいちだったんだ……てな訳はなく(^^;)
でも、一応にゃんこに掛かる雨も避けてたにゃ♪
でも、一応にゃんこに掛かる雨も避けてたにゃ♪