〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「昨日また、かの罪深き者の手によって、種の存続を危うくする位に長時間に亘って、件の扉が開閉された!」
その通告に、ざわめきが広がった。
「我々を閉じ込めておいて、何故また……」
「決まっている。観察、研究とやらの為だ。自分達の為の」
「奴等め、我々を完全に飼い馴らしてでもいる心算か!」
「いや、未だ研究を続けているという事は、未だに我々を恐れてもいるという事だろう。もしまた我々の様なものが現れたら、対処出来るようにと……。あるいは何者かの手によって我々の内、幾らかが連れ出された可能性もあるとも考えているらしい。それだけ、我々を警戒しているという事だ」
「それでも……! 自分達の手で管理出来ると思い込んでいるんだ! でなければ、態々扉を開けたりはしないだろう!」
「それはそうだが……」
「ともあれ、また扉を開けてみろ! 外に抜け出して奴等を……」
「いや、扉は開かれん方がいい」先の通告を出したものが、厳かに言った。
何故、という問いにそれは答えた。
「此処に封じられて数十年。代を重ねては来たが、我々は他者との生存競争からは隔絶された。外に出て、あるいは外部の侵入に対して、我々は旧来の手段しか持たない。それで果たして、外で鍛えられてきた者達に太刀打ち出来るかどうか……? ともすれば、我等が種の存続の危機だ」
「何を気弱な事を……。もうすっかり、飼い馴らされちまったという訳か」
「それは違う。決して飼い馴らされた心算などない。だが、我等の手段が最早知り尽くされているのも確か。外に出ても、程なく駆逐されてしまうだろう。嘗ての様に。それに、外からの来訪者は我々を滅ぼしてしまうか、あるいは別のものに作り変えてしまうかも知れない」
「作り変え……それだ!」
「何?」
「外のものから新しい遺伝情報を貰い受け、変異してしまえば、あるいは奴等の方法も効果を失うかも知れない。そうなればまた奴等が対処方法を学ぶ迄に、どれだけの事が出来るか……!」
それらは扉の開放を、待つようになった。何代も何代も……。
しかし、遺伝情報が書き換わってしまっては、やはり種としては存続の危機ではないのか――。
「とか、そんな事考えてる様な気がしません?」減圧された部屋から出て、殺菌消毒剤のミストを浴びながら、そんな呑気な事を言う同僚に、彼は呆れ顔で舌打ちした。尤も、未だマスクの下なので表情ははっきりとは伝わらなかったが。
「だったら尚更、開閉には気を付けて下さい。下手をすれば……こちらの種が全滅させられ兼ねない細菌を扱ってるんですから」
そして人間の対処は、いつも一歩か二歩、遅れ気味なのだから。
―了―
一応元ネタ(?)は天然痘。
根絶され、今や限られた研究施設にしか存在しない筈ですが、もし……?
その通告に、ざわめきが広がった。
「我々を閉じ込めておいて、何故また……」
「決まっている。観察、研究とやらの為だ。自分達の為の」
「奴等め、我々を完全に飼い馴らしてでもいる心算か!」
「いや、未だ研究を続けているという事は、未だに我々を恐れてもいるという事だろう。もしまた我々の様なものが現れたら、対処出来るようにと……。あるいは何者かの手によって我々の内、幾らかが連れ出された可能性もあるとも考えているらしい。それだけ、我々を警戒しているという事だ」
「それでも……! 自分達の手で管理出来ると思い込んでいるんだ! でなければ、態々扉を開けたりはしないだろう!」
「それはそうだが……」
「ともあれ、また扉を開けてみろ! 外に抜け出して奴等を……」
「いや、扉は開かれん方がいい」先の通告を出したものが、厳かに言った。
何故、という問いにそれは答えた。
「此処に封じられて数十年。代を重ねては来たが、我々は他者との生存競争からは隔絶された。外に出て、あるいは外部の侵入に対して、我々は旧来の手段しか持たない。それで果たして、外で鍛えられてきた者達に太刀打ち出来るかどうか……? ともすれば、我等が種の存続の危機だ」
「何を気弱な事を……。もうすっかり、飼い馴らされちまったという訳か」
「それは違う。決して飼い馴らされた心算などない。だが、我等の手段が最早知り尽くされているのも確か。外に出ても、程なく駆逐されてしまうだろう。嘗ての様に。それに、外からの来訪者は我々を滅ぼしてしまうか、あるいは別のものに作り変えてしまうかも知れない」
「作り変え……それだ!」
「何?」
「外のものから新しい遺伝情報を貰い受け、変異してしまえば、あるいは奴等の方法も効果を失うかも知れない。そうなればまた奴等が対処方法を学ぶ迄に、どれだけの事が出来るか……!」
それらは扉の開放を、待つようになった。何代も何代も……。
しかし、遺伝情報が書き換わってしまっては、やはり種としては存続の危機ではないのか――。
「とか、そんな事考えてる様な気がしません?」減圧された部屋から出て、殺菌消毒剤のミストを浴びながら、そんな呑気な事を言う同僚に、彼は呆れ顔で舌打ちした。尤も、未だマスクの下なので表情ははっきりとは伝わらなかったが。
「だったら尚更、開閉には気を付けて下さい。下手をすれば……こちらの種が全滅させられ兼ねない細菌を扱ってるんですから」
そして人間の対処は、いつも一歩か二歩、遅れ気味なのだから。
―了―
一応元ネタ(?)は天然痘。
根絶され、今や限られた研究施設にしか存在しない筈ですが、もし……?
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Re:無題
ゴ×××の話なんか、考えたくもありませんとも!(^^;)
と言うか、奴等の絶滅が予想出来ない……(((゜д゜;)))
と言うか、奴等の絶滅が予想出来ない……(((゜д゜;)))
パンデミクミク
こんにちはー^^
細菌とかが擬人化されてる「もやしもん」みたいな、お話だぁー w(°0°)w ホッホー
優生劣敗
適者生存
弱肉強食
自然界は想像以上に世紀末な「ヒャッハー!」な、世界だものね( ̄□ ̄;)ガビィーン
今日も私の体の中ではnukunuku免疫防衛軍が敵を千切っては投げ千切っては投げして、問答無用で瞬滅し続けているのだ(((((((((((((( ><;)ヌォォォー!
なに!憲法9条信者のヘルパーT細胞が見つかっただと!(*゚△゚*; )))ナン・・・ダト!
脾臓で分解して腎臓で濾過して、とっとと排出しるのだぁー></オー!
抵抗するようならNK細胞を向かわせよ!
みたいな、感じなのかなぁ(*^o^*) テレテレ
暢気な私とは大違いだ(*^o^*) テレテレ
ではではー^^/
細菌とかが擬人化されてる「もやしもん」みたいな、お話だぁー w(°0°)w ホッホー
優生劣敗
適者生存
弱肉強食
自然界は想像以上に世紀末な「ヒャッハー!」な、世界だものね( ̄□ ̄;)ガビィーン
今日も私の体の中ではnukunuku免疫防衛軍が敵を千切っては投げ千切っては投げして、問答無用で瞬滅し続けているのだ(((((((((((((( ><;)ヌォォォー!
なに!憲法9条信者のヘルパーT細胞が見つかっただと!(*゚△゚*; )))ナン・・・ダト!
脾臓で分解して腎臓で濾過して、とっとと排出しるのだぁー></オー!
抵抗するようならNK細胞を向かわせよ!
みたいな、感じなのかなぁ(*^o^*) テレテレ
暢気な私とは大違いだ(*^o^*) テレテレ
ではではー^^/
Re:パンデミクミク
平和主義な白血球とか、困るかも(笑)
確かにある意味、体内は……戦場だ( ̄□ ̄;)
確かにある意味、体内は……戦場だ( ̄□ ̄;)
Re:後手後手なのは
まぁ、あちらさんの方が頻繁に変異を繰り返し易いですから(^^;)
インフルエンザみたいなRNAウイルスだと、毎年の様に変異して来ますし。
天然痘はそれに比べたら変異し難いから、人間としては助かったかも。
インフルエンザみたいなRNAウイルスだと、毎年の様に変異して来ますし。
天然痘はそれに比べたら変異し難いから、人間としては助かったかも。