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背負った罪は消えはしないと、彼女は、苦笑したよ――そう共通の友人から聞かされて、僕自身も苦笑を浮かべる他なかった。
あの頑固者。
彼女と僕が初めて会ったのはかれこれ十年以上も前の事だ。お互い十代半ばで、お互い、登校拒否に陥っていた。
僕の場合、学校で何があったって訳じゃない。強いて言えば――何も無かったからだろうか。
特別に就きたい職業もなく、目標もなく、それでも就職に不利だからと親と教師に言われる儘、進学した。よくある話だろう。そう、僕は至って普通だった。
只、目標のない学校に居る事に、少しだけ、焦りを感じていただけだ。別の道を歩けば、やりたい事、自分に向いた事が見付かったのではないかと――夢を見ていただけだったのだ。
彼女は僕とは少しだけ、事情が違った。
彼女は目標を持っていた。
だが、第一志望に落ち、滑り止めに受けた学校に入ったものの、そこは彼女が満足出来るレベルではなく……彼女もまた、夢の中に逃避した。一年浪人してでも、第一志望を選択するべきだったのではないか、と。
そして徐々に、彼女も学校から遠ざかって行った。
そんな僕達が顔を合わせたのは、ネットカフェだった。徐々に家の中にも居場所を失くし、面白くないからと度々外出していた頃だ。同年代の、やはり居場所のなさそうな彼女を見掛け、話し掛けたのは僕の方だった。尤も、彼女との差異は直ぐに判ったし、女の子だからと意識した事もなかったのだけど。
「何か目標とか、ないの?」お互いの話をした後に、彼女は尋ねてきた。「やってみたい事とか」
「先生みたいな事、言うなよ」僕は頬を膨らませた。「あったらやってる……かなぁ」
自分でも、そこ迄やる気の出る事が見付かるかどうか、僕は疑問だった。
呆れた様に苦笑して、彼女はこう言った。
「無くても何かやらなきゃいけない……それも面倒よね」
「あっても、それをやり遂げなきゃ気が済まない……それもしんどいよな」
僕達は顔を見合わせた。何を考えているか、お互いに察していた。
面倒でしんどいこの世からの逃避――その筈だった。
数日後の夕暮れ時、彼女が用意した薬を飲んだ僕は、深い闇に落ち行く様に、あるいは安寧な眠りに落ちる様に意識を失い……。
夢を、見た様な気もする。
酷く、取り乱している夢。号泣する母に取り縋って、一緒に泣き喚く夢。幼い頃の楽しい思い出の混じった夢。もうしなくていい筈の、選択に悩む夢……。それは僕の未練だっただろうか。
やがて、頬の痛みで目を覚ました。
「やっと起きたわね」彼女は言った。すっかり夜になっていたけれど、場所は変わらず人気の無い川原の橋の下だった。
「何で……? 生きてるのか? あの薬……」未だぼんやりとした頭で、脈絡のない問いを彼女に投げ掛ける。
「毒薬には違いないけど、死には至らないわ。一時的に意識を失うだけ。でも、気分は味わえたでしょ?」にっ、と彼女は笑った。「一度、死んだ気分は」
こくり、と僕は頷いた。
「昔から言うわよね。死んだ気になれば何でも出来るって」伸びをして、彼女は言った。「それが本当かどうか、実証してみようじゃない。ね?」
あっけらかんと言う彼女に、僕はすっかり毒気を抜かれてしまった。
そう。僕は一度死んだんだ。生まれ変わるのも、いいかも知れない。
「でも――」と、真顔になって彼女は言った。「自分を殺そうとした事には違いないのよね。私達。その罪だけは背負わないとね」
「……どうしろって言うんだ……?」
自分に対しての償いなんて……?
「それは自分で考えないと」彼女は苦笑を浮かべた。「取り敢えず、私は――私が殺した『私』が本当にやりたかった事をするわ。今の学校を辞めて、もう一度力を付けてから志望校に挑戦する。そうして何れは夢を叶える。それが私の償い」
なら、僕は――僕が殺した『僕』には取り立ててやりたい事もなかった。だから――先ずは、やりたい事を見付ける。後の事はそれからだ。
そう告げると、彼女は笑って頷いた。
それ以来、彼女は頑固に、自分への償いを続けている。どうやら、順調の様だ。
そうして僕も……。
―了―
取り敢えず、苦笑(^^;)
立ち止まったままの人間もいるし
歩みを進めてるようで堂々巡り。迷ってる人間もいる
私も今から(遅っ!)何かしなきゃ(;^_^A
人生楽ありゃ苦もあるさ。だね~~(笑)
ニンジャは何をしとんじゃろ。ここの所見に来ると入れなかったよ~(泣)
気付くのはきっと、年取ってからでも遅くはないさ!(と、自分に言い聞かせてみる……)
心機一転、この後どうなるかは本人達次第だけどね~。
やりたい事、やり続けたい事……それが見付かって、続けられる環境にあったら、結構幸せかも知れない。