〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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風の音が騒がしい。
雪音(ゆきね)は窓の外を覗き見た。
音だけがそこに木々の乱立する森が広がっている事を教えてくれた。月の無い夜、視覚は役に立ってくれない。
森の中の一軒家。
然も一人。
こんな夜は心細くないと言えば嘘になる。
と……何かが聞こえた気がした。
真逆、と頭を振る。こんな騒がしい夜に、何が聞こえると言うのか。
風で大きめの枝が落ちたのだろう――何かが倒れた様な、どさっという音は。
風が何処かの隙間を擦り抜けているのだろう――この糸を引く悲鳴の様な音は。
風が運んで来るのだろう――久しく聞かない人の声を。
だって此処には雪音しか居ない。
だからあの近付いて来る複数の足音の様な音だって、風の悪戯に違いない。
その時、やけにはっきり声が聞こえた。
「本当なんだろうな? この屋敷に人が居ないってのは」
「ああ、死体を隠すには持って来いの場所だ」
雪音(ゆきね)は窓の外を覗き見た。
音だけがそこに木々の乱立する森が広がっている事を教えてくれた。月の無い夜、視覚は役に立ってくれない。
森の中の一軒家。
然も一人。
こんな夜は心細くないと言えば嘘になる。
と……何かが聞こえた気がした。
真逆、と頭を振る。こんな騒がしい夜に、何が聞こえると言うのか。
風で大きめの枝が落ちたのだろう――何かが倒れた様な、どさっという音は。
風が何処かの隙間を擦り抜けているのだろう――この糸を引く悲鳴の様な音は。
風が運んで来るのだろう――久しく聞かない人の声を。
だって此処には雪音しか居ない。
だからあの近付いて来る複数の足音の様な音だって、風の悪戯に違いない。
その時、やけにはっきり声が聞こえた。
「本当なんだろうな? この屋敷に人が居ないってのは」
「ああ、死体を隠すには持って来いの場所だ」
「何せ幽霊屋敷だからな」その割には明らかに揶揄の混じった声。恐れる気持ちは無いらしい。
やがて窓硝子の割れる音、どかどかと無遠慮な足音、重い物を降ろす何処か湿った音が屋敷内に流れた。
雪音は灯も点けず、じっと息を潜めた。
「それにしても寒いなぁ。何か暖房は無いのか?」
「人が住んでないんだ。ある訳無いだろ」
「そりゃあ、そうだが……。火でも焚くか」
雪音はひっ、と息を詰めた。
「誰か居るのか!?」思いの外大きく、その音が響いてしまったのか、一人が声を上げる。
「気の所為だろ。神経質だなぁ」
「しかし……万一、死体が発見されでもしたら、俺達は一番に疑われるんだぞ? もし、人が居たら……」
「じゃあ、こんな夜中に幽霊屋敷の探検でもするか?」自分は御免だ――そんな声音に相手も引き下がる。
「ま、風の音だな。明け方迄間があるし、少し休むか」
やがて侵入者達の寝息が響く。
雪音はその、余り安らかとも言えない音に、それでもホッと安堵の吐息をつく。
そして慌てて自らの口を塞いだ。
が、時既に遅しと気付き、深い溜め息と共に言葉を吐き出した。
「いけない……やっちゃったわ……。まぁ、いいわね。人の家を幽霊屋敷と間違える様な失礼な人達だもの」
冷たく、固く凍り付いた男達には、抗議する権利も術も無かった。
一吹きの吐息で全てを凍て付かせる、此処は雪女の棲み家だった。
「でも、良かったわね。雪は全てを覆い隠すわ。死体も、貴方達も――春迄だけれどね」
雪音は笑い――その声は風に乗って、雪となり、やがて野山に降り注ぐ……。
音も無く……。
―了―
寒くなってきたので……。以前に眠れず真夜中の掲示板に一気書きしたネタですが。
私には珍しい妖怪――雪女って妖怪よね?――ネタ。
音に拘ってみた一品。
やがて窓硝子の割れる音、どかどかと無遠慮な足音、重い物を降ろす何処か湿った音が屋敷内に流れた。
雪音は灯も点けず、じっと息を潜めた。
「それにしても寒いなぁ。何か暖房は無いのか?」
「人が住んでないんだ。ある訳無いだろ」
「そりゃあ、そうだが……。火でも焚くか」
雪音はひっ、と息を詰めた。
「誰か居るのか!?」思いの外大きく、その音が響いてしまったのか、一人が声を上げる。
「気の所為だろ。神経質だなぁ」
「しかし……万一、死体が発見されでもしたら、俺達は一番に疑われるんだぞ? もし、人が居たら……」
「じゃあ、こんな夜中に幽霊屋敷の探検でもするか?」自分は御免だ――そんな声音に相手も引き下がる。
「ま、風の音だな。明け方迄間があるし、少し休むか」
やがて侵入者達の寝息が響く。
雪音はその、余り安らかとも言えない音に、それでもホッと安堵の吐息をつく。
そして慌てて自らの口を塞いだ。
が、時既に遅しと気付き、深い溜め息と共に言葉を吐き出した。
「いけない……やっちゃったわ……。まぁ、いいわね。人の家を幽霊屋敷と間違える様な失礼な人達だもの」
冷たく、固く凍り付いた男達には、抗議する権利も術も無かった。
一吹きの吐息で全てを凍て付かせる、此処は雪女の棲み家だった。
「でも、良かったわね。雪は全てを覆い隠すわ。死体も、貴方達も――春迄だけれどね」
雪音は笑い――その声は風に乗って、雪となり、やがて野山に降り注ぐ……。
音も無く……。
―了―
寒くなってきたので……。以前に眠れず真夜中の掲示板に一気書きしたネタですが。
私には珍しい妖怪――雪女って妖怪よね?――ネタ。
音に拘ってみた一品。
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Re:もう、
有難うございます(^^)
朝晩流石に冷え込む時期、お風邪など召されませぬよう、ご注意を
朝晩流石に冷え込む時期、お風邪など召されませぬよう、ご注意を
Re:雪
夜霧が「ゆきほしい?」だって(^^)
忙しい屋根裏……? ネズミ捕りでもする気か、夜霧?
雪が溶ける頃には雪音は眠りに就いてると思う
もしくは北に渡る?
忙しい屋根裏……? ネズミ捕りでもする気か、夜霧?
雪が溶ける頃には雪音は眠りに就いてると思う
もしくは北に渡る?
Re:無題
確かに! やはり雪女は色白美人ですよね♪
雪の精霊みたいな感じ。
雪の精霊みたいな感じ。
Re:こ・
異国情緒ですか(^^)
気分転換(?)に変えてみようと検索したものの、記事幅が狭いと長文読み難いだろうとか、色変化激し過ぎると目にきついよなぁとか、選びまくってこんなんなりました☆
大胆かな?
気分転換(?)に変えてみようと検索したものの、記事幅が狭いと長文読み難いだろうとか、色変化激し過ぎると目にきついよなぁとか、選びまくってこんなんなりました☆
大胆かな?
Re:無題
真夏の雪女(笑)
富士の風穴辺りに避暑に行ってるかも(^^;)
幽霊、私も見た事は無いなぁ。昔、某占い師に霊感が強い筈と言われたけど全く自覚なし(笑)
富士の風穴辺りに避暑に行ってるかも(^^;)
幽霊、私も見た事は無いなぁ。昔、某占い師に霊感が強い筈と言われたけど全く自覚なし(笑)